妹たちのはしゃいだ声が遠くから聞こえ、ゆっくりと目を覚ます。その年のクリスマスは朝日がカーテンを透過して部屋中を黄金色に照らしていたことははっきりと記憶にある。
朝が苦手な私が唯一、機嫌よく起きられる日だ。
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小学校四年のとき、友達からサンタの正体を聞かされた。その言葉をすんなり受け入れた私は、サンタはママたちなの?と家に帰ってすぐ両親に聞いた。
あのときなぜ友達の言葉が真実で、サンタという心優しいおじいさんが毎年クリスマスにプレゼントをもってきてくれることが嘘だと信じてしまったのかは分からないけれど……。
その後、いつかのクリスマス前にプレゼントを両親の寝室で見つけ、真ん中の妹にバラしてしまったけれど、今年高校一年生の末の妹は、まだサンタを信じている。
妹の前ではサンタがプレゼントをもってきてくれるという前提で家族は話をするし、我が家のサンタは成人した娘にも同様にツリーの下にプレゼントを置いてくれる。サンタは私の欲しかったものや、もらって喜ぶものは熟知していて、毎年工夫したプレゼントが入っている。
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今年も相変わらず家族と過ごすクリスマスだけれど、私はそれで十分満たされている。毎年恒例の家族のクリスマスパーティーには、とびきりのごちそうを作ってケーキを食べる。翌朝にはサンタからのプレゼントを開封する、特別な日だ。
ただ、もしも純粋にサンタを信じていたあのクリスマスに戻れるなら、と考える。
あの頃の私に言いたい。素直にプレゼントを受け取って嬉しそうに喜びなさい、と。
色濃く思い出に残っているプレゼントは、ビーズやジュエルペットのおもちゃ、マンガ・ニンテンドー3DSなど……。いつも頼んだものよりも多く、複数のプレゼントが入っていた。
ある年のクリスマスには、手放しに喜べないようなものが入っていて、私は不満そうな顔をして両親を困らせてしまったことがある。当時の私は我儘で決して「いい子」とは言えなかったと思う。
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毎年プレゼントを悩みながら選ぶのも大変な様子を、今はオフレコで聞いていると、サンタが反抗期の娘にも一年に一度の一番の贈り物をくれるのは、両親からのとびきりの愛だと思う。
決して貧乏ではなかったけれど将来の貯金を積み立てるため、普段は質素な暮らしをしていた。だからこそ、こんな日のプレゼントのありがたみは増し、クリスマスのあとの浮きたった気持ちはニ、三日続いたものだ。
最近では、これほどのプレゼントをもらって大丈夫かなと少し申し訳なさもある。私はいつまでプレゼントをもらえるのだろうか。高校一年生になってもサンタさんが来ると信じている末の妹には、そろそろ真実を明かそうかとこそこそと話してはいるが。
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去年はヨーロッパ中のクリスマスマーケットを回ってクリスマスの雰囲気を楽しみ、今では、海を隔てた遠い国にいる友人へクリスマスを祝うように、私と私を取り囲む環境は変わったけれど。それでも幼い頃、家族と過ごしいつもと違う魔法のような出来事が降りかかったクリスマスは特別で、これからも私たちにとっては大切な日であり続けるのだと思う。
私が生まれてから今日までクリスマスを特別にしてくれていた両親には、感謝しかない。
いつか私が自分で生活できるようになったら、クリスマスには私から彼らに特別な贈り物をしようと決めた。凍ってしまいそうな寒さの中で心に明かりが灯るような、温かい気持ちになれる日に。優しさと心からの愛をこめて、メリークリスマス!
■夢月和のプロフィール
実家暮らしの大学生。3人姉妹の長女。文章を書くことが好き。美しい景色や植物の写真を集めている。