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長く使い続けた北欧家具をまっさらな空間で。〈調理室池田〉オーナー・池田講平、料理人・池田宏実

  • 2025.1.31

愛着のある家具や器が映える、風通しのいい部屋作り

築45年のマンションを改築した池田邸。ダイニングの奥に見える仕切り壁の内側は寝室。壁の角を斜めに切って見通しをよくした。家具は20年以上使っているアルネ・ヤコブセン。

アルヴァ・アアルトのすこやかな家具が好き。あるいは19世紀の修道院で使われた簡素な白い皿や、早朝の静かな光。家族が愛するものを集めてまっさらな部屋に解き放ったような、清々しい空間だ。

「5年前に始めた店が忙しく、家に手をかける余裕がなくなってしまって。リセットしなくちゃと思い、昨年夏に引っ越しました」

そう話すのは、川崎市中央卸売市場内にある人気カフェ/ギャラリー〈調理室池田〉の池田講平さんと宏実さん。「20年使い続けている北欧家具やミッドセンチュリーの家具を、気持ちよく生かせる広さを」と約80㎡のマンションを購入し、北欧家具好きな建築士にリノベーションを依頼した。

白漆喰の壁が美しいリビング。椅子はブルーノ・マットソン。座面の革がいい風合いに育っている。棚はモーエンス・コッホ。その上に置いた平面作品はヨゼフ・アルバース。

まずは個室間の壁を取り払ってひとつながりにし、寝室など必要な場所だけに仕切り壁を設置。扉を極力なくし、家具の高さを抑え、見通しも風通しもよい空間とした。漆喰の白壁や濃い色のカーペットが、家具の優美なフォルムを際立たせているのも特徴だ。

そして、「飲食店では客席によって眺めや気分が変わりますよね。家でもテーブル席が2つあったら楽しいだろうと思い、キッチンの横と窓際の2ヵ所に食卓がある“ダブルダイニング”にしたんです」と宏実さん。前者にはアルネ・ヤコブセン、後者にはボーエ・モーエンセンの椅子。どちらで過ごす時も、もう一方の家具を眺められる。

窓際のダイニング。1×2mの大テーブルは〈HIKE〉オリジナル。改築設計は〈TIMELESS LIVING〉。ウールの絨毯など天然素材を使う方針にも共感した。
ダイニング(右の写真)の隣には、扉のない仕切り壁を介して寝室が続く。寝室に飾ったのは、名画をモチーフにしたヒロ杉山のブラックペインティングシリーズ。
ダイニングテーブルの上。右上から時計回りに、小嶋亜創の壺(愛猫ゆきまる嬢の水飲み器でもある)、中国・清朝の陶器、室町時代のもの、陶芸家・山田隆太郎の作。
リビングのキャビネットは「収納量を優先した家具より、いつ目にしても心地よさを感じるデザインを」と選んだコッホの名作。本の並べ方にも美学が感じられる。

「毎日過ごす場所で見るものや得た感覚が、自分に馴染むものを選ぶ目を育てるのだと思います。だから住まいには、好きなものや美しいと感じることを正直に反映させたい。画家が絵を描くのと同じ、空間作りも自己表現です」と講平さんは言う。

住み始めて半年。「そろそろ壁にアートを掛けようとは思うものの、何もない白壁があまりに清々しくて。しばらくはこの潔さを楽しむつもりです」

長男・満智夫さんの個室。レコードは父子共通の趣味。テーブルは両親が長年使っていたアルテック製。
壁にはファッションディレクター長谷川昭雄と美山有による和紙カレンダー。シワを寄せてから張った。
「アアルトの家具には古びても崩れないカッコよさがある」と満智夫さん自ら時間をかけて買い揃えた。
十角盆は李朝、壺は長野に登り窯を構える小嶋亜創の作。キャビネットはウェグナーのヴィンテージ。
改築前の建物の空気感を残した玄関。照明は元のまま。壁と靴箱は塗り直し、李朝の木箱を置いた。
廊下の壁には、陶磁器などを飾るためのスペースを設けた。耳付きの水がめは南イタリアの古いもの。

profile

池田講平(〈調理室池田〉オーナー)
池田宏実(料理人)

いけだ・こうへい、いけだ・ひろみ/川崎市中央卸売市場北部市場内にある〈調理室池田〉を営む。2018年にオープンした店は、講平さん(左)が全体のディレクションと2階ギャラリーのアンティークの買い付けを、宏実さん(奥)が1階カフェを受け持つ。右は今春から社会人の長男・満智夫さん。時間があれば3人でダイニングに集まり、デザインや仕事の話を延々としているそう。

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