食事は「とりあえず食べる」から「自分への投資」へマインドシフト
Q. 先生の著書に度々使われている、「食べる投資」という言葉が印象的です! 改めて、食事とは、私たちにとってどのような存在なのでしょうか?
食事は単に空腹を満たすものではなく、健康を支え、毎日のパフォーマンスに直結する重要な要素です。だからこそ、「とりあえず食べればいい」といった考え方を改め、食べるものを「自分への投資」として意識することが大切です。現代では、加工食品や糖分の多い食品が手軽に手に入る分、食事を無意識に選び続けると健康を損なう原因に。逆に、栄養価の高いものを意識して選ぶだけで、体調も気力も大きく改善します。
私自身、学生時代にスキーをしていた頃、食事の内容を見直したことで体調が劇的に変わった経験があります。ご縁があってヨガの断食道場で2週間ほど過ごしたら、体質が劇的に変わり、スピードや持久力が向上したのです。今思えば、糖質の摂取を抑えることで、体内の蓄積脂肪からケトン体が作られるようになり、脂肪燃焼回路が働き、動きやすくなったのでしょう。学生時代のこの経験やクリニックで多くの患者さんを診てきた中で実感するのは、食事が日々の生活や生産性にどれほど大きな影響を与えるかということです。
「何を食べるか」を意識し、健康的な選択をすることは、自分自身への最良の投資だと言えます。
世代別、取るべき栄養素をチェック
Q. 20代、30代、40代以上など、年齢ごとにとった方が投資になる食材はありますか?
日本人はとにかくビタミンDが不足しています。お母さんの体にビタミンDが欠乏していると赤ん坊もビタミンDが足りなくなるので、これから妊娠・出産を考えている女性は投資としてビタミンDを。サケや青魚を食べるのが良いでしょう。加えて、日光に当たることと、サプリメントも賢く取り入れて。特に出産する年代の女性のビタミンD不足は、子どものビタミンD不足にも直結します。実際に、子どものビタミンD欠乏による「くる病(小児骨軟化症)」が増えているという指摘もあり、対策が急がれています。
閉経前の女性の多くは、鉄も足りていません。鉄が不足すると、貧血や疲れ、冷え、めまい、そして頭痛の原因に。日々のパフォーマンスを下げます。鉄が豊富な食材は、卵、肉、魚、レバー、大根葉、小松菜、ほうれん草など。サプリメントもおすすめ。また、一度フェリチン(体内の鉄の貯蔵量)を検査するのもいいでしょう。フェリチンの値は、体内に蓄えられている鉄の状態を示す指標で、鉄不足のリスクを正確に把握することができます。
VOGUE読者には少し先の話かもしれませんが、70代以上になると消化吸収機能が低下し、亜鉛不足になりがち。これは食事だけでは補いにくいため、サプリメントの活用を検討するのが効果的です。
脳を活性化!朝のコーヒーにココナッツオイルをプラス
Q. 脳の回転の良さや集中力を高める食事のアドバイスをお願いします!
ココナッツオイルは、脳に良い影響を与える食材の一つです。ココナッツオイルの主成分である中鎖脂肪酸(MCT)は、他の脂肪酸と異なり、腸で直接吸収されて血液中に入り、肝臓で代謝されて「ケトン体」へと変化します。このケトン体が脳に運ばれることで、神経細胞のエネルギー源として使われ、脳の活性化をサポートします。毎朝のコーヒーに少しココナッツオイルを加えるのがおすすめ。
また、魚に豊富に含まれるオメガ3脂肪酸(特にEPAとDHA)は、脳の健康に欠かせません。オメガ3脂肪酸は脳の炎症を抑えるとともに、脳の機能向上にも寄与します。少なくとも週に1回魚を食べることで、アルツハイマー病のリスクが低くなるという報告もあります。
話を聞いたのは……
満尾正先生⚫️満尾クリニック院長・医学博士。日本キレーション協会代表。米国先端医療学会理事。日本抗加齢医学会評議員。北海道大学医学部卒業。2002年、日本初のキレーション治療とアンチエイジングを中心としたクリニックを開設。主な著書に『食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術』(アチーブメント出版)など多数。
Text: Kyoko Takahashi Editors: Kyoko Muramatsu, Yuna Shibata
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