夫婦の形はさまざまです。常に一緒にいることが幸せな夫婦もいれば、逆に少し距離があったほうが上手くいく、という夫婦もいますよね。今回は筆者の知人の女性が興味深いエピソードを聞かせてくれました。
熟年離婚を決意
私と夫は結婚して30年。子どももなく、お互いひたすら仕事に打ち込む日々でした。
生活は安定していましたが、夫とはすれ違いの毎日。会話もなく、一緒にいてもどこか寂しさを感じていました。
「このままでいいのだろうか」「1人のほうが自由で気楽なのでは」……そんな思いが募り、50代半ばでついに熟年離婚を決意しました。
夢見ていた1人暮らし
引越しを終えて1人暮らしが始まりました。
友人と旅行に行ったり、ずっとやりたかった陶芸教室に通ったり……しばらくは自由を満喫する日々でした。
でも次第に、暗くて静まり返った部屋に帰ると、心にぽっかりと穴が空いているような感覚に襲われるようになりました。
シーンとした部屋に1人でいると、「本当に離婚する必要があったのだろうか」という後悔が、ふいに頭をよぎるようになってきたのです。
元夫からの思わぬ誘い
そんなある日、元夫から「久しぶりに話さないか」と連絡がありました。
少し緊張しながら待ち合わせのカフェに行くと、そこにいた彼は、以前よりずっと穏やかな表情をしていました。
「お互いを尊重できなかったのが失敗だったな」
と苦笑しながら語る元夫に、私も胸の内を吐露しました。
「もっと素直に話し合えばよかった。1人になって、あなたの存在の大きさに気づかされた」と。
すると、元夫は照れたように笑い、私もつられて笑いました。
こんな風に心から笑い合ったのは、本当に久しぶりのことでした。
新しい関係がスタート
その日を境に、私たちは時々近況報告を兼ねて会うようになりました。
仕事の話、趣味の話、最近ハマっていること……他愛のない会話が驚くほど心地よく、リフレッシュになっています。
周りから「復縁するの?」と聞かれることもありますが、今のところその予定はありません。
夫婦として一緒に暮らすより、こうして適度な距離感で繋がっている今のほうが、私たちには合っているような気がします。
離婚で失ったものもあるけれど、得たものも多く、元夫との新しい形での繋がりも私にとってかけがえのないものです。
離婚はある意味、人生の新たなスタート地点なのかもしれませんね。今は新しい人生を、自分のペースで楽しんでいきたいと思っています。
【体験者:50代・女性会社員、回答時期:2024年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。