忙しい毎日に追われて、何となくで食べてしまいがちな朝ご飯。朝からのんびりコーヒーや紅茶を淹れて、ゆっくりと食べるブレックファストは誰しもが憧れるはず。今回はそんな朝ご飯にピッタリな、フレンチトーストに旬のりんごのソテーと、ふわっとした食感が心地よい、メープル&カルダモンのホイップバターを添えた夢のようなモーニングメニューを、神奈川県葉山で植物と身近に暮らしながらアンティークバイヤーとして活動するルーシー恩田さんに教えていただきます。
朝ごはんをもっと楽しく!
1月の新年ムードもとうに過ぎ去り、朝から晩までごちそうを食べていた、あの数日間が蜃気楼のよう。すっかり日常の生活に戻り、時間に余裕のない朝には、何も食べずに出かけることもしばしば。よーく考えてみたら、朝ごはんを食べないと人生の食事を楽しむ時間の1/3を逃していることになっちゃう! ってなわけで、2025年は「朝ごはんをもっと楽しく」をモットーにしてみようかと、ふと思いつきました。
昔から寝起きのよい私です。学生の頃は母がキッチンから叫ぶ「ご飯よー! 起きなさーい!」の声で、ガバっ! と目覚め、瞬間的にベッドから立ち上がり、ご飯が待つテーブルへと階段を駆け下りていたのであります。美味しい朝ごはんが食べたいから、起きる。シンプルなことです。「一日の計は朝にあり」だもの!
ハーブやスパイスを使ったお料理で、嗅覚からウェイクアップ。朝、キッチンからいい香りがするって最高に幸せ!!
1人の朝ご飯は、1日の始まりのゆったりとした時間(嵐の前の静けさ)を楽しんだり、家族やパートナーとの朝ご飯では、忙しい合間に顔を合わせる大切な時間となります。
末永く朝ご飯を楽しむにはやっぱり健康第一! 今年もハーブとスパイスを取り入れた美味しいお食事の話を、みなさんにおすそ分けしていきたいと思います。今回はおなじみのスパイス「シナモンとカルダモン」を使います。
七変化のカメレオンスパイス シナモンとカルダモン
「シナモンとカルダモン」いままでに何度もご紹介してきたスパイスたちです。香りの個性は強めですが、どちらも汎用性が高く、さまざまな国の料理に使われています。インドではカレーやチャイに使われるスパイスの代表格。欧米ではホットワイン、コーラ、クッキーなどのお菓子作りにも使われていて、所変われば雰囲気が変わる七変化の「カメレオンスパイス」なのです。どちらも身体を温め、お腹の調子を整えてくれる効果が期待できるので、この季節にピッタリ。
パワフルでポジティブなカルダモン
カルダモンにはシネオールという成分が含まれるため、ユーカリやレモンのような爽やかな清涼感があります。温かみがあり刺激的で、スモーキー。多面的で複雑な色気を纏うスパイスです。
カルダモンの香りは、とってもパワフルでポジティブ! 「思考能力」が鈍くなってしまっているときには「精神集中」の手助けとなり、目の前がぱーっ! と明るく開かれるでしょう。不安や緊張で「心のバランス」が崩れているときには落ち着きを与え、しっかりと地に足をつけるバランス感覚を取り戻すことができる香りです。チャンスや豊かさを取り戻し「人生を気楽に楽しむ」、そう! カルダモンは「生きる力」を与えてくれるスパイスなのです。
消化器系のトラブルにはカルダモンの出番! 腸内のガスをすっきりさせ、消化不良や吐き気にも効果的! 血流促進作用と身体を温めてくれる作用があるので、むくみの改善も期待ができます。
固まった心をほぐしてくれるシナモン
日本でもおなじみのスパイス「シナモン」。心地のよいエキゾチックな甘さで、温かみがありウッディー。繊細で強烈な香りが特徴です。「世界最古のスパイス」とも呼ばれ、世界中を虜にしています。心がほぐれるような心地よい甘さは、精神面でのリラックス効果があり、疲れた心を温かく包んでくれるような香りです。
シナモンは身体を温め風邪の予防に役立つだけではなく、殺菌作用や解熱作用もあるので、風邪の初期症状に効果があるとされています。漢方では桂皮と呼ばれ、葛根湯に配合されているのも納得です。
厳密に本物のシナモンといえるのは、スリランカ原産の「セイロンシナモン」といわれるもの。繊細なデザートにはセイロンシナモンが合います。ピラフやチョコレートの香り付け、果物のコンポートには香りと風味が強いカシアシナモンが使われることが多いようです。セイロンシナモンにはオイゲノールという成分が含まれるので、クローブのような香りがありますが、カシアシナモンにはありません。ぜひ香りの違いも楽しんでみてください。さてさて、今回のフレンチトーストにはカシアシナモンのパウダーを使います。
STEP1「シンプルなシナモンフレンチトースト」
さぁて! 最高の朝ご飯は3ステップで作っていきます。どれも簡単! まずはフレンチトーストを作りましょう。薄めに切った食パンはすぐに卵液が染み込むので、時間のない朝にもオススメです。
材料 ※2人分
- 食パン 1cmほどに切ったもの4枚
- 卵 2個
- 牛乳 200ml
- シナモンパウダー 小さじ1
- ナツメグパウダー 小さじ1/2
- バニラエッセンス 数滴
- お好みでベーコンを添える
作り方
① バットに卵、牛乳、シナモンパウダー、ナツメグパウダーとバニラエッセンスを加えてよく混ぜる。
② 食パンを①の液に15分ほど浸してから、フライパンに少量のバター(分量外)を溶かして中火で両面焼きあげる。
これだけでもいい香り。もう食べちゃいたい気持ちを抑えてSTEP2へレッツゴー。
STEP2「季節のリンゴで作るシンプルなソテー」
いつもの私なら、リンゴのソテーにもシナモンやクローブなどのスパイスを使いがちですが、今回はシンプルに。だってリンゴの美味しい季節。お水も加えずに少量の砂糖でリンゴの美味しさを引き出しましょう。
異なる種類のリンゴを使うことで、香りがよくなり、煮た時のテクスチャーの違いも楽しめるので、2種のリンゴを使います。今回は酸味があり溶けやすい「ジョナゴールド」と、甘みが強く煮崩れしにくい「王林」を使います。お好みでいろいろと試してみてください。このシンプルなリンゴのソテーは何とも滋味深い味。ジャムよりも食べ応えがあり、ヨーグルトやアイスクリームに添えても美味なのです。じつはお肉との相性も抜群! 今回はベーコンと合わせていただきましょう。
材料 ※作りやすい分量
- リンゴ 2個 (今回はジョナゴールドと王林)
- 砂糖 大さじ2
- バター 大さじ2
- レモン汁 大さじ1
作り方
① リンゴを薄めのスライス(16等分ほど)に切る。
② バターをフライパンに温め、リンゴと半量の砂糖を加えて混ぜ、蓋をして5分ほど中火で蒸し焼きにする。
③ 蓋を取って水分を飛ばし、リンゴが柔らかくなってきたら、残りの半量の砂糖を加えて混ぜ、焼き目を付ける。
④ 火を止めてリンゴにレモン汁をかけてから、さっくり混ぜて出来上がり!
どうぞ! 堂々とつまみ食いをしてください。このリンゴソテーは温かいのも美味しいし、冷やして食べるのも美味。つまみ食いが止まらなくなる前に、STEP3へ行きましょう!
STEP3「メープルカルダモンのホイップバター」
さて、今回の主役はこちら。メープルシロップのコクと、柑橘の爽やかなカルダモンの香りがする「ふわふわのバター」。書いているだけでもヨダレが出ちゃう組み合わせ。アメリカでは、パンケーキやコーンブレッドのお供としてポピュラーです。
このバター、とんでもなく美味しいのです。そしてとんでもなく簡単。よく考えちゃうとカロリーもとんでもないかもしれませんが、なんといっても朝ご飯だもの! 1日の活力に美味しいカロリー摂取をしちゃいましょう。ここだけの話、夢の国みたいな味がします。
材料 ※作りやすい分量
- バター 150g
- メープルシロップ 100g
- カルダモン 小さじ1 1/2
作り方
① 常温にもどしておいたバターを、ハンドミキサーなどを使って、ふわっとするまで混ぜる。
② メープルシロップとカルダモンパウダーを①に加えて、引き続きハンドミキサーなどで全体に馴染むように混ぜて完成。
お気に入りのお皿にフレンチトーストをのせ、カリッカリに焼いたベーコンを添えて、リンゴのソテーをドーンっとのせて、ホイップバターをワイルドに落とせば、最高の朝ごはんの出来上がり。お好みでメープルシロップもかけちゃって♡
新しい一年がはじまり、背筋が伸びた気分ですが、じつは毎日毎日が新しい日々のはじまりです。今朝も起きられたことに感謝して、とびきり美味しい朝ご飯を食べましょう。
気分がイマイチな朝だって、料理を作ってみてください。簡単なものでも大丈夫。美味しいものを作るのは、自分自身を応援すること。明日の朝ご飯は楽しみで、今夜は眠れないかもね♡
Credit
写真&文 / ルーシー恩田
ルーシー・おんだ/アンティークバイヤー/IFA認定アロマセラピスト/ITEC認定リフレクソロジスト。20代に訪れたタイ・チャン島でのファスティング(断食)経験から、心・体・生活環境などを全体的にとらえることにより、本来の自然治癒力を高め病気に負けない体づくりを学び啓発される。会社員としてデザインの仕事をしながら英国IFAアロマセラピストの資格を取得。退職後は更なる経験と知識の向上のためイギリスへ渡り、英国ITEC認定リフレクソロジストの資格を取得。現在は家業のイギリスアンティークの買付と販売をしながら、アロマセラピスト的な視点で自家栽培の野菜とハーブを使ったお料理教室やワークショップを開催している。