健康や美容にいい「腸活」。やってみたものの「これで合っている?」と自信がない人も多い模様です。そこで腸のスペシャリストに、迷いがちな腸活のウソ・ホントを教えてもらいました。
教えてくれたのは…
▷内藤裕二先生
京都府立医科大学大学院教授(生体免疫栄養学)。専門は、腸内細菌学や消化器病学。講演会などを通して、健康長寿になれる腸の知識を広めている。『健康の土台をつくる 腸内細菌の科学』(日経BP)など著書多数。
腸活=ビフィズス菌をとることだけではない!
腸活してみたものの、イマイチ効果が分からないという人もいるのでは?
「腸内細菌の活動や、腸のぜん動運動は、体内時計と大きく関係しています。生活リズムが不安定だったり運動不足だったりすれば、腸にいいものを食べても効果を感じにくいかもしれません」と、腸研究の第一人者である内藤裕二先生。腸活効果を感じるには、生活習慣や運動習慣の見直しも大事!
「腸内環境が整えば、便通が改善するだけでなく、アレルギー症状の緩和や脳の認知機能維持など、全身の健康に好影響。心拍数や深部体温の安定など、数値としても変化が現われます」
腸活のメリットや、腸活食材のとり方など、迷いがちなポイントをピックアップ。正しい情報を基にした腸活で、元気な毎日を手に入れましょう。
体にどんな変化が起きる?腸活のメリット編
腸活で花粉症が治る? やせる? 腸活の効果とそのメカニズムを解説!
■腸活すると花粉症がラクになる▶▶▶ホント
加齢やストレスによる免疫機能の低下を防げる
花粉症の原因は、免疫システムの誤作動。花粉に過剰反応して、アレルギー症状を引き起こしています。免疫細胞は6割以上が腸に集中しているため、腸内環境を整えることで、加齢やストレスで低下した免疫機能が向上。免疫システムの暴走抑制につながり、症状が和らぎます。
将来は腸内細菌で花粉症を治せる!?
免疫システムは有害なものを排除する「免疫反応」と、過剰反応を止める「免疫制御」の2輪で稼働。免疫制御の役割は、「制御性T細胞」が担っています。実は「特定の腸内細菌を与えたマウスは制御性T細胞が増加し、腸炎や下痢が抑えられた」という実験結果が! これを人間に応用できれば、花粉症を根絶できると期待されています。
■腸活すれば1週間で効果が出る▶▶▶ウソ
2週間で体調の変化を感じられるように!
腸活すると便通が改善する、疲れにくくなる、基礎体温や脈拍の変動が穏やかになるなど、体調が安定してきます。腸活効果を感じられるまでの目安は、2週間。「変化がない」とすぐにやめず、2週間続けてみることが肝心です。
■人類の夢「健康長寿」がかなう▶▶▶ホント
長寿の人に特有の腸内環境がある
高齢で健康な人と、そうでない人の腸を比べると、腸内細菌の種類が異なります。高齢でも筋肉をキープし健康な人の腸は、「酪酸」を産生する「酪酸菌」が多いのが特徴。腸内の酪酸菌を増やせば、健康長寿がかないやすいのです。
■腸活すると仕事や家事がスイスイ進む▶▶▶ホント
セロトニンがしっかりつくられ集中力が高まる
やる気を出すのに働く脳内の神経伝達物質「セロトニン」の材料は、腸内細菌がつくります。そのため腸内環境が悪いとセロトニンの材料が不足。イライラしたり集中力が低下します。腸内環境が悪くなると生活リズムも乱れがち。夜眠れず、昼間ボーッとしやすくなります。
■やせ菌が増えて勝手にやせる▶▶▶まだ不明
日本人に合う「やせ菌」は見つかっていない
欧米では、やせている人に腸内細菌の「アッカーマンシア菌」が多いことが判明。ダイエットサプリとして販売されています。ただし、日本人にはもともと少ない菌で、日本人への効果は不明。便秘解消で下腹はスッキリしますが、「やせ菌」によるダイエットはまだ不可能です。
■腸活すると熟睡できる▶▶▶ホント
睡眠ホルモンがつくられやすくなる
夜、眠くなるのは、脳内に「メラトニン」というホルモンが分泌されるから。メラトニンは食事でとる成分「トリプトファン」からつくられますが、腸内環境が悪いと腸内細菌がトリプトファンを食べてしまいメラトニンの材料が枯渇。寝つきにくく、眠りが浅くなります。
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腸を健康に保つことが体に良いということはよく見聞きしていますが、便秘の解消以外に、こんな魅力的な効果があるとは! ストレス、集中力、睡眠など、現代人の悩みに直結していますね。
イラスト/日江井 香 編集協力/及川愛子
文=徳永陽子