汐留のパナソニック汐留美術館では「ル・コルビュジエ—諸芸術の綜合 1930-1965」が2025年3月23日(日)まで開催されています。 ※本展は、ル・コルビュジエ財団の協力のもと開催されます。
ル・コルビュジエの後期の絵画芸術に注目したはじめての展覧会
ル・コルビュジエ(1887-1965)は近代建築の巨匠として世界的に著名な建築家であり、上野にある国立西洋美術館本館の設計者としてご存知の方も多いかと思います。
本展覧会では1930年代以降に彼が手がけた絵画、彫刻、素描、タペストリーといった作品が展示され、さらに彼が求め続けた新しい技術の芸術的利用にもスポットがあてられている展覧会です。
会場展示風景
第1章 浜辺の建築家
1930年代ル・コルビュジエは芸術家としてフランスで活動しており、当時のパリの芸術界には新しい傾向が現れます。1929年の世界恐慌はそれまでの機械万能主義から自然科学的関心へと価値観を転換させ、絵画の自律性を追求する抽象絵画から、未知の世界へと向かうシュルレアリスムの幻想的な絵画が人々の心をとらえるようになりました。ル・コルビュジエの作品は機械と人体、自然、あるいは工業性と地域性との関係性を、絵画や彫刻に模索していきます。
会場展示風景
第2章 諸芸術の綜合
ル・コルビュジエの円熟期の創作活動を理解する鍵が「諸芸術の綜合」の概念です。絵画、素描、彫刻、タペストリー、建築、都市計画はすべて、彼にとって「一つの同じ事柄をさまざまな形で創造的に表現したもの」であり、人の全感覚を満たす詩的環境を創り出すために、互いに関わりながら集結するものでした。
こちらのタペストリーの作品は大作で、本展覧会の見どころのひとつかと思います。
会場展示風景
こちらの展示室では彫刻、絵画、素描、彫刻、が展示されています。 木彫作品は家具職人のジョセフ・サヴィナとの協働から生まれ、ル・コルビジェはそれらを「音響的形態」とよびました。絵画を立体化したその曲面の造形は、ロンシャンの礼拝堂をはじめとする後期の建築作品に応用され、「音響的建築」の実現がめざされました。
会場展示風景
第3章 近代のミッション
ル・コルビュジエの絵画の集大成である「牡牛」のシリーズから晩年の3点《牡牛XVI》《牡牛XVIII》《牡牛》(未完・遺作)がハイライトとして展示されています。人間の生命力と精神の進化を象徴的に表した「牡牛」シリーズの集大成といわれており、見どころのひとつです。
左:ル・コルビュジエ 《牡牛XVI》1958年、ル・コルビュジエ財団(パリ)蔵 中央:ル・コルビュジエ 《牡牛XVIII》1959年、大成建設株式会社蔵 右:ル・コルビュジエ 《牡牛》1963年、ル・コルビュジエ財団(パリ)蔵
第4章 やがてすべては海へと至る
ル・コルビュジエは1954年に執筆した論考「やがてすべては海へと至る」のなかでテクノロジーの発達により高度にネットワーク化、グローバル化が進む情報化社会の到来を予見しています。1958年ブリュッセル万博フィリップス館で公開した《電子の詩》は、当時の最新技術を駆使し、音楽、映像、建築の各要素を融合させ人類の発展をテーマとした作品でした。マルチメディア芸術の先駆けともいえ芸術家、建築家として多才な様子が伺える見応えのある展覧会です。