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冬のレジャーこそ災害に備えよう!

  • 2025.1.27

スキー、スノーボードなどの冬のレジャーでは、雪害(雪による災害)に注意が必要です。雪山のレジャーで遭遇する恐れのある災害の種類と、対策をまとめました。

雪山の災害

雪山のレジャーには、整備されたスキー場内のコースを滑るスキーやスノーボードのほかにも、森の中を半日~1日かけて歩くクロスカントリースキーや、スノートレッキング、スキー場のように整備されていない自然の山を滑るバックカントリースキーなどがあります。

いずれも銀世界を楽しむことのできる冬ならではのレジャーですが、雪山では雪崩や吹雪などの災害に遭遇する恐れもゼロではありません。レジャーの内容に応じた準備を整えて、立ち入りが禁止されたエリアには入らないなどのルールを守って楽しむことが重要です。

雪崩

雪崩とは、斜面に積もった雪が滑り落ちる現象です。すでに雪が降り積もっているところに、さらにたくさんの雪が降ると、新しく積もった雪の一部が滑り落ちることがあり、これを「表層雪崩」と言います。

表層雪崩は、降雪量の多い1~2月に多く発生しています。新雪の上を動物が歩いたことなどがきっかけとなって突然起こります。雪が滑り落ちる速度は時速100~200㎞ととても速いため、雪崩に気がついてから避難するのは難しいといえます。

気温が上昇し、積もった雪が溶け出す春先に多く発生するのが「全層雪崩」です。速度は時速40~80㎞と、表層雪崩ほどではないものの自動車並みの速さがあり、地表近くの凍った重たい雪も一緒に滑り落ちるため、雪の重さは1㎡で0.5トンにもなります。「クラック」といわれる雪のひび割れや、雪の表面に寄ったしわなどが、全層雪崩の前兆といわれています。

雪崩が発生しやすいのは傾斜30度以上の低木林、または樹木がまばらで笹や草に覆われた斜面です。傾斜30度は、スキー場では上級者コースに相当する急斜面です。スキー場では、「新雪の上を滑りたい」という理由で滑走禁止エリアに入って雪崩にあったり、遭難したりする事故が発生しています。上級者であっても、禁止されているエリアには立ち入らないようにしてください。

吹雪

吹雪とは、雪が風によって空中を舞う現象です。視界が悪くなるため、雪国ではしばしば交通障害の原因となっています。

風の強さは、「風に向かって歩きにくい」「傘をさすことができない」などの影響が出始める平均風速10m/s~15m/sの「やや強い風」以上です。

「地吹雪」といって雪が降っていなくても、地面に積もった雪が風によって舞い上がり、吹雪になることがあります。

山の天気は変わりやすく、晴れているときにはスキーウェアを暑く感じることもありますが、悪天候になると一転して厳しい寒さに見舞われます。吹雪のなかでのスキー、スノーボードなどは方向を見失ったり、道を間違えたりする危険も高いので、中止したほうがよいでしょう。

遭難

遭難とは、命の危険に陥るような災難にあうことをいいます。雪山では雪崩や吹雪のような自然災害だけでなく、道に迷ったり、滑落したりして、安全な場所に戻れなくなることも少なくありません。

一人が転倒や滑落でけがをしても、別の人が救助を呼ぶことができるよう、雪山ではできるだけ単独行動を避けましょう。スキー場のなかで同行者と別行動をする場合も、どのコースに行くのかなど、行動の予定をお互いに知らせあっておくと、時間がたっても帰ってこないなどの異変に気づきやすくなります。

スキー場のコースから外れて雪山でバックカントリースキー、スノーボード、スノートレッキングなどを行う際は、低い山であっても登山届の提出が必要な場合があります。予定を過ぎても帰宅しない場合に速やかに捜索願を出せるよう、家族にも山に行くことを知らせておきましょう。GPSで位置情報を共有できる、登山者用のアプリもあります。

雪山では、実力に応じて無理のない計画をたてて、ガイドなどの山に詳しい人とともに行動することも大切です。

雪道における防災

雪は、自動車のスリップや立ち往生などの交通障害も引き起こします。冬のレジャーに車で出かけるときは、次のような対策で雪道でのトラブルを防ぎましょう。

スリップ

気温が0℃以下まで冷え込むと、雨や雪が降ったあとの路面が凍結し、自動車のハンドルやブレーキがきかなくなるスリップが起こりやすくなります。スリップする理由は、タイヤと路面との間に薄い水の膜ができる「ハイドロプレーニング」という現象で、冬用のスタッドレスタイヤを装着していても起こります。

路面が凍結しているときは、速度を抑えてゆっくりと走行し、滑ったと感じても急ハンドル、急ブレーキは避けましょう。

立ち往生

ぬかるんだ道などで車が動かなくなることを「スタック」といいます。過去の大雪では、スリップしたり新雪にはまったりしてスタックした自動車を先頭に、数百台~千台もの車が道路上で進むことも戻ることもできなくなる立ち往生が発生しています。

雪道でスタックし、アクセルを踏んでもタイヤが空回りするときは、タイヤをまっすぐにして、ゆっくりと小刻みに前後に動かし、周囲の雪を踏み固めることで動き出せる場合があります。

タイヤの周りを雪かきしたり雪を足で踏み固めたり、車のフロアマットをタイヤの下に敷くなどの方法で抜け出せる場合もあります。

雪道で車が動かなくなったときは、JAF(日本自動車連盟)や加入中の自動車保険に付帯しているロードサービスに救援を求めましょう。衝突事故などが発生した場合は、警察や消防に通報してください。

立ち往生が発生しているときは、後続の車が巻き込まれるのを防ぐためにも、道路緊急ダイヤル(#9910)に通報しましょう。

雪がどんどん降り積もっている最中に車が立ち往生した場合は、自動車のマフラーが雪で埋もれないように、定期的に雪かきを行う必要があります。マフラーが雪で覆われてしまうと、一酸化炭素中毒で命を落とす危険が高くなります。車のエンジンは切り、コートや毛布などで寒さをしのぐようにしましょう。

冬のレジャーに持って行きたい防災グッズ

スキーやスノーボードなど、冬のレジャーに行く際は、次のような防災グッズを持って行きましょう。

食べもの、飲みもの

人はエネルギーを摂取することで、熱を生産しています。低体温症を防ぐためにも、チョコレートや飴などを携帯し、こまめにエネルギーを補給しましょう。おにぎりのような水分の多いものは凍りやすいので、注意が必要です。

雪山でも、スキーなどのスポーツをする際には脱水を防ぐために、水分補給を心がけてください。定期的にレストハウスで休憩をとるか、温かい飲みものを保温機能のある水筒に入れて持ち運びましょう。

携帯電話、スマートフォン

携帯電話は、寒さが厳しいところではバッテリーの消費が激しくなります。遭難した際に救援を呼ぶ手立てとなるので、防寒着の内側に入れて冷えるのを防ぎ、必要なとき以外は電源を切るなどして、バッテリーを温存しましょう。

カイロ

山では天気が急変することがあります。カイロはスキーウェアのポケットに入るので、気温の低下に備えて用意しておきましょう。手足などの末端が冷えやすい人には、靴下に貼るタイプのカイロもあります。

サバイバルシート

エマージェンシーブランケットとも呼ばれる薄手のアルミシートで、保温性が高く、毛布のようにかさばりません。バックカントリースキーやスノートレッキングなどで雪山に入る際は、持ち物に入れておくとよいでしょう。

雪崩対策用品

スキー場外の雪山で、新雪のなかに入るのであれば、雪崩ビーコン、スノーシャベル、ゾンデ棒(プローブ)を持って行きましょう。

雪崩ビーコンは雪崩に埋もれている場所を知らせる小型の機械です。ゾンデ棒は雪にさして埋もれている人を探すために、シャベルは掘り出すために使います。

自動車にも備蓄を

自動車には、雪道で立ち往生したときに寒さをしのぐためのブランケット、救援を待つ間の水と食料、携帯トイレ、車の周りを雪かきするためのスコップ、大雪のときに使うタイヤチェーンなどを積んでおきましょう。大雪により道路が「チェーン規制」になった場合、スタッドレスタイヤでもチェーンを装着していないと通行ができません。

冬は低体温症にも注意

低体温症とは体の内側の、脳や臓器などがある部分の体温(深部体温)が35℃以下になることを言います。重症化すると歩いたり話したりすることも難しくなり、命にかかわる恐れもあります。

冬のレジャーは、重ね着と小物類で寒さ対策をしっかりとして楽しみましょう。

雪山での服装

冬のレジャーでは汗をかくこともありますが、汗で濡れたままだと体が冷える原因になります。肌着は汗をよく吸収し、乾きやすい素材のものを選びましょう。肌着の上には、フリースなどの保温性の高い衣類を重ねて、温かい空気の層をつくります。その上に雨風を通さない防水のスキーウェアや、冬用のアウトドアジャケットを着用します。

ボトムスも同様に、天候やレジャーの内容に応じて、スキーウェアの下にタイツやズボンを重ねて調節しましょう。

スキー場のレストハウスなどは暖房が効いているので、スキーウェアなどのジャケットだけでなく、その下に着ているフリースなども脱ぐことがあります。肌着1枚になることに抵抗があれば、肌着の上にもう1枚Tシャツなどを重ねておきましょう。

小物も重要

スキーウェアから出ている頭部や手足の指先などの末端は、凍傷になりやすい部分です。小物類でしっかり保護しましょう。

手袋は、薄手のインナーの上に防水の手袋を重ねるタイプが、内側まで濡れにくく雪山に適しています。細かな作業をするときなどに外すことも多いので、手袋のストラップをジャケットの袖口のベルトにかけるなどして、落とさないようにしましょう。

靴下は厚手の暖かいものがよいですが、スキー靴などのなかで足が締めつけられると、血流が悪くなってしまうことがあります。靴のサイズ選びに注意しましょう。

また、濡れた手袋や靴下をそのままにしていると、凍傷になる恐れがあります。天候や行程によっては、替えを用意しておいたほうがよいでしょう。

帽子とゴーグルは、頭と顔を寒さから守ります。ネックウォーマーなどで首まわりを暖めるのも、寒さ対策として有効です。

晴れた日には太陽が雪に反射し、雪目(雪眼炎)といって強い紫外線で目が炎症を起こすことがあります。目を守るためにもゴーグルやサングラスを着用しましょう。

低体温症のリスクは、年齢や健康状態などによっても異なります。子どもや高齢者、糖尿病などの持病がある人は低体温症になりやすいので、スキー場内でのスキー、スノーボード、そり遊びなどのレジャーでも、こまめに暖かい場所で休憩をとるようにしてください。

まとめ

冬のレジャーでは、雪崩や吹雪などの災害への警戒心を持つとともに、低体温症にも十分な対策が必要です。寒さからしっかりと身を守る服装で、こまめに休憩をとりながら楽しみましょう。天候によっては無理をせず、中止する判断も大切です。

<執筆者プロフィル>
山見美穂子
フリーライター
岩手県釜石市生まれ。幼いころ両親から聞いた「津波てんでんこ」の場所は、高台の神社でした。

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