デザインし、縫製し、個展で販売する…という流れを、39年間ひとりで続けてきたumamibags(ウマミバッグ)クリエイターの江面旨美さん。
「若く見えるより、元気に見えるほうが得だなって思う」と話す彼女の、さりげなくオシャレなファッション、心の静穏をもたらすインテリア、自身の健康など、「これからどう生きていこうか」を見つめ直したライフスタイルをご紹介します。
75歳を迎えた彼女の「心が弾む人生の秘密」に、今後の人生のヒントが見つかるかもしれません。
※本記事は江面旨美著の書籍『75歳、心が弾めば人生は楽しい』から一部抜粋・編集しました。
75歳からの一人旅
この年齢になると、何をするにしても先の時間が見えています。やはり、元気でいられるうちに、行きたいところに行っておきたいし、日常では感じられないものを感じたいと思います。
一番いいのは海外旅行ですが、そうなると、現実的には夫と一緒のツアー旅行になるでしょう。それはどうかな? 同年齢のツアー旅行の成り行きを想像すると、どうも心が弾みません。それよりも、いつものスタイルで、まだ訪れたことのない日本の地方を旅するほうが、ずっと面白そうです。まだ使ったことのない青春18切符で、ローカル線を乗り継いで津軽とか日本海側の北の地方へ行ってみるとか。
以前、木更津から久留里まで久留里線で行ったことがあります。各駅で、乗降客を見ているだけでも面白いのです。土地の方言が聞こえてきたり、高校生の可愛い制服姿を観察したり。
ひなびたところでも、本来行くべきところへ行けなくても、日常にはないものを感じて味わい尽くしたいのです。
私の世代は、沢木耕太郎さんの『深夜特急』に憧れた世代です。読み直すと今でもしびれますが、もうあのまねはできません。読むにとどめて、これからまねしたいのは、おじさんの一人旅。今、川本三郎さんや池内紀さんの旅の本に夢中です。ローカル線を乗り継いでいくノウハウや旅先での出会い、しみじみとした孤独感。おじさんらしい渋い旅が、ユーモアたっぷりに描かれています。「夫婦は旅館一緒でいいから、別々に行け」というくだりもあって、そうだそうだと膝を打つ思いでした。
おじさんのように、一人で行き当たりばったり、あちこち鼻を利かせながら先へと進む。そんな旅の行き先は、もう決めてあります。山形県の寒河江。古い町並みが残っているそうです。
著=江面旨美/『75歳、心が弾めば人生は楽しい』