Text by 石井彰(編集部)
今世界で頂点を走っているコンペティションといえばイングランド・プレミアリーグ。グローバルなマーケティングに成功し、ヨーロッパのみならずアフリカやアジア、アメリカでも高い人気を誇っている。
様々な国からスターが集まるリーグであるが、その中で「1人だけしかプレーしていない国籍」は18個あるという。今回はそれから10カ国とその選手をご紹介する。
アブドゥコディル・フサノフ
国籍:ウズベキスタン
プレーしたクラブ:マンチェスター・シティ
久しぶりに生まれた「プレミアリーグ初の国籍」ウズベキスタン。RCランスからマンチェスター・シティに加入したアブドゥコディル・フサノフは、いきなり出場機会を獲得して話題になった。
ランスに支払われた移籍金は3360万ポンド(およそ64億円)だと伝えられており、アジア人としても中島翔哉を上回り歴史上2位の評価を受けての取引になった。
ヘンリフ・ムヒタリャン
国籍:アルメニア
プレーしたクラブ:マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル
ボルシア・ドルトムントからマンチェスター・ユナイテッドに加入したヘンリフ・ムヒタリャン。アルメニアの選手としては今も唯一となるプレミアリーガーだ。
その後アレクシス・サンチェスとのトレードでアーセナルに移籍したものの、そこでもあまり活躍することは出来ず、2019年にASローマへとローン移籍。それからはイタリアを主戦場に復調を見せている。
ハムザ・チョードリー
国籍:バングラデシュ
プレーしたクラブ:レスター・シティ
レスター・シティのアカデミーで育ったハムザ・チョードリー。アフロヘアーをトレードマークとしているミッドフィルダーだ。昨季はチャンピオンシップ(2部)でレギュラーを務めて昇格に大きく貢献した。
イングランドの生まれであるがグレナダとバングラデシュにルーツを持っており、今季初めて後者のパスポートを取得。FIFAからの承認も受け、代表入りを宣言した。
ヴィクター・ワニャマ
国籍:ケニア
プレーしたクラブ:サウサンプトン、トッテナム・ホットスパー
現在はMLSのCFモントリオールでプレーしているケニア出身の守備的MF。ユース時代から欧州に渡り、スウェーデンを経てベルギーでプロデビューしたというなかなかの変わり種でもある。
2013年にセルティックからサウサンプトンに加入し、プレミアリーグで活躍。それが認められて2016年にトッテナム・ホットスパーへと引き抜かれたが、怪我に苦しんだためレギュラーとしてプレーできたのは移籍1年目のみだった。
アリ・アル・ハブシ
国籍:オマーン
プレーしたクラブ:ボルトン・ワンダラーズ、ウィガン・アスレティック
アジア生まれのゴールキーパーとして初めてイングランド・プレミアリーグでレギュラーを掴んだアリ・アル・ハブシ。若くして母国を離れ、フィンランドを経て2005年にボルトン・ワンダラーズへと加入した。
2010-11シーズンに貸し出されたウィガン・アスレティックで定位置を掴み、数年間にわたって守護神を務めるという快挙を成し遂げた。
ニール・エザリッジ
国籍:フィリピン
プレーしたクラブ:カーディフ
フィリピン代表のニール・エザリッジは、アリ・アル・ハブシとは違ってイングランド生まれ。チェルシーとフラムの下部組織で育ち、2017年に移籍したカーディフ・シティ時代にプレミア昇格を果たした。
その後バーミンガム・シティでもプレーしたあと、昨年タイリーグの名門ブリーラム・ユナイテッドへと移籍。自身初のアジアでのプレーを実現させている。
ジュニオール・フィルポ
国籍:ドミニカ共和国
プレーしたクラブ:リーズ・ユナイテッド
現在田中碧のチームメイトであるジュニオール・フィルポ。2019年から2021年まではバルセロナでプレーしていたことでも知られている左サイドバックだ。
スペインの生まれでアンダーの代表で戦った経験もあるが、昨年ドミニカ共和国の誘いを受けて国籍の変更を決断。すぐに招集を受け、中心選手としてプレーしている。
ジョルディ・アマト
国籍:インドネシア
プレーしたクラブ:スウォンジー・シティ
現在インドネシア代表の中心選手となっているジョルディ・アマト。もともとはスペイン生まれで、各年代の代表チームでプレーした有望なディフェンダーであった。
したがって2013年から2018年まで所属したスウォンジー時代はスペイン国籍だったが、2022年に自身のルーツであるインドネシアへの鞍替えを決断した。
アリ・アル・ハンマディ
国籍:イラク
プレーしたクラブ:イプスウィッチ・タウン
イラクで生まれたアリ・アル・ハンマディは、1歳のときに戦争を逃れて家族とともにイギリスへと亡命。リヴァプールでその才能を磨き、トランメア・ローヴァーズとスウォンジー・シティのアカデミーで育った。
ウィコム・ワンダラーズやブロムリー、AFCウィンブルドンを経て2024年にイプスウィッチ・タウンへと加入。初のプレミアリーグを経験したあと、この冬にストーク・シティへと貸し出されている。
ゼッシュ・レーマン
国籍:パキスタン
プレーしたクラブ:フラム
イギリスで生まれたゼッシュ・レーマンであるが、フラムでプロデビューした数年後に両親の出身地であるパキスタンの国籍を選択し、アジアの舞台で戦うことを決めた。
2022年に現役引退後はポーツマスで指導者となっており、これも「イングランドのプロクラブのトップチームでコーチをする初のパキスタン人」という記録になっている。
なお他にも中央アフリカ共和国、キューバ、フェロー諸島、ジブラルタル、グアテマラ、マルタ、スリナム、タンザニアが1人しかプレミアリーグでプレーしていないのだそう。