ワクチンを打つ理由とは?
今冬もインフルエンザが猛威を振るっています。あらためてインフルエンザワクチンについて、薬剤師免許を持つ筆者が解説します。
インフルエンザワクチン接種の一番の目的は、インフルエンザにかかった場合の「重症化を予防すること」です。重症化した場合、子どもであれば急性脳症、高齢者や何らかの理由で免疫機能が低下している人では、肺炎などが考えられます。
「ワクチンを打ってもかかる可能性があるなら、打たなくていいのでは?」と思う人もいるかもしれません。しかし発症を予防することはもちろん、重症化を抑えたり、最悪の場合、死に至ることを防いだりするために、ワクチン接種は有効とされています。
一方、現在の医療では、インフルエンザワクチンを接種していてもインフルエンザの発症を100%抑えることはできません。
6歳未満の小児を対象に、日本国内で行われた研究によると、ワクチンによって発症を抑えることができた割合は60%だと報告されています。また、65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者を対象にした研究結果では、発病を抑えた割合は34~55%、死亡を抑えた割合が82%でした。
過去にワクチンを打ったにもかかわらず、発症したことがある人もいるでしょう。ワクチンを打った自分と打っていない自分を比較するのは難しいですが、ワクチンを打った結果、軽症で済んだ可能性も考えられます。
また、インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型、D型の4種類があります。そのうち、毎年季節的な流行の原因となるのが、A型とB型、2種類のインフルエンザウイルスです。
このA型とB型の両方に、インフルエンザワクチンの効果があります。
2023年から、従来の注射タイプのインフルエンザワクチンに加え、鼻から投与するタイプのインフルエンザワクチンが販売されました。こちらのワクチンも、A型とB型の両方に対応しています。
ここからは、インフルエンザを予防するためにできることについて、説明していきます。
◆インフルエンザが流行る前にできること
インフルエンザ予防の基本は「ワクチンの接種」です。インフルエンザワクチンは、毎年12月~3月にかけて流行します。そのため、11月~12月上旬をめどに、インフルエンザワクチンの接種を終えておくことをおすすめします。
2023~2024年のシーズンでは、春先までインフルエンザの流行が見られていました。12月までに接種を終えられていない人でも、1月以降のなるべく早いタイミングで、接種を検討しましょう。
◆インフルエンザが流行しているときにできること
インフルエンザが流行し始めたときに、意識したい感染対策は次の通りです。
・人混みへの外出を控える・出掛けるときは、マスクを着用する・帰宅時のうがい・手洗いを徹底する・生活習慣を整える・咳エチケットを心掛ける・鼻をかんだティッシュはフタ付きのごみ箱に入れる
インフルエンザの流行期には、ウイルスに近付かないことが適切です。インフルエンザに感染している人からのくしゃみ、せき、鼻水などから放たれたウイルスが、体内に入るとウイルスに感染します。
外出が必要な場合は、マスクを着用し、帰宅時にはうがい・手洗いをしっかりと行いましょう。また、体力やウイルスに対応する抵抗力を保つために、バランスの取れた食事や、たっぷりと睡眠を取ることを意識してください。
もし感染した場合、または感染が疑われる場合には、周りの人にうつさないために、休養を取ることも大切です。
インフルエンザワクチンは、インフルエンザの発症と重症化を予防するのに効果的です。流行期が来る前にまずはワクチンを接種して準備し、流行期は生活習慣を整え、ウイルスと接触する機会を出来るだけ減らして過ごす工夫が重要です。
参考文献厚生労働省 インフルエンザワクチン(季節性)2024-25期の季節性インフルエンザワクチンの接種に関する日本ワクチン学会の見解
(みち89)