グルメ界には、そのジャンルに特化したプロが多く存在する。
尋常ならざる熱量で食を重ねてきた彼らから“最推しの鮨店”を教えてもらった。まさにお宝である。
最推しの店を教えてくれたのは…
ラーメンデータバンク会長・大崎裕史氏
ラーメン情報サイト「東京のラーメン屋さん」を開設し、著作やテレビ出演も多数。食べたラーメンはもうすぐ3万杯に達する。ラーメン以外の食への造詣も深く、特に鮨に目がない。
1.開業前から注目し続けた存在。名物の“いくら”はもはや発明品 『佐野鮨』
『築地青空三代目 丸の内店』での修業時代から注目していた親方の佐野正志さん。
『佐野鮨』は、芝公園の路地裏にあり、昔よく見た大きな木の看板も手伝い港区なのに下町の鮨屋のような印象だ。店内には木札の品書きが並び、落ち着く空間。
おまかせが2万5,300円といまどきリーズナブルながら、まぐろは「フジタ水産」から最高級を仕入れ、しかも惜しげもなく品を変えて4貫も出してくれる。
他では味わえない「いくら味噌漬け握り」もぜひとも食べたい一貫。加熱後に味噌漬けにして握りにし、味、食感、香りまで考慮した“発明品”だ。
穴子は腹と背をそれぞれ使って握っており、尾の味が深い。そんな工夫やアイデアも見事の一声。
職人気質の親方と明るい奥さんのコンビが心地良い。親方が居酒屋の店長時代に「鮨の修業をしたい」と言い、奥さんが背中を押したそう。
肩肘張らずに鮨を楽しめる雰囲気で、鮨店にあまり慣れていない人にもオススメ。
“昔ながらの鮨屋”の良いところが詰まっていて、親方がどういうお店にしたかったのかよく伝わってくる。
2.鮨屋の枠にとらわれず我が道を探究する次世代の名店 『深坂』
系譜好きの私は、親方の修業先を参考に行く店を決めている。そんな中、好きな鮨店2軒と和食で経験を積んでいて「間違いないはず」と行ってみたらドンピシャ。
『深坂』の深坂勇輔さんは27歳と若く、それぞれ期間は短いので“出身”とは言えないようだが、そんな相性は大事だ。
夜はおまかせで、遅い時間にはおこのみも可能。
握りは修業先と違うオリジナル。酸を立たせてパンチがあり、酢飯の温度も高めでどちらも私好みだ。まぐろをはじめ、包丁の入れ方が斬新で食感が楽しい。
ソムリエの女将さんが選んだ日本酒のセレクトも抜群で、自作のノンアルも個性的で美味しい。
屋号に“鮨”を付けないのは、「鮨屋の枠に収まりたくないから」とのことで、その頑固さも頼もしい。
夜9時からバータイムを設け、単品料理も人気とか。それはまだ行っていないから近いうちに再訪予定だ。
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