イ・ジュンギは今年43歳になる。体力的には20代のときと違うはずだが、それをまったく感じさせない。日頃の鍛錬の成果が如実に出ているのである。
そして、彼ほど撮影時に全精力を使い果たす俳優であれば、過去の作品で様々な思い出が強烈に残っていることだろう。その中で、「いま考えても大変だった」と振り返るドラマは果たして何であろうか。イ・ジュンギが真っ先に取り上げたのが、『アラン使道伝―アランサトデン―』の撮影時のことだった。
このドラマでイ・ジュンギは主役のウノを演じて、ヒロインのアランに扮したシン・ミナと共演した。彼にとって本当に意義深い作品であったが、素敵なメモリーだけではない。むしろ、イ・ジュンギがいま思い出しても背筋が凍るのは、崖から落ちるシーンを撮ったときのことだった。
「本当に危険で難しいシーンでした。命綱1つを使って、スタントマンを使わず自分でこの演技をやっていました。ところが、ワイヤーがいきなり5メートルも落ちてしまったのです。予想外のことでしたが、それでも必死に撮りました」
そんな大ピンチのときに、イ・ジュンギには独特の癖があった。
「実は、僕はもともと高所恐怖症なのです。そういう性格なので、すごく怖かったです。でも、すべてを忘れて、最後まできちんと演技していました」
イ・ジュンギの真骨頂
まさか、イ・ジュンギが高所恐怖症だったとは……。それでも、ワイヤーのアクションに取り組むのだから、彼は本当に勇気がある。
彼が俳優を続ける原動力は「チャレンジ精神」だという。
「俳優という仕事をやっている以上、作品ごとに自分に与えられたキャラクターにチャレンジしていかなければなりません。僕にとっては新しい試みに取り組む必要があり、それこそがすごく刺激的だと考えています。そして、こういう刺激をこれからもたくさん受けていきたい。僕には強い情熱がありますので、その姿をこれからも多くの方々に見ていただければ幸いです」
この言葉の中にイ・ジュンギの真骨頂がよく表れている。
文=大地 康