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現地報道から捉えるドナルド・トランプの就任式。数々の大統領令が国内外に与える影響とは

  • 2025.1.22
Donald Trump Holds Victory Rally In Washington DC On Eve Of Inauguration

20日(現地時間)に行われた米国大統領就任式で、「アメリカの黄金時代が今始まる」と宣言したドナルド・トランプ。これまでの就任式とは一線を画し、メタのマーク・ザッカーバーグ、テスラとスペースXのイーロン・マスクなど、テックビリオネアたちが特別な席に配置され、その存在感を示した。トランプ大統領は就任直後に、早くもバイデン前政権の政策を覆す大統領令に数々署名。国内外の政策に対して、強靭な対応を貫くことをアピールしている。

また就任演説中に「性別は男と女の2つしかない」と発言。トランスジェンダーノンバイナリーの人々に対する否定的な見解として批判を受け、国内外で議論を引き起こした。現地の主要メディアはその演説と行動を詳細に報じ、それぞれ異なる視点から分析を行なった。

「経済的支配や恐怖、場合によっては軍事力で力を行使」──ニューヨーク・タイムズ

20日(現地時間)、トランプ大統領就任式での様子
ABC NEWS COVERAGE OF THE 2025 PRESIDENTIAL INAUGURATION20日(現地時間)、トランプ大統領就任式での様子

まずは「ニューヨーク・タイムズ」紙を見てみよう。「決意を固めたトランプ氏、自国でも海外でも阻止されることはないと誓う」と題した記事では、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」の理念と、外交、内政政策の急進的な方向性に焦点を当て、彼が掲げる反グローバリズム的な姿勢を強調した。「トランプ大統領は『何者も我々の道を阻むことはできない』と誓い、2期目で国内をより保守的に、国外をより帝国主義的に変える意志を表明した。29分の演説では理想論を避け、攻撃的な口調でアメリカの強硬姿勢を主張。アメリカの国益を最優先し、国際社会において、米国が以前のように『ルールに基づく秩序』を守るのではなく、経済的支配や恐怖、場合によっては軍事力で力を行使することを述べた」と報じた。

具体的には、アメリカの領土を守るために、メキシコの麻薬カルテルを「外国テロ組織」として指定し、軍事力を行使して、排除する意向を表明。国内では、南部の国境を閉鎖し、出生地主義に反対する姿勢をアピールした。さらに、環境政策に関しては、パリ協定、WHOからの脱退。また、1月6日の暴動に関与した者たちに恩赦を与えることを決定した。これらの点を踏まえて、トランプの「アメリカ・ファースト」の政策は、「いわゆる孤立主義的な側面を持ちながらも、非常に攻撃的である」ことに、警笛を鳴らした。

「団結を約束しつつ、トランスジェンダーのアメリカ人を攻撃」──USAトゥデイ

18日(現地時間)、トランプ大統領就任に反対するデモにて。米ワシントンD.C.のリンカーン記念館前で掲げられたトランスジェンダーフラッグ。
People's March In Washington D.C. Ahead Of Donald Trump's Inauguration18日(現地時間)、トランプ大統領就任に反対するデモにて。米ワシントンD.C.のリンカーン記念館前で掲げられたトランスジェンダーフラッグ。

「USAトゥデイ」紙のオピニオン記事では、「トランプ、就任演説で団結を誓いつつ、即座に同胞のアメリカ人を攻撃」というタイトルで、痛烈にトランプ大統領を批判した。「ポルノ女優への口止め料を隠すために、業務記録を虚偽記載した罪で34件の重罪に問われた長年の詐欺師である彼」という表現を使い、世論調査のウェブサイト「538」が発表した支持率、「46%が支持する一方で、48%が彼を支持していない。比較として、オバマ元大統領は67%、バイデン大統領は57%の支持率で就任した」について言及。就任直後の大統領としては、驚くほど低い数字での出発だと述べている。

また就任演説のなかで、「性別は男と女の2つしかない」と発言したことについて、「多くの国民を非人間化すると発表した。団結を約束しつつ、トランプ氏はトランスジェンダーのアメリカ人を攻撃した」と弾糾した。

「公約は一般的な支持を得られる内容として注目」──ナショナル・レビュー

20日(現地時間)、トランプ大統領の就任式を見るためアリーナへの入場を待つ支持者たち。
US President Donald Trump's Inauguration Day20日(現地時間)、トランプ大統領の就任式を見るためアリーナへの入場を待つ支持者たち。

一方で「ナショナル・レビュー」紙は、「ジョー・バイデン氏が極めて低調な評価のなかで退任したこともあり、多くの人々が『新しい何か』に期待を寄せている」と述べ、国家としてのアメリカの復興を目指す彼のビジョンを評価した。彼の具体的な政策である、国境の封鎖、犯罪者の国外退去、“2つの性別のみ”を政策化する方針や、人種や性別ではなく実力で評価するという姿勢に対し、「これらの公約は一般的な支持を得られる内容として注目されている」と報じている。

トランプ大統領が明らかにした、外国製品に課される関税で経済効果を狙う「外部歳入庁」の新設や、「パナマ運河を取り戻す」と述べた発言に関しては、慎重な検討が求められるとしながらも、「『この瞬間から、アメリカの衰退は終わりだ』という一節は、スピーチのなかで最も記憶に残る件だった。この言葉が真実となることを、すべてのアメリカ人が願うべきだろう」と、締め括っている。

国内外で力強く上がる、市民たちの抵抗と生存の声

18日(現地時間)、トランプ大統領の就任式に先立ちワシントンD.C.で抵抗のウィメンズ・マーチを行う市民たち。
Women's March held in Washington D.C. ahead of Trump's Inauguration18日(現地時間)、トランプ大統領の就任式に先立ちワシントンD.C.で抵抗のウィメンズ・マーチを行う市民たち。

トランプ大統領の就任式と同時に、ワシントンD.C.を含む世界各地で多くの抗議デモが行われた。女性やトランスジェンダー、移民などを含むマイノリティの権利、気候変動対策など、多くのテーマで市民が声を上げ、特にリンカーン記念堂前の数千人規模の集会では、民主主義と人権の擁護を訴える力強いメッセージが響き渡った。

深まる分断への懸念を超え、多様な人々の権利が保障される未来や、次の世代が生きることができる地球環境を求める市井の人々の力強い声が今後の行方を照らし出している。

18日(現地時間)、ワシントンD.C.のリンカーン記念堂で行われたピープルズ・マーチの集会に集まる人々。
People's March In Washington D.C. Ahead Of Donald Trump's Inauguration18日(現地時間)、ワシントンD.C.のリンカーン記念堂で行われたピープルズ・マーチの集会に集まる人々。
20日(現地時間)、トランプ大統領就任に反対するデモがシカゴのダウンタウンを行進。「ICEはもういらない」「民主主義を守れ」と書かれた看板を掲げる。※ICE(Immigration and Customs Enforcement)=米移民・関税執行局
Anti-Trump protest in Chicago20日(現地時間)、トランプ大統領就任に反対するデモがシカゴのダウンタウンを行進。「ICEはもういらない」「民主主義を守れ」と書かれた看板を掲げる。※ICE(Immigration and Customs Enforcement)=米移民・関税執行局
18日(現地時間)、トランプ大統領の2期目就任式を前に英ロンドンで行われたウィメンズ・マーチ。ウィメンズ・マーチ運動は、トランプ最初の就任式後の2017年にワシントンDCで開始された。女性の権利と平等のために立ち上がっている。
Women's Marches Held Across UK18日(現地時間)、トランプ大統領の2期目就任式を前に英ロンドンで行われたウィメンズ・マーチ。ウィメンズ・マーチ運動は、トランプ最初の就任式後の2017年にワシントンDCで開始された。女性の権利と平等のために立ち上がっている。

Text: Azumi Hasegawa Editor: Nanami Kobayashi

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