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静かな散歩(サイレントウォーク)、心も体も整える最古で手軽な習慣

  • 2025.1.17

心と体を癒す新習慣「静かな散歩(サイレントウォーク)」

メール、LINE、ニュース、SNS関連の通知やアプリの通知など次々飛び込んでくる着信音や振動。現代はとにかく「集中しづらい時代」と言われ、30分間一人で静かに過ごし、何の気も散らされることなく自分の思考にだけ集中する時間を持つのは、ほぼ不可能とさえ言える。私たちはデジタルな刺激に溢れる日常に浸かり、次々と押し寄せる仕事や日常の思考から頭を切り離すのが難しい。だからこそ、今こそ自分自身とつながり直し、思考を整理するための方法を見つけることが重要になっているのだ。

そんな中、古代から続く「長寿の習慣」が再び注目を集めている。それは心を開き、思考を静めるだけでなく、全身の血液循環を活性化し、血液の酸素化を促進するもの。その名も「静かな散歩(サイレントウォーク)」だ。この習慣は、パンデミック中にZ世代によって再発見され、多くの人を驚かせた。ある人は皮肉交じりに「若者たちは歩くことの意味をようやく見つけた」と述べたが、同時にこの習慣がデジタルデトックスの必要性を再認識させるきっかけとなったのも事実だ。

ソーシャルメディアの力は、見落とされがちな知識や習慣を再び世間に広める点にある。この「静かな散歩」は、単なる一時的な流行ではなく、自然の中で静かに歩く30分間というシンプルな行動が、心身にもたらす再生効果を証明するムーブメントとなった。この間は誰の声にも応えず、自分自身の時間を尊重するというルールを守ることで、体と心だけでなく、社会生活や長寿にもポジティブな影響を与えることが期待されている。

静かな散歩は、現代のデジタル疲れを癒し、自分自身と向き合う貴重な時間を提供してくれるシンプルでありながら強力な方法だ。

毎日30分のウォーキングがもたらす健康効果

Photo_ Michal Fludra/NurPhoto via Getty Images
Daily Life in Sliema, MaltaPhoto: Michal Fludra/NurPhoto via Getty Images

ウォーキングは、どのような強度であっても健康に良い影響を与えるシンプルな運動習慣だ。研究によれば、1日わずか4000歩、時間にして約30~45分のウォーキングで、早期死亡やがんなどのリスクを軽減できることが分かっている。定期的に長時間歩くことは、筋肉や骨を強化し、血液循環を活性化するほか、血圧の改善や脂肪やコレステロールの蓄積を防ぐ効果もある。さらに、代謝が活性化されることで、体全体の健康が促進される。

ウォーキングによる血液の酸素化は、空腹感や食欲のコントロールにも好影響を与える。エクセター大学の研究では、たった15分のウォーキングでもジャンクフードへの欲求を減少させ、満腹感をより正確に感じ取る能力を高めることが示された。

短時間のウォーキングであっても、その効果は侮れない。「ウォーキングは最良の薬です。ぜひ外に出て歩いてみてください」と語るのは、NYのメイヨークリニックで予防心臓学を専門とするランドール・トーマス医師だ。ウォーキングというシンプルな習慣が、私たちの健康を大きく支えることは間違いない。

あらゆる世代に寄り添うメンタルケアの味方

ウォーキングの健康効果は決して新しい話ではないが、デジタルな刺激に溢れる現代社会において、その重要性はさらに増している。「静かな散歩(サイレントウォーク)」という概念は、パンデミック中に生まれた。リモートワークのリアルタイムでのパフォーマンス要求が強まり、世界的にバーンアウトが広がる中で、この散歩は自然の中でのマインドフルネス、つまり歩く瞑想として注目された。オンライン会議の合間に自然の中で一息つくこの習慣は、多くの人々にストレス緩和の新たな方法として受け入れられた。

「気分を落ち着けるために少し歩いてみては?」という言葉がよく使われるが、これは単なるアドバイス以上のものだ。仕事のストレスや緊張を和らげる実践的なテクニックとしても効果的だという。カリフォルニア大学の情報学教授であり「ATTENTION SPAN(アテンション・スパン) デジタル時代の『集中力』の科学 」の著者であるグロリア・マーク氏の研究によると、私たちはデジタルコンテンツに約47秒間しか集中せず、その後スクロールして次の刺激を探す。この消耗する行動が、仕事や日常生活のストレスと疲労感を引き起こしている。

「YouGov」の調査によれば、世界人口の74%がバーンアウトや強いストレスを経験したことがあるという。このような状況の中、静かな散歩はテクノロジーやメール、コンテンツから解放され、自分自身の心と向き合う時間を作る方法として再評価されている。この習慣は、日常の出来事を振り返り、感情を整理するスペースを生む。これにより、感情を冷静に捉え、職場や社会生活の中で不適切な形で爆発するのを防ぐことができる。

静かな散歩は、現代人のメンタルケアに欠かせない味方と言える。忙しい毎日の中でも、このシンプルな習慣を取り入れて、自分自身とのつながりを深めてほしい。

一人でいるのは難しい? 孤独と退屈が心と体に与えるポジティブな影響

2014年のヴァージニア大学の研究によると、何もすることがない場合、多くの人は自分の考えと向き合うよりも電気ショックを受ける方を選ぶという結果が出た。「ほとんどの人は、何もしないよりも何かをする方を好むようだ」と研究者たちは述べている。しかし、社会的孤立の中で多くの文学作品が生まれた事実を思い返すと、孤独と退屈が集中力や創造性を刺激する重要な要素であることがわかる。一方で、デジタル刺激の過剰は、思考との接触による感情的な痛みを麻痺させるだけでなく、心のつながりをも奪ってしまう。

孤独が問題や避けるべき不快なものとみなされることが多い中、このメカニズムを否定的に捉えるべきではない。孤独であること(being alone)と、一人でいること(solitude)の違いを認識することが重要だ。特に愛する人を失うなど、人生の困難な局面において、外部に慰めを求めることは自然な行動だが、感情を理解し整理するための「神聖な孤独」の時間も必要だ。

孤独はまた、いわゆる「ソーシャルハングオーバー」(社会的疲労)を感じるときに有益だ。人間関係に疲れたとき、日常生活を少し距離を置いて見直すことで、悪循環から抜け出すきっかけを得られる。カリフォルニア州立工科大学の社会学者ジャック・フォン氏は、「人々が孤独を探求する時間を持つことで、自分と向き合うだけでなく、社会的な環境に潜む毒性を克服する方法を学ぶこともできる」と語る。

孤独を選ぶことは、自分自身や周囲との健全な関係を再構築するための第一歩と言える。時には一人で過ごす時間を大切にして、自分の内面と向き合う習慣を取り入れてみてほしい。

Photo: Larissa Hofmann Styling: Alex Harrington Hair: Blake Henderson Make-up: Fara Homidi Manicure: Saffron Goddard Tailor: Gillian Ford Text: Irene Coltrinari Translation: Makiko Yoshida

FROM VOGUE.IT

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