前回、手指トラブルのケアとして神経からアプローチするマッサージを紹介しました。今回は1回1分でできる、簡単な手指の体操「指エクサ」について、「手の外科」の専門医・池口良輔先生に教わりました。
教えてくれたのは……池口良輔さん(いけぐち・りょうすけ)さん
京都大学医学部附属病院リハビリテーション科准教授。1993年、京都大学医学部卒業。医学博士。静岡県立総合病院整形外科などを経て、2014年から現職。日本手外科学会認定専門医。共著に『手指の痛み・しびれ・はれ・変形 自力でよくなる!名医が教える最新1分体操大全』(文響社刊)。
1回1分で改善&予防効果も!「指エクサ」
年齢とともに増える、指の痛みやしびれなどの手指トラブル。「年だから」「我慢できる程度だから」と放っておくと、重症化して家事や仕事などの日常の動作が困難になることもあると指摘するのは、手の外科の専門医で、京都大学医学部附属病院リハビリテーション科准教授の池口良輔さんです。
「手指の症状がある人はぜひ始めてほしい」と池口さんがすすめるのが、指を適度に曲げ伸ばしする「指エクサ」。1回1分から簡単にできる3つの体操を紹介します。痛みや腫れがある人には改善効果が、また症状がない人にも手指トラブルの予防効果が期待できます。
アイコンの見方
それぞれのエクササイズ横のマークは、50代以上の女性に多い手指トラブルの「ヘバーデン結節」「ブシャール結節」「手根管症候群」のうち、どの病気に特に効果的かを示しています。一つ一つの病気の特徴については第1回目の記事をご覧ください。
へ:ヘバーデン結節
ブ:ブシャール結節
手:手根管症候群
※手指の痛みや腫れが強く、熱を持っているときは体操を控えてください。また途中で強い痛みが出た場合は中止しましょう。
【指エクサ1】指先合わせ
指の腹を合わせるだけ。5本の指をくまなく動かし、関節の動きを改善します。ヘバーデン結節、ブシャール結節に特に効果的。
1.親指の腹を人さし指の腹につけて3秒間キープ。力を入れ過ぎないように。
2.親指の腹を中指の腹につけて3秒間キープ。薬指、小指も同様に。もう片方の手でも行う。
1と2を、5〜10回繰り返す。
※この指先合わせの動きが難しい場合は、手根管症候群の可能性があります。
「指先合わせ」は、指と指を合わせて3秒間キープするだけ。関節の動きや可動域の維持・改善に効果があり、ヘバーデン結節とブシャール結節に適しています。「手根管症候群で親指の付け根の筋肉が痩せている場合は、この指と指をくっつける動作が難しいもの。手根管症候群かどうかを見分ける一種のテストにもなります」と池口さん。
【指エクサ2】手のひら開き
指と指の間の“水かき”部分の筋力を鍛え、指の関節を安定させます。ヘバーデン結節、ブシャール結節に特に効果的。
1.すべての指を閉じた状態で、手のひらをテーブルなどの平らなところにつける。
2.指と指の間をできるだけ広げて、6秒間キープ。もう片方の手でも同様に行う。
1と2を、5〜10回繰り返す。
「手のひら開き」は、閉じた手のひらをパッと大きく広げて、6秒間キープ。指と指の間の筋力を鍛えることで、関節を安定させます。
【指エクサ3】グリップエクサ
筋肉と骨をつなぐ“腱”を積極的に動かして、手指の可動域を広げます。ヘバーデン結節、ブシャール結節、手根管症候群に特に効果的。
1.握りこぶしをつくって4秒間キープ。力は入れ過ぎずに。
2.人さし指から小指までの4本の指を付け根から垂直に曲げて、前方にまっすぐ伸ばす。この状態で4秒間キープ。
3.人さし指から小指までの第1関節と第2関節を内側に曲げて、4秒間キープ。親指は伸ばしたままで。もう片方の手でも同様に行う。
1~3を、5〜10回繰り返す。
「グリップエクサ」は、握る、伸ばす、曲げるという3つの動作を4秒間ずつ行います。手指を動かす腱を刺激し、可動域の維持・拡大に効果的。ヘバーデン結節、ブシャール結節、手根管症候群すべてに効果があります。
「今回紹介した体操を朝昼夜に5~10回行いましょう。今症状がない人にとっても手指トラブルの予防になります」(池口さん)
マッサージやエクササイズと並行して、日々の暮らしの中で手指や手首への負担を減らすことも大切です。次回は手指への負担を減らす生活習慣を紹介します。
※効果には個人差があります。試してみて異変を感じる場合はおやめください。
取材・文=佐田節子 イラストレーション=コウゼンアヤコ 構成=大矢詠美(ハルメク編集部)
※この記事は雑誌「ハルメク」2021年12月号を再編集し、掲載しています。