認知症は早期発見が大切だと言われています。では、診察や診断はどのように行われるのでしょうか? 病院の選び方や病院での診察や検査の流れをアルツハイマー研究の第一人者新井先生に教えていただきました。
認知症にくわしい医師がいる病院を選びましょう
もしかしたら認知症かも……。自分や家族がそう不安を感じたとき、どのような病院に行ったらいいか悩む人も多いと思います。新井先生によると、診療科では選ばないことが大切なのだそうです。 「例えば、同じ脳神経外科でも医師によって得意とする分野が異なります。そのため認知症が専門外の医師にあたると初期の認知症だと気づいてもらえずに、治療が遅れてしまう場合も。大切なのは、認知症にくわしい医師がいる病院に行くことです」 新井先生のおすすめは、もの忘れ専門外来のある病院や、各都道府県にある国指定の「認知症疾患医療センター」だそう。住んでいる地域でそれらが見つからない場合は、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談して教えてもらうのもひとつの手です。また、webで「日本認知症学会」と検索すると、該当する病院を見つけることもできます。
【1】問診
現在の状態や健康状態を家族も含めて確認
どのような症状があるのか、なにに困っているのかなど認知症に関する質問のほか、生活習慣病や服用している薬についても問診します。軽度認知障害の可能性がある場合はご家族も同席したほうが、客観的な事実がわかってより診断がしやすくなります。
【2】診察
認知症につながる症状がないか医師が細かく観察
歩き方や顔の表情、手足の震えの有無、うつ病などの症状がないかを医師が確認します。改めて「診察をします」と言うと普段の様子がわからないため、診察室に入ってきたときにそれらを観察することが多いそうです。
【3】神経心理検査
代表的なのはこのふたつの検査
長谷川式簡易知能評価スケール
日本人医師が考案した知名度のある検査
自分の年齢、いまいる場所や日付を答える、5つの品物を記憶して答える、簡単な計算問題を解くなど、全部で9つのテストを行います。日本では、多くの医療機関で実施されている知名度のある検査方法です。
ミニメンタルステート検査
視空間認知能力や言語能力も含めて評価
現在の時間、いまいる場所、計算、図形模写、文の復唱、物の正しい名称が言えるかなど、11項目を検査します。長谷川式とは異なり記憶力だけでなく言語能力、見当識、視空間認知能力なども評価。問診や診察も行い、総合的に判断します。
【4】脳画像検査
必要に応じて脳の状態や血管の様子、機能的な状態などを調べる検査 MRIなどで脳の状態を検査。脳の血管に動脈瘤、動脈硬化、脳梗塞などがないか調べます。 アルツハイマー型認知症の原因とされるアミロイドβの蓄積の有無や程度を調べるアミロ イドPET検査をすることも。軽度認知障害や軽度認知症の場合は保険診療で検査可能。
【5】その他の身体検査
血液検査や尿検査、心電図検査やレントゲン検査などで体の状態を把握 認知症の検査で必ず行うのが血液検査。糖尿病、甲状腺機能低下、LDLコレステロールの数値、貧血、不足している栄養素などを調べます。ほかの病気による認知症を見つけるため、そして認知症の危険因子を探り、今後の治療方針の決定に役立てます。
イラスト/カツヤマケイコ 文/酒井明子
※素敵なあの人2025年2月号「いまは予防もできる時代です 認知症治療最前線」より
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教えてくれたのは 新井平伊先生
アルツハイマー研究の第一人者。2009年の『Journal of Alzheimer's Disease』によるアルツハイマー病の論文数世界トップ100で38位に選出された。認知症に関する著書多数。モットーは「認知症になっても人生おわりじゃない」。
この記事を書いた人 素敵なあの人編集部
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