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【渡邊渚】「人生を一度捨てたからこそ、気持ちに嘘をつかないことの大切さに気付いたんです」<前編>

  • 2025.2.6

後編はこちら! → 【渡邊渚】「自分の体験や思いを伝えて、理解ある世の中をつくっていけばいい。それがアナウンサーとしてできる最後の使命だと思いました」

「トラウマを抱えてしまった人の希望になれたらうれしい」

【渡邊渚】「人生を一度捨てたからこそ、気持ちに嘘をつかないことの大切さに気付いたんです」<前編>
【渡邊渚】「人生を一度捨てたからこそ、気持ちに嘘をつかないことの大切さに気付いたんです」<前編>

──今回、フォトエッセイを出すきっかけとなった出来事や想いを教えてください。

「PTSD(心的外傷後ストレス障害)を患ったことで、私の生活は一変しました。1ヵ月で体重が5kgも落ちたり、フラッシュバックが起きて仕事ができる状態じゃなくなって入院を余儀なくされたり、生きている意味を見失って自分で自分を傷つけてしまった日もあります。でも、そんな自分の経験や、闘病する中で得た情報を発信することは、もしかしたら誰かの心の助けになるのではないかと思ったのが本を出そうと思った理由です。

私が病気になったとき、ネットで調べてもPTSDに関する情報があまりなくて理解が難しかったんです。どんな治療法があって何を選べばいいのか、PTSDになって治った人がいるのか、という情報もなかなか見つからないから希望が見出せなかったなぁと感じていたので、私が何かを残すことで、PTSDになったとしてもこうやって元気に生きられる人間がいるということを証明したい、こういう一例もあるよと伝えたいなと思いました」

【渡邊渚】「人生を一度捨てたからこそ、気持ちに嘘をつかないことの大切さに気付いたんです」<前編>
【渡邊渚】「人生を一度捨てたからこそ、気持ちに嘘をつかないことの大切さに気付いたんです」<前編>

──私も読ませていただいたのですが、精神的にマイナスな状況にいる方に対してどのように接すると良いかということもわかりやすく書いてあったので、とても勉強になりました。

「ありがとうございます。やっぱり、私の家族もたくさん悩んでくれていたのを知っているので、病気になっている本人はどう感じているのか、どんなふうに接して欲しいのかなども、一つの指針として何か残せたらいいなと思いながら書きました。もちろん私の経験が全員に当てはまるわけではないし正解ではないけれど、どんな言葉をかけるべきかわからないと悩んでいる方も世の中にはたくさんいると思うので、自分が経験したからこそわかることをできる限り伝えています。

療養中、自分一人では本当に何もできなかったんです。家族や友人、病院の方々が手を差し伸べてくれて、いろいろな人から助けてもらったおかげでここまで元気になれたと思っています。たわいもない話をしたり、普通に出かけたり、あえて何かをするというよりも、病気になる前と変わらず接してくれたことがすごくうれしかったんです。何か楽しいと思える時間があれば、生きようという気持ちになれたんですよね。

私はこういう経験をしたからこそこの気持ちがわかりましたが、実際はPTSDという精神疾患のことを理解したいと思っても、当事者にならなければわからないことがほとんどだと思います。でも、私一人の力では、理解を広めるために世間を大きく変えるようなことはできない。なので、この本を読んだ方の誰かから、理解者を増やすための素敵なアイデアが浮かんでくれたらいいなと、そこに希望を託して書きました」

「自分の感情を理解して、受け止める大切さを知りました」

【渡邊渚】「人生を一度捨てたからこそ、気持ちに嘘をつかないことの大切さに気付いたんです」<前編>

──文字に起こすために、過去を振り返ることは辛くなかったですか?

「やっぱり、PTSDを発症するきっかけとなったトラウマ経験や、療養期間について振り返ることは辛かったです。第2章は今とこれからの自分の考えだったのでスラスラかけたのですが、第1章では、自分的には触れたくないと思うような踏み込んだ話も深く書いていたので、結構時間とエネルギーがかかりましたね」

【渡邊渚】「人生を一度捨てたからこそ、気持ちに嘘をつかないことの大切さに気付いたんです」<前編>

──トラウマを経験する前と後で、考え方や行動は変わりましたか?

「180度変わりました。PTSDを発症したばかりの一番症状が重たかったときは、知らない人がいっぱいいる空間が怖くなって、パニック発作を起こしてしまうので、今まで乗っていた電車やタクシーは乗れなくなりました。それは後に少しずつ克服できるようにはなったのですが、当時はご飯も食べられなくなって。それまですべてを犠牲にして仕事を頑張ってきたことをものすごく後悔しました。ただ、療養期間を経て、今では生き方や人生に対する考え方が良い方向に変わってきている気がします」

【渡邊渚】「人生を一度捨てたからこそ、気持ちに嘘をつかないことの大切さに気付いたんです」<前編>

──フォトエッセイの中でも、“心の声に耳を傾ける”、“心に嘘をつかない”など、自分の気持ちを大切にするようになった言葉が印象に残りました。

「いろいろな治療をして、自分の感情を理解して受け入れることが大切なんだなと思うようになれたんです。

私はもともと自分の言葉を伝えたり、心を開示することが得意ではなくて、相手に伝えられないからノートに書くというようなタイプで。それで若干の生きづらさを感じていましたし、自分の感情が正しいのか自信がないから、思ったことを口にしたら人に受け入れられないんじゃないかと思っていたんですよね。

たとえば、ちょっと嫌味を言われたときに、“なんか悲しいな”と感じたとしても、“いや、でも私が悪いから悲しいって思うのはおかしいんじゃないか?”と思って、モヤモヤした感情をずっと抱えちゃうみたいな。臨床心理の本を読むと感情の理解が大事だということが書いてあるので、頭では理解できていたのですが、もともとの性質的にそう思えないこともあって。

【渡邊渚】「人生を一度捨てたからこそ、気持ちに嘘をつかないことの大切さに気付いたんです」<前編>

でも最近は、自分が思った感情をなるべく明確にして、“自分が感じた心の声は間違いではなく正しい”、“そう思っていいんだよ”って、自分の心に嘘をつかないようにしています。自分が感じていることを認めてあげると自分を信じることができるし、これが自信に繋がるってことなのかなって思うから。

私は一度人生を捨てたからこそこの大切さに気付きましたが(笑)、もし同じように、自分の心の中でちょっとでも違和感とか、納得できないなと感じながらもそれを抱え込んでしまっている方がいたら、それを否定しなくていいし、自分の心に嘘をつかず考え続けて欲しい。自分の人生は自分のものだから、自分が納得する答えを出して楽しみながら生きていって欲しいなと思っています」

【渡邊渚】「人生を一度捨てたからこそ、気持ちに嘘をつかないことの大切さに気付いたんです」<前編>

PROFILE

渡邊渚(わたなべ・なぎさ)

1997年4月13日生まれ。新潟県出身。2020年フジテレビに入社し、アナウンサーとして活躍。2024年8月に退社後は、フリーで活動中。

『渡邊渚フォトエッセイ 透明を満たす』

『渡邊渚フォトエッセイ 透明を満たす』
Ⓒ三宮幹史/講談社

発売中
フリーランスとして新たな活動をスタートさせた、渡邊渚のフォトエッセイ。本書のために書き下ろされた長編エッセイと、新境地を感じさせる充実のフォトパートで構成される一冊。

後編はこちら! → 【渡邊渚】「自分の体験や思いを伝えて、理解ある世の中をつくっていけばいい。それがアナウンサーとしてできる最後の使命だと思いました」

撮影/井澤和己 スタイリスト/筒井葉子(PIECE MONKEY) ヘアメイク/𠮷﨑沙世子(io) 構成・取材・文/高橋夏実(Spacy72)

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