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【松坂桃李さんインタビュー】時代劇を、“今の物語”として受け取って

  • 2025.1.23

松坂桃李さんが主演する映画『雪の花 ―ともに在りて―』(1月24日公開)は、江戸時代に疫病から人々を救うため奔走した、実在の医師の姿を描いた時代劇。フィルム撮影ならではの緊張感が漂う現場で、松坂さんが受け取ったことは……?

“自分が参加する意義”を考えるようになりました

多くの話題作で多彩な役柄を演じ、世代を代表する俳優となった松坂桃李さん。30代半ばの今、以前と比べて変化したことのひとつが“作品に参加する意義”について考えるようになったこと。

「中身は20代の頃とあまり変わっていない気がしますが(笑)。でも、『今だからこそ、この作品を届ける意義がある』と思えるものに、積極的に参加したいと思うようになりました。」

そうした意志のもとに出演を決めたのが、1月24日公開の映画『雪の花 ―ともに在りて―』。松坂さんは、江戸時代末期を舞台に、死に至る病として恐れられていた疫病から人々の命を救おうと奔走した実在の医師・笠原良策を演じています。

「未知のものに対する恐怖心は、今も昔も変わらない。コロナ禍を経験した今だからこそ、そのことをより感じるようになったし、この作品をやる意義があると強く思えました。良策さんのように未曾有の疫病に立ち向かった人がいたからこそ、未来ある人々の命が救われて、今にも繋がっている。舞台は江戸時代ですが、現在と地続きで繋がっている話だと捉えて演じました」

監督を務めるのは黒澤明監督に師事し、黒澤氏の遺作シナリオ『雨あがる』で劇場映画デビューを果たした小泉堯史氏。全編フィルム撮影とあって、現場は経験したことのない緊張感が漂っていたと振り返ります。

「小泉監督をはじめ、スタッフさんは黒澤組を経験した方々ばかり。緊張感はありましたが、当時の俳優さんたちもこの空気のなかでやっていたのかな…と考えると、同時に高揚感や興奮もあって。監督もやはり黒澤イズムを受け継いでいるのか、天気の具合や雲の形、日の入り方まで、こだわって撮影していました。自然とともに映画を撮影するというのも、初めての感覚。小泉組では、寄りのカットのときほどカメラの存在感がなくなるのも印象的でしたね。遠くから望遠レンズで撮っているので、演じる側はカメラを気にせず、自然にお芝居ができるのがありがたかったです」

「本番までの過程がどれだけ大事か」を再認識できたのも、本作を通じて得られたもののひとつ。

「監督からは、『とにかく何度も本を読んでほしい』と言われていました。読めば読むほど自分の解釈が変わってくるし、1日置いてから読むとまた違って見えてくる。そういう繰り返しによって、少しずつ役の肉づけができるのだと教えていただきました」

さらに監督から、「本番では素直に演じてくれれば、それでいい」という言葉も。

「入念に本読みやリハーサルを重ねた上で、本番では相手のセリフを素直に聞き、目に映るものを素直に受け止め、そこから出てくる感情を素直に発信する。『素直に演じる』という言葉の意味が、僕なりに少しだけわかったような気がします」

憧れの役所広司さんから学んだことは……

撮影が行われたのは、おもに福井と京都。美しいだけでなく、ときに自然の厳しさも体感できるロケーションに、演じる上でも助けられたそう

「この作品では自然の力というものも、とても強く作用しました。そのひとつが、良策が種痘の苗を持ち帰るため、雪山を越えるシーンです。この過酷な吹雪を当時の人たちも経験してきたのかと思うと、本当に命がけだったんだと思えて。良策の強い意思や責任感を実感することができました」

良策の師となる蘭方医、日野鼎哉を演じるのは、映画『孤狼の血』やドラマ「VIVANT」でも共演している役所広司さん。

「役所さんは、僕にとっては憧れの存在。どんな役でもまったく違和感がなく、自然に現場に入ってこられるんです。今回も役所さんが登場した瞬間に、『赤ひげ先生かな?』と(笑)。ひと目で、『この人から学ぶべきものがたくさんある』と感じさせてくれる役所さんは、あらためてすごい方だなと思いましたね。鼎哉先生が良策さんへかけてくれるありがたい言葉も、役所さんから僕への言葉のように受け取っていました」

カテゴリーとしては時代劇となる本作ですが、「別次元の話として切り離してしまうのはもったいない」と松坂さん。

「先日も『SHOGUN 将軍』で日本の時代劇というものが世界から注目を浴びましたが、それを機に、歴史の教科書を読むような感覚ではなく、今の物語として見てもらえるようになるといいですね。そうすることで見る映画の幅が広がるし、時代劇作品がもっと作られるようになると思うので。今回、良策の自宅のシーンのために、黒澤監督の『赤ひげ』で使われていた薬研を借りてきてくださって。美術や衣装にしても、こうして受け継いできたものを絶やしてはいけないと切に思います」

1月からはドラマ「御上先生」がスタートするなど、2025年も話題作への出演が続く松坂さん。多忙な中でも自分のための時間を作ることが今年の目標だそう。

「子どもが生まれてからは、日常に追われてほとんど自分の時間がないので(笑)、もう少し生活が落ちついてきたら、時間を見つけて本を読んだり、映画を観たり……。仕事につながるようなインプットをしていきたいですね。あとは、仕事の合間にのんびりリフレッシュする時間を作りたい。僕の場合、自然のなかでゆったり過ごすのが、いちばん疲れが取れるんです」

PROFILE

松坂桃李(まつざか とおり)
1988年生まれ、神奈川県出身。2009年デビュー。2018年『孤狼の血』で第42回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞、2019年『新聞記者』で第43回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。さらに『孤狼の血 LEVEL2』、『流浪の月』で第45回と第46回の日本アカデミー賞優秀主演男優賞をそれぞれ受賞。近年の出演作にドラマ『VIVANT』、Netflix『離婚しようよ』、映画『耳をすませば』『ラーゲリより愛をこめて』『ゆとりですがなにか インターナショナル』『スオミの話をしよう』など。現在、主演ドラマ『御上先生』(TBS系・日曜21時〜)が放送中。

松坂桃李さん出演映画『雪の花 ―ともに在りて―』

江戸時代末期、死に至る病として恐れられていた疱瘡(天然痘)が猛威を振るい、多くの人命を奪っていた。福井藩の町医者・笠原良策(松坂桃李)は人々を救う方法を見つけようと、京都の蘭方医・日野鼎哉(役所広司)の教えを請うことに。治療法を探し求めていたある日、異国では種痘(予防接種)という方法があると知るが、そのためには幕府の許可を得て「種痘の苗」を海外から取り寄せる必要がある。実現は困難だが、諦めない良策の志はやがて藩と幕府をも巻き込んでいく。

監督:小泉堯史
脚本:齋藤雄仁 小泉堯史
音楽:加古 隆
原作:吉村昭「雪の花」(新潮文庫刊)
出演:松坂桃李 芳根京子 三浦貴大 宇野祥(金)全国公開

©2025映画「雪の花」製作委員会

撮影/白平 沖原一生 坂東龍汰 三木理紗子 新井美羽 串田和美 矢島健一 渡辺哲/益岡徹 山本學 吉岡秀隆/役所広司
配給:松竹
2025年1月24日(金)全国公開

撮影/白井裕介 スタイリング/カワサキ タカフミ ヘアメイク/古久保英人(OTIE) 取材・文/工藤花衣

この記事を書いた人

大人のおしゃれ手帖編集部

大人のおしゃれ手帖編集部

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