今田美桜がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『あんぱん』が、3月31日よりスタートする。
朝ドラ第112作目となる本作は、『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと小松暢の夫婦をモデルとした勇気の物語。気が弱くて自信のない柳井嵩を北村、激動の時代を共に生き、どんな時も励まし、牽引し続けたヒロイン・朝田のぶを今田が演じる。
放送開始を前に、3月10日にはNHK放送センターで第1週完成試写会見が開かれた。筆者はそこで一足先に第1週を視聴。冒頭に登場する50歳頃ののぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)、幼少期ののぶ(永瀬ゆずな)と嵩(木村優来)にの芝居に心打たれながら、中でも印象に残ったのが、松嶋菜々子が演じる柳井登美子だった。
松嶋菜々子が演じる登美子は、朝ドラとしては異色とも言える“毒親”
登美子は嵩の母親。幼い時に父・清(二宮和也)を病気で亡くした嵩は、登美子に連れられて後免与町にある柳井医院を営む伯父・寛(竹野内豊)の家に引き取られ、転校先の小学校でのぶに出会うこととなる。
3月20日にオンエアとなった『もうすぐ連続テレビ小説「あんぱん」』においてもすでに明らかになっているが、登美子は嵩と弟の千尋を柳井家に預けたまま再婚をしに出て行ってしまう。その後、再婚相手と離縁し、8年ぶりに町に戻ってきた登美子は、嵩を柳井医院を継ぐことを望む。公式サイトにもあるように、文化的な教養が豊かであり、美しく勝ち気で利発な嵩の母ではあるが、奔放な振る舞いで嵩を翻弄する、朝ドラとしては異色とも言える“毒親”だ。
松嶋自身も登美子が再婚を選択したことに「ぽっかり空いてしまった穴を、自分なりに埋めようともがいている人でもあります」とコメントしているが、一方で息子たちには再婚のことを告げず出て行ってしまうことに対しては「理解することは難しい」と正直に答えている。
ヒロイン役『ひまわり』、育ての母『なつぞら』に続き、松嶋の朝ドラ出演は3作目
松嶋の朝ドラ出演は今作で3作目。1996年放送の『ひまわり』でヒロインを演じ、これが松嶋のドラマ初主演。モデル業が中心だった松嶋が、俳優としても本格的に活動を開始した朝ドラだった。
2作目は広瀬すずがヒロインを務めた2019年放送の『なつぞら』。100作目の朝ドラというメモリアルな作品に歴代のヒロインが集結。その一人として松嶋はなつ(広瀬すず)にとっての育ての母となる富士子を演じている。約20年ぶりの朝ドラ出演ということで、すでに知名度や芝居は確立されており、『ひまわり』でのヒロイン役から母親役へと変化していることも月日の長さを感じさせる。
そして、今作『あんぱん』では『なつぞら』とは対照的に実の母親役ではあるが、先述したように嵩には育ての母・千代子(戸田菜穂)が別にいるという、難しい役どころに挑むこととなる。公式にも青を基調とした着物を着た登美子の場面写真が公開されているが、すぐに再婚を決めたことから分かるように、その美貌で町の男性陣を釘付けに。少しミステリアスな雰囲気も纏った役でもある。
“毒親”と表現してしまってはいるが、まだ放送も始まっていない段階のため、物語が進むにつれて登美子の真意や母親としての愛情が垣間見えるのかもしれない。ただ、松嶋にとっての新境地の役になることは間違いない。
ライター:渡辺彰浩
1988年生まれ。福島県出身。リアルサウンド編集部を経て独立。荒木飛呂彦、藤井健太郎、乃木坂46など多岐にわたるインタビューを担当。映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』、ドラマ『岸辺露伴は動かない』展、『LIVE AZUMA』ではオフィシャルライターを務める。