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酸化亜鉛、グリセリンetc.「この成分が肌に良くない!」はどこまで信じる?成分との上手な付き合い方を解説

  • 2025.2.2
教えてくれたのは…
慶田朋子先生

銀座ケイスキンクリニック院長・日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。医学博士。最新の美容医療機器や治療法を自らの肌で試し、その経験と高い知識で皮膚の悩みに何でも答えてくれる美肌の救世主。わかりやすい説明でメディア出演も多く、『女医が教える、やってはいけない美容法33』(小学館刊)をはじめ切れ味鋭い著書も人気!

「●●という成分は肌に良くない!」という情報とどう向き合うべき?

慶田朋子先生

まず前提として、どんなに素晴らしいといわれる成分でも、“合わない”と感じる人は存在します。スキンケア成分の定番であるヒアルロン酸や人気のビタミンCでさえ、肌に合わずに荒れたり、アレルギーを起こしたりする可能性はゼロではありません。「すべての人にとって安全でマッチする美容成分なんてない」ということは、あらためて認識しておいてほしいですね。そして、「●●という成分は良くない」、「●●という成分が入っているから悪い」と決めつけるのは、とても短絡的。化粧品の成分は、分子構造や濃度、他成分とのバランスによって、作用や効能が変わってきます。たとえば、ある飲み物にビタミンCが入っていると書かれていても、それを顔に塗って美白作用が期待できるなんて誰も思いませんよね? 成分表記に●●と記載があっても、ものによって、また濃度によって働きが異なることもあるため、それだけで判断はできないと心得て。


その中で最近目にするようになってきたのが、酸化亜鉛やグリセリンなど、非常になじみのある成分が肌に良くないとされる情報。

慶田朋子先生

酸化亜鉛もグリセリンも、化粧品に長年使われてきている成分で、ほとんどの人は問題なく使えます。紫外線散乱剤である酸化亜鉛は、UV-Aを含む紫外線やブルーライトをカットしてくれて、皮脂吸着作用も併せもつ有能な成分。酸化亜鉛そのものは白いパウダーですが、粒子やコーティングなどの工夫で使用感や仕上がりも年々進化を遂げています。また、「グリセリンでニキビが増える・悪化する」という噂を見かけたこともありますが、グリセリンは高い水分保持力を持ち、保湿の基本ともいえる成分。「グリセリンを塗ることでアクネ菌が増える」という情報から広まったと考えられますが、アクネ菌だけが過剰に増えるわけではありません。むしろ、美肌菌と呼ばれる表皮ブドウ球菌など他の菌もグリセリンを代謝し、そこから分泌される短鎖脂肪酸がアクネ菌を抑制してくれる。保湿以外にも、皮膚常在菌のバランスを保つ働きが期待できます。各社の研究者たちが臨床試験を経て、長年にわたって処方を加えてきた優秀な保湿剤。情報の一端だけに振り回されないようにしましょう。


「良くない」と言われる成分が化粧品に使われる理由とは?

慶田朋子先生

化粧品の成分は、何かしらの意味や目的があるからこそ配合されています。美肌になるということだけではなく、化粧品の安定性を保つため、腐敗を防ぐために入っている成分もありますが、それは刺激にならないとされる濃度。それで実際に肌が荒れるという人も一部いるかもしれませんが、大多数の人には影響がありません。化粧品は常温で保管するわけですから、腐りやすいものよりも、きちんと安定性を保っているものを使ったほうが断然いい。大手の製薬会社やメーカーの化粧品は、精密に処方・設計されていることがほとんどです。


賛否両論あるのが怖い……。化粧品を楽しむヒントとは?

ネガディブな情報ばかりに踊らされないで!

慶田朋子先生

「●●という成分が肌に悪い」と言われるとキャッチーで、炎上商法ではないけれど、ネガティブなことを発信するほうがアクセス数を稼げるケースが多いのが現実。人は「損をしたくない」という気持ちが働くので、そういった情報のほうにどうしても目を向けがちです。でも、何かを悪者にしてブームをつくりたいだけの場合もあったりするので、それに踊らされ過ぎないことが大切。とくに「●●が良くない」という記事を一度でもクリックしてしまうと、AIによって似たような記事ばかりが目につくようになります。それを見続けるとあたかも真実であるかのように錯覚してしまうので、「スマホの中の情報にはバイアスがかかっている」ということを頭の片隅に置いておきましょう。AIは正誤を判断しません。何か成分を調べるのなら、デメリットばかりを検索するのではなく、メリットも併せて検索するというのも一つの手かもしれません。


迷ったらコンプライアンス意識の高い会社の製品を選ぶ

慶田朋子先生

化粧品の成分というのは非常に難解で、エビデンスに基づいた検索も極めて困難。というのも、成分表記があっても肝心の濃度や処方がほとんど開示されないため、どの成分がどう作用しているのか判断しにくい、ということがあります。また、エビデンスといっても、研究内容が満足できるものではなかったり、個人の感想レベルだったりすることもあるので、最終的にはメーカーのコンプライアンスを信じるしかない、というのが本音。何を使っても肌が荒れないのであれば色んなコスメを試せばいいと思いますが、もし肌が敏感になりやすかったり、どれがいいのか迷ったりしているなら、コンプライアンス意識の高い会社で、研究員がしっかりしているメーカーのものを選んでみる。そして、合うモノが見つかったら、あまり浮気はしない。肌に毎日何かを塗ると言うことは、効果と同時にリスクもあるのだということを忘れずに。


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写真協力/ShutterStock 取材・文/橋場鈴里

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