「書く瞑想」とも呼ばれるジャーナリングは、自分に自信をつけて、神経質な思考を手放したいときの頼もしいツール。これまでの研究でもジャーナリングは、ストレスを減らし、不安な心を落ち着かせる効果的な方法であることが証明されているそう。
でも「ジャーナリングのやり方や効果は?」「日記との違いはなに?」「ノートやペンが無くても簡単に始められる方法はある?」など、スタートするにあたって意外と知らないことばかり......。
そんなあなたは、始める前にこの記事に目を通してみるのはどう? きっとあなたらしいジャーナリングの始め方が見つかるはず。
ジャーナリングとは
ジャーナリングとは、自分の感情をすべてノートに書き出すこと。まとまった文章でなくてもいいので、自分の頭の中にある感情や気持ちを客観的に眺めて、それをどんどんノートに書いていく。ジャーナリングは、誰でも気軽にできる方法であり、続けることで心や頭を整える力になる。
ジャーナリングに用意するもの
・紙
・ペン(鉛筆など)
・時間が計れるもの(時計や携帯電話など)
ジャーナリングの基本的なルール
・頭で考えないで書く
・時間を決めて書く
・誤字脱字を一切気にしない
・自分以外の誰にも読まれないこと
・集中できる時に行う
ジャーナリングのやり方
【書く場所を決める】
ノートや手帳、スマホのメモアプリなど、自分が書きやすいツールを選ぶ。お気に入りのノートやペンを使うと気分も上がり、続けやすくなる。
【書く時間を作る】
毎日5~10分でもいいので、決まった時間をジャーナリングにあてる。朝起きてすぐや寝る前など、自分が落ち着いて書ける時間帯を選ぶのがおすすめ。
【テーマを決める】
具体的なテーマを決めて書き始めるとスムーズに進められる。なにを書くか迷ったときは以下を参考にしてみて。
「今日あった良いことや出来事」
「感謝していること」
「今の気分や感情」
「解決したい問題や悩み」
「将来の目標や夢」
【自由に書く】
上手に書こうとせず、思ったまま自由に書くことが大切。文法や言葉遣いを気にせず、自分だけのために書くと考えてリラックスして取り組む。
ジャーナリングの効果
1.気持ちを整理できる
書き出すことで、モヤモヤした気持ちや頭の中の考えをスッキリさせることができる。また、自分が本当に感じていることがはっきり分かり、心が軽くなるという効果も。
2.ストレスを減らせる
日々の悩みや不安を書くだけで、心の中に溜まったストレスが少しずつ解消される。とくに感謝していることを書くと、前向きな気持ちになりやすいんだとか。
3.自分をよく知ることができる
書いたものを読み返すと、「自分はこんなことを考えていたんだ」と新しい発見がある。これにより、自分のクセや大切にしていることが見えてくる。
4.アイデアがわいてくる
書いているうちに、新しい発想や解決策が自然と出てくることがある。とくに何かを始めたいときや、行き詰まっているときに役立つ。
ジャーナリングと日記の違いは?
ジャーナリングと日記はどちらも書くことを通じて自分の内面や出来事を記録する方法だけれど、目的や内容にいくつかの違いがある。ジャーナリングは自己探求や感情整理を目的とした「心のメンテナンス」的な活動。日記は日常の出来事を記録して振り返る「思い出のアーカイブ」に近い。4つの違いについて詳しくみていこう。
① 目的の違い
《ジャーナリング》
自己理解や感情の整理、問題解決、ストレス軽減など、「内面の探求」や「心のケア」を目的とすることが多い。
例)自分の感情や考えを深掘りしたり、目標を明確にしたりする。
《日記》
日々の出来事や感じたことを記録することが主な目的。出来事の振り返りや思い出を残すために書かれる。
例)その日の出来事や天気、楽しかったことを記録する。
② 内容の違い
《ジャーナリング》
感情や思考、アイデアに焦点を当てた記録が中心。問いかけやテーマに沿って書くことも多い。
例)「なぜこの出来事にイライラしたのか」「今自分が本当に望んでいることはなにか」など。
《日記》
時系列でその日にあった具体的な出来事を書くことが中心。感情や思考が書かれることもあるが、メインではない。
例)「今日は友達とランチをして新しいカフェに行った。ケーキがおいしかった」など。
③ 書き方の違い
《ジャーナリング》
テーマや目的に応じて自由に書く。箇条書きや質問形式、マインドマップのような方法も使われる。
例)目標リスト、解決したい問題の書き出し、感謝リストなど。
《日記》
時系列に沿った文章形式が多い。比較的ストーリーとして書かれることが一般的。
例)1日を振り返る形で書く。
④ 継続性の違い
《ジャーナリング》
必ずしも毎日書く必要はない。心の整理やアイデア出しをしたいときに自由に行うことができる。
《日記》
毎日の出来事を記録する習慣として行われることが多い。
TikTokで人気? ボイスジャーナリングとは
感情の瞬間を捉える「ボイスジャーナリング」
簡潔に言うと、紅茶を飲みながら、ボイスレコーダーを相手に深くて大事な話をしたり、ただ1日の出来事を話したりすること。親友と本音トークをするときの感覚に近いけれど、気まずい沈黙や、自分が話す番を待つ必要はない。このボイスジャーナリング(別名オーディオジャーナリング)はイギリスで人気上昇中で、TikTokのPVは28億回以上。この方法なら、わざわざ手で書き留めなくても自分の思考を簡単に手放せる。
メンタルヘルスケアサービスLuxe Psychology Practiceの創業者で心理療法士のジェイド・トーマスによると、ボイスジャーナリングは、自分の考えと気持ちを声にして録音すること。「自分の感情や体験を書く代わりに、話してスマホに録音します。思考と感情の変化が速すぎて書けないという人は多いですが、ボイスジャーナリングなら紙に書くときよりも速く、その瞬間の思考を捕えられます。書くことが好きじゃない人も始めやすいタイプのジャーナリングと言えますね」
ボイスジャーナリングのメリット
1.感情がより浮き彫りになり、本音や潜在的な意識に気づける
ボイスジャーナリングの最大のメリットは、自分が好きなように話しながら思考の1つひとつと向き合い、その内容を時間をかけて振り返ることができる点。
「話すことは自然発生的な行為なので、書くときよりも自分を非難したり抑制したりする可能性が低いです。言葉の選択や声の抑揚、さらにはうっかりミスから、従来のジャーナリングでは見えなかった潜在的な感情や信念が見えてくることもあります」と説明するのは、カウンセリング心理学者のペレグ・アムコヤ。
「感情を声にすると、沈黙(意図せずに止まったり躊躇ったりする瞬間も含めて)が言葉より多くの気持ちを語ってくれます。沈黙は、深い感情を処理したり、熟考したり、感情を抑え込んだりしているサインですから。そういう瞬間に立ち返ると、見つめ直すべきエリアが分かってくるのです」
2.声で記憶と感情を呼び覚まし、自分への理解と心の調和を深める
ボイスジャーナリングには、セラピー効果だけでなく、自分自身を落ち着かせ、記憶の定着を促進するという瞑想的な作用もある。
アムコヤいわくボイスジャーナリングは、その環境の聴覚的なスナップ写真。そして「このスナップ写真は、自分がその中にいるのではと思うほど鮮明に当時の記憶や感情を呼び起こすことがあります」とアムコヤ。
「ときどき古い録音を聞いてみると、昔の自分と話し合える。過去の視点と現在の視点のダイナミックな相互作用によって、自分に対する理解が深まり、内面の和解や調和が促されます」
※この記事はイギリス版ウィメンズへルスからの翻訳をもとに、日本版ウィメンズヘルスが編集して掲載しています。
ジャーナリングアプリをエディターが1カ月試してみた
自分で自分を分析するのは難しいけれど、AIが“知らない自分”を教えてくれたら? アプリに表示される質問に答えたり、日々のつぶやきを書き込むだけで週に一度、月に一度、AIがフィードバックをくれるジャーナリングアプリをライターが1カ月間試してみた。
ジャーナリングアプリ、「muute(ミュート)」とは?
通常、紙とペンを用いて行うジャーナリングだが、今回紹介するのはスマホで手軽にジャーナリングができるアプリ。その名も「muute(ミュート)」。このアプリ、日々の出来事を記録できるだけでなく、ユーザーが入力した情報をAIが分析して、ウィークリー&マンスリーでフィードバックをくれるという機能を備えている。
その結果は……?
1カ月間「muute」を使ってみたところ、自分についてさまざまな気づきが得られた。日頃の思考や感情を書き出して外在化させることで、これまで募らせていたイライラや不安を冷静に扱えるように。AIが分析するウィークリーレポートは、ときどき予想外で参考にしづらいメッセージも届くけれど、それはそれで知らない誰かからアドバイスをもらっているようで面白い。
あまり人には言いにくいことも赤裸々に書き出し、自分で自分を、そしてAIという第三者の立場からも、理解を深めることができるのがこのアプリ最大の魅力だ。なにをどう解釈するかは自由だし、「自分らしさ」を見つけたからといって幸福に繋がるとも限らない。でももし、自分らしい選択や行動を模索しているのなら、こうした新しい手法を使って、自分の理解度を上げる試みをしてみるのはどうだろう。
まとめ
ジャーナリングは感情や思考を整理し、ストレス軽減や自己理解を深める効果的なセルフケア。とくに、ボイスジャーナリングやアプリを使った方法は、忙しい現代人でも手軽に始められる。自分に合った方法を見つけて、ぜひ日常に取り入れてみて。