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【田園日記~農と人の物語~ Vol.5】受け継ぎたい 福島の定番料理「いかにんじん」

  • 2025.1.29

農にまつわるリアルを伝えるドキュメンタリー連載。情熱をかけて地元で「農」を盛り上げる「人」にスポットを当て、いま起こっているコトをお届けします。第五弾は、福島県の伝統料理「いかにんじん」のレシピを受け継ぐ、JAふくしま未来女性部のみなさんを紹介します。


福島のお正月を彩る味

福島県の郷土料理として、全国的に知られる「いかにんじん」。

発祥は福島市など中通りの北部とされ、江戸時代にはすでに食べられていたとか。
北海道の郷土料理「松前漬け」に影響を与えたなど、歴史を感じるエピソードも伝えられています。

「いかにんじんは正月料理で、十二月になって長ニンジンが出回ると、いよいよ作る季節が来たなって思う。昔は大量に作り、かめに入れて冬のあいだ食べたものです」

そう話すのはJAふくしま未来女性部(※)のみなさん。

※JA女性部…JA(農業協同組合、農協)をよりどころとして、食・農・暮らしに関心のある女性が、集まって活動する組織です。地産地消を進める活動や高齢者福祉活動など、幅広い活動に取り組んでいます。



長ニンジンとは、阿武隈川沿いの砂地で育つ細長いニンジン。年末年始にだけ出回る伝統野菜です。
赤みが濃くシャキシャキした歯ごたえで、昔からいかにんじんには欠かせない食材だったそうです。

「冬になると畑に連日、長ニンジン掘りに行かされたわ」
「いろり端で、田楽豆腐といっしょに食べるのが正月の楽しみだったなあ」

口々に、懐かしい思い出話が披露されます。

日々なじむ味わいと食感

そんないかにんじんは、今では季節を問わない福島の定番料理。

JA女性部福島地区岡山支部で支部長を務める安倍真知子さん(71)は、こう話します。

「長ニンジンの代わりに時季で手に入るニンジンを使っています。千切りも太かったり細かったり、漬けこむたれも家々で違うんです」



手軽にそろう食材を使い、家庭ごとの味がある。そんなおおらかさも、いかにんじんが愛され続ける理由なのでしょう。

スルメはキッチンばさみで切って、半日ほど酒に浸しますが、残りの工程はスピーディー。
塩もみした千切りニンジンとスルメを合わせ、熱した漬け液を一気にかけたら密閉容器に入れて冷蔵庫で保存します。

一週間がめどですが「日をおくと、味わいや食感がなじんでいくのも楽しみ」と安倍さんらは口をそろえます。
さらにご飯に混ぜ合わせたり、サンドイッチの具材にしたりもするのだとか。


ちょっと余ったものは、細かく刻んでおにぎりに

そんな食の伝統や知恵を丸ごと伝えていこうと、JA女性部では管内四地区に伝わる「郷土料理レシピ集」の発行に協力したほか、JAのYouTube動画「みらいろチャンネル」にも出演し、地域の味を伝えています。

「自分では作らない若い世代も、いつかは懐かしくなると思うの。そのときに教えてあげられるよう、味を受け継いでいこうと思っています」


ゲソは漬け液に浸し、柔らかくしてから 焼いて食べるのが当地流


「いかにんじん」の作り方



材料(4人分)

スルメ(干しスルメイカ) 1枚
ニンジン 2本
だしじょうゆ 100mL
みりん 40mL

作り方
❶ ゲソを除いて3等分にしたスルメを、はさみで縦に細く切る。日本酒(分量外)に半日ほど漬けておく。



❷ ニンジンは好みの幅に切る。塩(分量外)もみして5〜6分たったら水で塩を洗い流す。



❸ 鍋にみりんを入れ火にかけて煮切る。だしじょうゆを加えて沸騰寸前で火を止める。



❹ ①と②を合わせ、③の漬け液を熱いうちにかけ、混ぜ合わせて完成。密閉容器に入れ、冷蔵庫で保存する。



※当記事は、JAグループの月刊誌『家の光』2024年6月号に掲載されたものです。

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