お正月恒例企画「博物館に初もうで」巳年にちなんだ作品が大集合!
東京国立博物館 本館特別1室・特別2室ではお正月恒例の特集「博物館に初もうで―ヘビ~なパワ~を巳(み)たいの蛇(じゃ)!―」[2025年1月2日~ 2025年1月26日]が開催中です。
鋭い目や大きな口に赤い舌、にょろにょろした動きを見せるヘビは、人間の身近に生息しながら近づきがたい印象と、不思議なパワーを感じさせる生きものです。人間はその不思議なパワーにあやかろうと、信仰の対象として祀ったり、インスピレーションを受けた職人や画家が絵画や彫刻、工芸品にヘビを表したりして来ました。
本展は、令和7年(2025年)の干支・巳年にちなんで日本や、世界各地のヘビにまつわる作品が大集合。早速見に行って来ました。
※特別な許可を得て撮影しています。
特集「博物館に初もうで―ヘビ~なパワ~を巳(み)たいの蛇(じゃ)!―」 東京国立博物館
シンボルとしてのヘビ
森の中や水の中、人間の身近な場所など自在に動き回るヘビ。泳ぎや木登りもうまく、人々はヘビに不思議なパワーを感じて様々なイメージを重ねて来ました。 脱皮を繰り返す姿から若返りと再生のシンボルとしたり、毒ヘビを力のシンボルとするなど世界の文化の中でシンボルとして表されて来たヘビの姿を見ることが出来ました。
お釈迦様をお守りするドヤ顔のヘビ⦅ナーガ上のブッダ坐像(なーがじょうのぶっだざぞう)⦆
とぐろを巻いたヘビの上に結跏趺坐をして印を結び瞑想する釈迦牟尼仏陀。7つの頭を天蓋のように広げて風雨から仏陀を守るヘビの神ナーガ。
偉大なる悟りを開いた仏陀をお守りするちょっと得意気なドヤ顔に見えるナーガです。ナーガに守られたお釈迦さまの眼もとや口元には微笑みの表情が浮かび、お釈迦様の優しさと慈悲深さを感じさせる⦅ナーガ上のブッダ坐像⦆です。
ナーガ上のブッダ坐像 タイ・ロッブリー出土 アンコール時代・12~13世紀 三木榮氏寄贈 東京国立博物館蔵
猛毒のヘビ「百歩蛇(ひゃっぽだ)」を持つ⦅祖霊像(それいぞう)⦆
台湾のパイワン族の家屋で祭られた《祖霊像》です。
手にしているのは猛毒を持つヘビ「百歩蛇(ひゃっぽだ)」。右手でヘビを持ち上げ、左手を腰に当てています。ニンマリ笑う祖霊の表情は、猛毒のヘビより強いことをアピールしているよう。
祖霊像 台湾、パイワン族 20世紀 田中泰雄氏寄贈 東京国立博物館蔵
都市国家アテネの守護神のシンボルはヘビ⦅ヴェッレトリのアテナ⦆
ギリシャ神話の知恵と戦争の女神アテナのシンボルはヘビです。 その昔、「アテネの神殿に大蛇が住んでいる」と信じられていたことと、ヘビが知恵をイメージさせる生きものだったことからシンボルとなったそうです。
とぐろを巻くヘビを兜に付けた⦅ヴェッレトリのアテナ⦆の胸像。胸元にはヘビの髪の毛をくねらせた恐ろしいゴルゴン像。その目を見たものは石に変えられたという神話が伝わっています。
ヴェッレトリのアテナ 19世紀 陶製 原形:紀元前5世紀 ライプツィヒ民族学博物館寄贈 東京国立博物館蔵
ヘビのかたち
くねくねと自在に動き回り鎌首を持ち上げるヘビの特徴ある姿は、古来より職人や画家の感性を刺激して様々な作品が作られています。
本物のヘビのように自在に動かせる⦅自在蛇置物(じざいへびおきもの)⦆。口も開けられるそうで、金属の質感のウロコがリアルです。
展示室の入口には自動で実際のヘビと同じように動く⦅自在蛇置物⦆の複製(令和5年(2025) 原品:宗義作 昭和時代・20世紀 東京国立博物館蔵)がありました。こちらもご注目!
自在蛇置物 宗義作 昭和時代・20世紀 東京国立博物館蔵
ヘビと祈り
稲作の盛んな日本では水神として祀られたヘビは、龍神のイメージとも結びつき豊穣をもたらすと信じられ祈られて来ました。
「ヘビと祈り」では十二神将像の巳神や、ヘビを使いとする弁財天、東西南北の四方のうち北方を守護する水神・玄武など新年に相応しい縁起の良いヘビたちが勢ぞろい。 ヘビの造形に込められた人々の祈りや願いを表したものを見ることが出来ました。
重要文化財《十二神将立像(巳神)(じゅうにしんしょうりゅうぞう ししん)》
薬師如来(やくしにょらい)が従える仏法守護の重要文化財《十二神将立像(巳神)》です。 頭上のとぐろを巻いて鎌首を持ち上げるヘビは、⦅ヴェッレトリのアテナ⦆の兜のヘビをイメージさせます。
翻る衣の深いひだや、所々に残る鮮やかな色彩。右手に何か持っていたのでしょうか。ひねった腰に踏ん張る両足の親指が立っていてヘビらしく⁈さりげなく力強さを感じさせます。
重要文化財 十二神将立像(巳神) 京都・浄瑠璃寺伝来 鎌倉時代・13世紀 東京国立博物館蔵
北方を守護する水神⦅玄武水滴(げんぶすいてき)⦆⦅玄武七宝水滴(げんぶしっぽうすいてき)⦆
水滴は硯(すずり)に注ぐ水を入れる容器です。 玄武の姿を象った⦅玄武水滴⦆(左)と⦅玄武七宝水滴⦆(右)。
背中にヘビが乗る姿が、東西南北の北方の守護神、霊獣・玄武(げんぶ)を思わせます。 ⦅玄武水滴⦆(左)の碗を銜えた亀の姿は、中国・明の百科全書『三才図絵(さんさいずえ)』にあり、「中国に起源のある由緒ある形式」であることが分かるそうです。
⦅玄武七宝水滴⦆(右)。七宝で作られた亀の甲羅には金属製のヘビが這い、亀の頭の上まで鎌首を乗せて口を開けています。 こちらも亀が碗を銜えた形式で作られています。
左から、玄武水滴 江戸時代・18~19世紀 銅製、鋳造、彫金、玄武七宝水滴 中国 清~中華民国時代・19世紀~20世紀 銅鋳造、彫金、鍍金 どちらも渡邊豊太郎氏・渡邊誠之氏寄贈 東京国立博物館蔵
物語のなかのヘビ
インパクトのある動きと姿で人々に不思議なパワーを感じさせるヘビ。物語のなかにも大きな口で人や動物を飲み込んだり、身体に巻き付いたり、毒牙で襲いかかって来たりする大蛇の姿が描かれています。
重要文化財《清水寺縁起絵巻 巻下(きよみずでらえんぎえまき まきした)》
木々が生えた崖の上に角が生えた大蛇に突如巻き付かれたお坊さんがいます。清水寺に仁王像(におうぞう)を安置すると誓うと大蛇は離れて去って行ったそうです。
左画面には、崖を降りて去って行く大蛇と、その上に、手を合わせて横になったままのお坊さんが描かれています。
同じ画面の右から左へ物語の時間の流れが分かるように異時同図法で描かれた縁起絵巻です。
重要文化財 清水寺縁起絵巻 巻下 土佐光信筆 室町時代・永正14年(1517) 東京国立博物館蔵
道成寺⦅摺箔 白地鱗模様(すりはく しろじうろこもよう)⦆
金の摺箔(すりはく)で正三角形を繋げた文様がヘビの鱗模様を表している能装束⦅摺箔 白地鱗模様⦆(右)。 能「道成寺」で、山伏への恋慕が執念となった娘は、大蛇に姿を変えて山伏のあとを追います。娘が鬼女の姿となった時に纏う装束です。
金色の鱗にヘビの強いパワーが感じられます。
右側、摺箔 白地鱗模様 江戸時代・18世紀 東京国立博物館蔵
新年の初詣は「博物館に初もうで―ヘビ~なパワ~を巳(み)たいの蛇(じゃ)!―」へ
自在に動き回る姿から感じる不思議なパワー、豊穣と富を司り、仏法や四方を守護する神の姿、物語にも登場する大蛇など様々なヘビの姿を見ることが出来る特集展示です。
東京国立博物館 本館特別1室・特別2室の特集「博物館に初もうで―ヘビ~なパワ~を巳(み)たいの蛇(じゃ)!―」は1月26日までです。
本館の総合文化展の展示も一部を除いて入れ替えられて新しく展示された作品も多数見ることが出来ました。 新年の初もうでに是非お立ち寄りください。
東京国立博物館 本館ミュージアムショップ
東京国立博物館 本館ミュージアムショップでは、はにわのお砂糖(413円)、東京国立博物館エコルセ⦅表慶館⦆(1‚350円)を購入。エコルセは、サクッとして軽いお菓子です。カワイイはにわのお砂糖は、お土産にもおススメです。
ミュージアムグッズ 東京国立博物館 本館ミュージアムショップ
〇東京国立博物館
URL:https://www.tnm.jp/
住 所:〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
アクセス:JR 上野駅公園口・鶯谷駅南口から徒歩10分、東京メトロ上野駅・根津駅、京成電鉄京成上野駅から徒歩15分
お問合せ:050-5541-8600 (ハローダイヤル)
開館時間:9時30分~17時00分※毎週金・土曜日は20時00分(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(祝・休日の場合は翌平日休館)
観覧料(総合文化展):一般 1,000 円/大学生 500 円 ※特別展は別料金になります。黒田記念館は無料です。
※総合文化展は、事前予約不要です。入館方法の詳細は東京国立博物館ウェブサイトをご確認ください。
※高校生以下、および満18歳未満と満70歳以上の方は総合文化展は無料。入館の際に年齢のわかるものをご提示ください。
※障がい者とその介護者1名は無料。入館の際に障がい者手帳などをご提示ください。
※開館日・開館時間・展示作品・展示期間等、今後の諸事情により変更する場合があります。最新情報は、東京国立博物館ウェブサイト等でご確認ください。
〇特集「博物館に初もうで―ヘビ~なパワ~を巳(み)たいの蛇(じゃ)!―」
会期:2025年1月2日~ 2025年1月26日
会場:東京国立博物館 本館特別1室・特別2室
※総合文化展の観覧料で観覧できます。
〇本館ミュージアムショップ
営業時間:博物館の開館時間に準ずる
TEL:03-3822-0088