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【学生が調べた防災】世界を驚かせた台湾の被災者支援!支えた民間団体に成功の秘訣を聞きました

  • 2025.2.4

2024年4月3日、台湾の花蓮市で震度6弱の強い地震が発生しました。この時、発生からわずか2時間後には、プライバシーを確保するテントが避難所の中に並び、その光景は日本だけでなく世界を驚かせました。新聞記事によると、このテントは台湾の民間団体「台湾仏教慈済慈善事業基金会」が設置したとのこと。その分会が日本にもあると知り、その団体に話を聞いてきました。

台湾仏教慈済慈善事業基金会とは?

話をしてくれたのは、東京・新宿にある台湾仏教慈済慈善事業基金会日本分会の小野雅子さんです。台湾仏教慈済慈善事業基金会は、国際的に支援活動を行うNGO団体です。台湾の花蓮県で尼僧である證嚴(しょうげん)法師が1966年にたち上げた「仏教克難慈済功徳会」がもとになってできたボランティア団体で、台湾では慈済(ツーチー)の略称で広く親しまれています。
小野さんによると、会の活動は30名の主婦が1日50セントを貯金し、貯めたお金で貧しい人々を助けることから始まりました。それが多くの人の心を動かし、やがて多くの人が慈済に加わって人を助けるようになりました。現在、68の国と地域に拠点を持ち、136の国と地域で支援を行っているそうです。慈済は仏教の慈善団体ですが、国籍や宗教を問わずボランティア活動をしています。

災害時の避難所をより快適に

折りたたみベッドの開発

慈済は自らが避難所のグッズを開発しています。そのきっかけは、2010年のパキスタン大洪水での救援活動でした。赤ちゃんが仮設テントの中で寝かされていましたが、雨が降ると屋根からの雨漏りで地面が水浸しになり、赤ちゃんは泥だらけの地面の上で寝ている状況でした。この光景を目の当たりにした證嚴法師の発案で、折りたたみ式ベッドの開発が始まりました。

プライバシーテントの開発

テントの必要性を痛感したのは、2018年に台湾の花蓮地震の時だそうです。被災者個人のスペースは簡易ベッドの上だけで、着替えをするにも、人目を遮るものは何もありませんでした。「避難生活ではプライバシーを守る空間が大切」と、テントの開発に取り組みました。
テントで仕切られる空間は縦横ともに2.45mで、折りたたみベッド2台と子どもが勉強できるような机と椅子を置くことができます。荷物を入れるキャビネットや毛布、蚊帳も作られるようになりました。
驚いたのは、慈済が、プラスチックをリサイクルしてこれらの避難用具を作っていることです。プライバシーテントは280本のペットボトルから作られ、簡易ベッドとテーブルはPP(ポリプロピレン)素材で製造されています。PPリサイクル原料には、電子工場の基板用ソケット、PPプラスチック製カップ、日用品の廃棄プラスチックが使用されているそうです。

新宿にある日本分会にもこれらの避難道具一式があり、テントの中に入らせてもらいました。 入ってみると、大人2人と子ども2人が避難するのにちょうど良いサイズ。落ち着いた青い色合いのおかげで、安全で心地よい雰囲気が感じられました。

災害発生後、すぐに被災者に届けるために

2024年の台湾の地震では、被害が大きかった花蓮市中心部の避難所に地震発生からわずか2時間で慈済が持参したテントが並びました。なぜこれほど早く被災者に届けられたかというと、日頃から、行政が慈済や他のボランティア団体と連携し、災害時の対応について話し合い、準備を進めていたからだそうです。

無料マッサージ、不動産の相談…センスが際立つ

慈済以外のボランティア活動にはどんなものがあるのでしょうか? 小野さんによると、ストレスや疲れを軽減するための無料マッサージサービスや、温かい弁当、飲み物、生活用品や衣服なども提供されています。また、家を失った人々向けに、不動産の相談にのる人やカウンセラーなど、生活を再建するための支援もあるそうです。台湾の対策は市民への配慮やセンスが際立っていると思いました。
「日本でも災害時にいろいろなボランティア団体が活躍していますが、台湾では行政側がボランティア団体に依頼する範囲がさらに広いように思います」と小野さん。慈済日本分会は、普段から新宿区内の公園で定期的に炊き出しを行っています。2024年1月の能登半島地震の後には、石川県穴水町で2か月間炊き出しを続け、カフェの提供や見舞金の配付活動も行いました。東日本大震災の際にも、物資の提供や見舞金の配付など、被災地への支援活動を行ってきました。日本と台湾、双方の経験から、そのように感じるそうです。

日本の自治体も強い関心

こうした台湾の取り組みに、日本の自治体も関心を示しているようです。小野さんによると、2024年4月の台湾での地震の後、複数の自治体の防災担当者が慈済の日本分会を訪れ、プライバシーテントなどの避難用具と災害時の対応について聞き取り調査をしたそうです。日本でも災害が発生した後、被災者が安心して過ごせるよう、すぐにプライバシーテントが設置されたり、さまざまなボランティア団体の支援の輪が広がったりすればいいなと感じました。

台湾の防災対策

台湾の防災対策について、台湾から来ている留学生に話を聞きました。台湾は環太平洋地震帯に位置しており、日本と同様に地震が頻繁に発生します。
台湾では9月21日が防災の日に指定されており、この日学校では地震避難訓練が実施されます。訓練は地震発生を想定して行われ、まず授業中に突然警報が鳴ると生徒と教師は机の下に避難します。警報が止まった後、教師の指示に従って指定された避難場所に移動し、集合場所で点呼をしてすべての生徒の安全を確認します。 このような訓練は、生徒たちが災難状況でも迅速かつ安全に行動できるように繰り返し行われています。
台湾の学校では社会科の科目の一つである「公民」で、防災について教えています。内容は、地震、台風、洪水など自然災害の備えと対策などで、学生たちに市民としての社会的責任を教育することに重点を置いているそうです。

建築基準法も

台湾では1999年に発生したマグニチュード7.6の大地震で、約2,400人が亡くなり、10万人が負傷、5万棟の建物が倒壊するという大規模な被害を受けました。その後、新築の建物や既存の建物に求められる耐震設計基準は年々引き上げられており、台湾政府は耐震設計基準に沿って建物を補強したり、新たに建設しようとする住民に建築助成金を提供したりしています。また、古い建築物に対しても適切な耐震補強措置が取られるよう、各種の制度や支援が整備されているそうです。
2024年の地震は、1999年の地震以来の大規模な地震でした。死者10人、負傷者1067人、行方不明者38人で、倒壊した建物もありました。震源の位置なども異なり、一概に比較はできないと思いますが、台湾の防災対策がある程度功を奏したと言えるのかもしれません。

ボランティアの手厚い支援が被災者の大きな助けに

台湾の被災者支援対策を取材して、ボランティアの方たちが、被災者の立場から、何が必要なのか、困っているのか、知識、知恵を持って物を製作したり、サービスを提供したりしているのが印象に残りました。こうした人々の献身的なサービスのおかげで、避難者たちがより早く回復し、精神的な困難を乗り越えることができるのではないかと感じました。

<執筆者>
チョナヒョン

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