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【浅草で大人気の老舗洋食店「グリルグランド」】 一口食べると懐かしくてほっとする、特別なごちそう

  • 2025.2.3

今回のお店:グリルグランド

1941年創業。 物静かな良太郎さん(左)と活発な昌一さんの阿吽の呼吸で生み出す居心地のよさも、店の味わいのひとつ。ディナーは要予約。

東京都台東区浅草3丁目24-6
03-3874-2351

祖父、父の跡を継ぎ、老舗の厨房を守り続けています

コロッケやグラタンのベースとなるベシャメル。

国内のみならず世界からの観光客でにぎわう浅草・浅草寺。その北側に位置する通称“観音裏”は、かつては芸者衆が闊歩した風情あふれるエリアです。その場所で83年間、洋食を振る舞い続ける洋食店が「グリル グランド」。現在料理長を務めるのは、3代目の坂本良太郎さん。祖父、父の跡を継ぎ、老舗の厨房を守っています。

「フランス料理にイタリアン、ホテルなどさまざまな場所で修業したので、戻ってからメニューをいろいろ増やしました。でも、やっぱり昔ながらのメニューをお客さまは気に入ってくださっているんだなと。ビーフシチューにしてもコロッケにしても、まずは祖父や父の作った味と同じものが作れるようにして、それをもとに自分なりのレシピを作っていった感じです」

二人が生み出す居心地のよさも、店の味わいのひとつ。

ホールで次々とかかってくる予約の電話にきびきびと応対するのは、良太郎さんの兄の昌一さん。顔も体格もよく似た3歳違いの兄弟は、厨房を遊び場にして育ちました。昌一さんは「料理屋に生まれたら店を継ぐのがこの街のしきたりのようなもの。いつかはそれぞれ修業に出るんだと、当たり前に思っていた」と言います。

身だけでなく茹で汁の旨みまで閉じ込めたカニクリームコロッケは「ぜひソースなしで味わって」と昌一さん。

転機は10代の頃、二人でキャベツの千切りを競ったこと。「速さは僕が上。でも、僕のはゴワゴワのに弟のキャベツの食感はフワフワだったんです」と昌一さん。学業を終えて料理修業に出た良太郎さんに対し、昌一さんは企業に就職。しかしそれも、いずれ弟と家業を営むのに備えて実地で経営を学ぶ、もうひとつの修業でした。

「そういえば小学生の頃から厨房を手伝うのは弟で、近所の料亭に出前をするのは僕の役目だった。祖父母も父母も、僕たちの違いを見抜いていたんですね」と昌一さん。会社員生活を終えて店に戻ってからは、料理一筋の弟を支え、営業経験で培った緻密な顧客対応で店の業績を大きく伸ばしました。良太郎さんも、オムレツを割ってとろりと卵を絡ませる新しいオムライスを加えるなど、自身のカラーを発揮。地元の昔なじみにえ、今ではより幅の広いお客さまが、懐かしく、でもどこか新鮮な味わいを求めて店を訪れます。

目標は自分たちの代で店舗を建て替え、創業100年を迎えること

ほろほろとやわらかなビーフシチューは看板の一品

「一度来てくれた方がリピートしてくださった時は、やっぱりうれしい」と昌一さん。良太郎さんは「僕は毎日、料理を作っていられるだけで幸せ。それ以外のことは何もできないから、兄のサポートはすごく助かる」と笑みを浮かべます。目標は自分たちの代で店舗を建て替え、創業100年を無事に迎えること。観音裏には今日も、おいしい湯気が立ち上ります。

photograph:Kentaro Hisadomi text:Michiko Otani

リンネル2024年4月号より
※写真・文章の無断転載はご遠慮ください
※掲載している情報は取材時のものです。現在は変更になっている場合があります

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