宝塚歌劇団を卒業して、早くも6年目を迎える明日海りおさん。退団後の活動はご存知の通り、数多くの有名ミュージカルはもとより、映像作品にも出演を重ねるなど、八面六臂の活躍が話題です。そんな明日海さんが2025年の第一発目に選んだ出演作品が、ミュージカル『昭和元禄落語心中』。同じ事務所の山崎育三郎さんが企画したというオリジナルミュージカルは同名の大人気マンガをベースとしたもの。山崎育三郎さん、古川雄大さんという豪華共演者を迎えて、すでに大きな話題となっているこの作品について、『みよ吉』役で出演される明日海さんに今の思いをたっぷりと伺いました!
山崎育三郎さん、古川雄大さんとミュージカルで共演する感動!
VOCE
昨年は数多くの作品でご活躍されましたが、ミュージカル『昭和元禄落語心中』へのご出演が決まったときのお気持ちを教えてください。
明日海りおさん(以下、明日海さん)
まずは、山崎育三郎さんと古川雄大さんとミュージカルをさせていただくことが、夢みたいだなと思いました! イベントでもなく、コンサートでもなく、ミュージカルができるんだって……。山崎さんがオリジナルミュージカルを作りたいという夢を実現する、そのタイミングにご一緒させていただけるというのも、信じられないという気持ちがありました。
VOCE
明日海さんにとっても、記念すべきミュージカルになりそうですね。
明日海さん
はい。それと同時にこの『昭和元禄落語心中』という作品を知って、読んでみて、一人ひとりのキャラクターがどれも愛おしいなって。マンガは全部で10巻ありますよね。私は、「この巻も好きだけど、こっちの巻も好きだし」と、いろんなエピソードごとに好きなシーンがあるんです。誰もが一生懸命生きていて、愛おしい作品です。
VOCE
アニメ版やドラマ版もご覧になられましたか? ドラマ版には山崎さんがご出演になっていますね。
明日海さん
アニメは途中まで見ていて、ドラマ版はまだこれからです。山崎さんがご出演されているので、早く見ないと!と思っていますが、きっとその頃には台本が仕上がってくると思いますので、原作と台本を擦り合わせて、私が演じるみよ吉の描かれ方に違いがあるのか、もしそうだとしたら、そこにはどんな意図があるのか、そういったことを客観的に見られるくらいの余裕を残しつつ、ちゃんと網羅しておきたいと思っています。
みよ吉みたいに生きられたら、後悔はないと思う
VOCE
みよ吉はすごく複雑な思いを抱えている役柄だと思いますが、今の時点で、みよ吉に対してどんな人物だと思っていらっしゃいますか?
明日海さん
最初読んだときは、どうしようって思いました(笑) 同性から見ると、みよ吉さんって、ちょっとヘビーですよね……。育さまのファンの方、古川さんのファンの方がご覧になったときに、「あの女さえいなければ、こんなことにならなかったのに」って絶対思うよね、と心配になりました(笑)
VOCE
確かに(笑) 特に育三郎さんが演じられる助六とみよ吉は深い仲になりますから。
明日海さん
何度も読み重ねるうちに、みよ吉みたいなタイプは同性から見ると「すごく大胆だな」と思うでしょうし、仮に、私が思いを寄せる人がいたとしたら、その人の周りにはどうかいないでくれ!と思われるタイプの女性だと思うんです(苦笑) でも、読み進めるうちに、あそこまで素直に気持ちのダムを決壊させられることが、段々気持ちよく思えてきて。その瞬間の彼女の美しさは特別なはずです。ただ、心のどこかで、自分はこういうふうにはならないでおこう、とも思いつつ(笑)
VOCE
自分と照らし合わせちゃいますよね。
明日海さん
ありますね。私だったら、相手がどう受け取るかを先に考えるタイプだと思うのですが、きっとみよ吉もそういう気持ちがないわけではないはず、とも思うんです。でも、今、ここだ!と思ったら、ドドドドドとドミノ倒しのように思いを告げるタイプだから、そこはちょっと羨ましいかもしれません。
VOCE
躊躇しそうな場面で躊躇しないキャラクターという感じがあります。
明日海さん
みよ吉みたいに人生を生きていったら、死に際に後悔しなくていいんじゃないかなと思います。きっと「やりきった!」と思えるだろうなって。優しくて愛嬌があって、とても素敵な人だと思います。ちゃんとお母さんでもあり、おかみさん的なところもあり、でも菊比古さんに会えばきゅるんって乙女になったり……。いろんな受け取り方ができる人物だと思うので、どこを際立たせて演じるかというのは、周りのキャストの皆さんと実際に動いてみて、どう感じるかだと思いますし、演出の小池修一郎先生のプランを伺って、練っていきたいです。
私は落語をやらなくていいので、ホッとしてます(笑)
VOCE
やりがいのありそうなお役ですね!
明日海さん
同じような役をずっとやっているよりは、やはり経験したことのない感情を体感できる役に挑戦できるほうが面白いですよね。「こういう役は初めて!」というのをやりたくて生きているんです、本当に。だから、「あー、明日海さん、こういうお役は苦手なんだー!」と言われないように頑張りたいと思います(笑)
VOCE
明日海さんは、落語にはお詳しいんですか?
明日海さん
子どもの頃に修学旅行で行って、聞いたことがある——、みたいな感じです。宝塚に入って1年目のときに『なみだ橋 えがお橋』という作品に出演したのですが、それが落語をたくさん組み合わせて作っているコメディ調の人情噺だったんです。そのときに『文七元結』の文七の役をやったので、左官の長兵衛が出てきたり、若旦那が50両どうしても必要で、とか、そういった感覚は自分の近くにありつつも、実際に聞きに行ったことはないので、舞台が始まる前にぜひ聞きに行きたいと思っています。
VOCE
お詳しいですね! 落語家さんたちの中でも、このミュージカルは話題になっていると聞きました!
明日海さん
ありがとうございます。でも、私自身は落語をやらなくていいので、ちょっとホッとしています(笑) 山崎さんと古川さんはしっかりやられることになりますから……。でも、おふたりは耳が良くて、お芝居も慣れていらっしゃるので、まったく問題ないと思います。私もぜひ都内の寄席に行ってみたいと思っているんです!
VOCE
きっと明日海さんが寄席にいらしたら、落語家さんたちがビックリするかと(笑)
明日海さん
アニメにもなった作品なので、それに関わっていらした声優さんたちも「ミュージカルでやるんだね」と仰っていると聞きました。注目されている作品だと思うので、そのプレッシャーをエネルギーに変えて、頑張らないと!
育様が夢を叶える瞬間に立ち合えるというのが、すごくうれしい
VOCE
山崎さんと古川さんは同じ事務所の先輩だと思いますが、それぞれのお役についてお話しされたりしましたか?
明日海さん
今まではそんな時間が取れてなかったのですが、先日こちらのヴィジュアル撮影をした際に、おふたりが扮装された和装のお姿を見て、はっきりと想像が広がりました! 本当に素敵で驚いたのと同時に、育様の解禁情報コメントを見させていただいたんです。そこで、日本のミュージカル界に対しての思いを熱く語っていらして……。私は育様と同じ学年なのですが、私はもう本当に、こっちのファンデのほうがいいかなとか、このマスカラ素敵だなとか、そういうことしか考えてなくて(笑)
VOCE
山崎さんはこれからの日本のミュージカル界を考えていらっしゃるんですね。
明日海さん
そんな育様が夢を叶える瞬間に立ち合えるというのが、すごくうれしいです。そして、今までダブルキャストなどで同じくミュージカル界を支えていらして古川さんが同じ舞台に立たれるのも、本当に貴重だと思っています。今までおふたりとコンサートやイベントではご一緒させていただいたことがありますが、“作る過程”を見せてもらうのは初めて。おふたりがどのようにお芝居を作られて、どんなふうに作品と向き合うのか——、それを近くで見せてもらえるのはすごく楽しみです!
今回の作品は、明日海さんと同じ事務所に所属されている山崎育三郎さんの企画でスタートしたとあって、明日海さんの喜びや舞台に対する期待感もひとしお。後編では2024年の振り返りと今年への意気込み、そして最近の美容のハマりものについても長期間の舞台に備えるためのティップスや、共演者の方々との過ごし方について話してくださいました!
- 明日海りおインタビュー後編は1月31日(金)公開予定
【明日海りおさん・プロフィール】
明日海りお(Rio Asumi)
1985年6月26日生まれ、静岡県出身。2003年、宝塚歌劇団に89期生として入団。2014年に花組トップスターに。『エリザベート-愛と死の輪舞-』『ベルサイユのばら-フェルゼンとマリー・アントワネット編』『新源氏物語』『ME AND MY GIRL』『ポーの一族』など、数々の話題作で主演を務める。5年半のトップ在任期間を経て、2019年11月に惜しまれながら退団。2020年、第41回『松尾芸能賞』優秀賞を受賞。退団後は『ガイズ&ドールズ』(2022年)、『エリザベスアーデンvs.ヘレナ・ルビンスタイン -WAR PAINT-』(2023年)、『王様と私』(2024)、『9 to 5』(2024年)などの舞台、さらにNHK連続テレビ小説『おちょやん』(2021年)、『下剋上球児』(2023年)、『グレイトギフト』(2024年)などドラマでも活躍。
<作品紹介>
出演:
山崎育三郎 明日海りお 古川雄大
黒羽麻璃央 水谷果穂 金井勇太 中村梅雀
【東京公演】 東急シアターオーブ:
2025年2月28日(金)~3月22日(土)
【大阪公演】 フェスティバルホール:
2025月3月29日(土)~4月7日(月)
【福岡公演】 福岡市民ホール・大ホール:
2025年4月14日(月)~23日(水)
グレーワンピース¥6710/ドレスアンレーヴ(ディウカ・03-5468-2118) イヤリング¥17600、ブレスレット¥19800/ともにドレスアンレーヴ(ラ・キアーヴェ・03-5468-2118) 靴/スタイリスト私物
撮影/楠本隆貴 ヘアメイク/山下景子 スタイリング/大沼こずえ 取材・文/前田美保