【漫画】身の潔白を証明するため、刑務所の外で命を懸けた“一日一善”に挑む男に「生き残って真相を知ってほしい」の声
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、「ヤングアニマルWeb」にて掲載中の漫画『懲役一善 ~社会のゴミですけど感謝してくれますか?~』(白泉社刊)を紹介する。原作の宮月新さんが、12月4日にX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、4000件を超える「いいね」やコメントが多数寄せられた。本記事では、原作の宮月新さんと作画の田中基さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
15人の重犯罪者たちに課された日課と連帯責任
関東第八刑務所に収監されていた重犯罪者15名が、刑務官らに見守られながら“脱獄”する。恋人を殺害したとして無期懲役の判決を下された元刑事・楠木亘は、刑務所に収監されながらも無実を訴え続けていた。そんな楠木に、関東第八刑務所の所長は彼が身の潔白を証明するために「(刑務所から)出してやってもいい」とある取引を持ちかける。
条件として突きつけられたのは、12月1日までの3カ月間「他人から感謝される」日課を果たしながら暮らすことだった。同じ条件を飲んだ重犯罪者15人とともに、身分証や一銭の金も持たされず、廃墟となった家屋で過ごすことになった楠木。どうにか日課である一日一善を実践して安心したのもつかの間、腕につけたある装置が警告を発する。“ペナルティ”が課されたのだ。
重犯罪者たちに釈放をチラつかせたこの取り組みには、ある落とし穴があった。犯罪者たちを見守るAIが条件に抵触したと判断した場合、“連帯責任”のペナルティが課せられ、ルーレットで選ばれた受刑者は、即死する――。
この物語を読んだ人たちからは、「生き残って真相を知ってほしい」「感情の揺れ動きが伝わってくる」「一日一善、簡単そうに見えて実は難しい」「真犯人は所長な気がする」「先が読めなさすぎる」など、多くのコメントが寄せられている。
デスゲームに通ずる理不尽なルールに追い詰められる楠木たち
●原作・宮月新さん
――一日一善or死、という落差の激しいテーマに新鮮味を感じました。発想の源になるような出来事などがあるのでしょうか?
宮月新:以前、ザテレビジョンさんにご紹介頂いた「ぼくらの夏が裂けていく」では、コロナやマスクといった現実に則したテーマがありましたが、懲役一善に関しては特に発想のきっかけになる物事があったわけではありませんでした。ただ、新連載に向けて何かデスゲームに繋がる様なアイデアは無いものかと日々考えていました。
デスゲームの醍醐味は「理不尽」です。そこで、人間が理不尽に死を賭けて戦わされるとき、一番葛藤が生まれる組み合わせは何だろうかと考え「犯罪者と善行」という相反する組み合わせを思い付きました。その瞬間「これは新しい何かが生まれそうだ」と直感し、物語を描き始めました。そこからは、わりとすんなり「一日一善をしないと死刑」という設定が組み上がっていきました。
――ストーリーを考えるうえで気をつけていることや意識していることなどについてお教えください。
宮月:私が物語作りで大切にしているのは「主人公が人殺しを選択し得るシチュエーションをいかに作るか」という事です。人殺しには当然「正義」はありません。ただ、主人公には人殺しをしなければならない「十分な理由」がある、そこに生まれる葛藤を物語にしていく事を常に意識しています。
――今後の展望や目標をお教えください。
宮月:懲役一善については既に完結している物語ですが、これからも一人でも多くの方に作品が届いて欲しいと思っています。私個人としての目標は、世の中にこれだけ沢山の物語が存在する中で「まだこんな切り口があったか!」と、読者さんも自分自身も興奮出来るような作品を作り出す事です。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
宮月:本記事をご覧頂きありがとうございます。懲役一善をきっかけに、「虐殺ハッピーエンド」「不能犯」「シグナル100」など、他の私の作品にも興味を持って頂ければ幸いです。これからも読者の皆様に「新しい何か」を感じて頂けるような作品を描いて行きたいと思いますので、ご声援よろしくお願いします!
●作画・田中基さん
――本作では脱獄した主人公の覚悟に満ちた表情が非常に印象的でした。人物を描くうえで意識していることをお教えください。
田中基:当り前ではありますが、なるべくそのキャラクターがしそうな表情に寄せて描こうとは思っています。同じ笑顔でも人物やシーンによって含みを持たせたり、目元や口、眉の動かし方の違いなどで性格が出ればいいなと。
――ルーレットのシーンなど、特にキャラが緊張している表情が真に迫っていると感じます。喜怒哀楽をはっきり表現するうえで大切にしていることをお教えください。
田中:シーンやキャラクターにもよりますが、表情を誇張気味に崩して描くなどでしょうか。加えて陰影の向きや形などには気を使っていると思います。ニュアンスが足りなければ背景の効果などでなるべく伝わりやすい形になるよう意識しています。
――今後の展望や目標をお教えください。
田中:まずは今新しく携わっている作品の事を頑張りたいです。時間の余裕ができれば絵柄を磨いたり、何か一から作品を作ったりしたいですね。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
田中:原作の宮月先生と担当編集さんをはじめ、スタッフさんとも試行錯誤しながら出来上がった作品です。少しでも楽しんで読んでいただけたら何より幸いです。