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予想外の被害が出やすい太平洋側の大雪!気をつけるポイントを解説

  • 2025.1.17

冬の雪には、西高東低の気圧配置によって日本海側に雪を降らせるパターンと、南岸低気圧によって太平洋側に雪を降らせるパターンの2つがあります。

このうち、南岸低気圧は、雪に慣れていない太平洋側に大雪をもたらすことから、被害が大きくなることがあります。大雪災害が起こると道路の通行止めや鉄道の運休、停電などが発生し、日常生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。

今回は、太平洋側の大雪災害の特徴や備えるポイントを解説します。

太平洋側の大雪を降らせる原因と特徴

太平洋側に大雪を降らせるのは、日本の南海上を発達しながら東~北東に進む南岸低気圧によるものです。

太平洋側の雪の特徴は、日本海側に比べて降る頻度が少ないことです。関東地方の太平洋側であれば、1年に1回積雪があるかどうかで、大きな被害をもたらすような積雪は数年に1回程度です。

以下は、東京都において過去20年間で1日に1cm以上の積雪を記録した日をまとめた表です。

東京都では過去20年に24日降雪による積雪を記録しています。1年間に1回程度積雪する計算です。

また、この期間中大雪注意報の基準となる5cm以上~10cm未満の積雪は4回、大雪警報の基準となる10cm以上の積雪は5回です。

※実際の注意報・警報基準は12時間の降雪の深さに基づいています

近年だと、2022年1月6日に東京都で10cmの積雪を観測した際、首都高速道路で約100kmが通行止めとなり、全面通行再開までに1日を要しました。冬用タイヤを装着していない車が立ち往生し、その解消に最大14時間かかり、主要な国道でもスリップ事故が多発しました。

また、2018年1月22日に東京都で23cmの積雪を観測した際には、交通への影響をはじめ、近県の千葉県や神奈川県で大規模な停電も発生しています。

日本海側と太平洋側の雪の違い

日本海側と太平洋側では雪日数が大きく異なります。

太平洋側に雪を降らせるのは南岸低気圧と呼ばれる温帯低気圧ですが、南岸低気圧が接近したからといって必ずしも雪を降らせるとは限りません。

南岸低気圧の中心付近には暖かい空気が入っているため、南岸低気圧の中心に近づくと気温が上がって雨になります。一方、南岸低気圧の中心から離れると気温が低く雪になりますが、離れすぎると雪雲が届かなくなり、降水そのものがなくなります。

南岸低気圧とほどよく離れ、なおかつ雪雲がしっかりかかるときだけ雪になるのです。

関東地方では、南岸低気圧の中心が八丈島より南側を通ると雪、北側を通ると雨になりやすいといわれています。南岸低気圧の発生回数がそもそも多くなく、さらに毎回雪になるとは限らないため、太平洋側の雪日数や積雪が少ないというわけです。

一方、日本海側の雪は、冷たい季節風が暖かい日本海を吹き渡る際に発生する雪雲がもたらします。冬のほとんどは季節風が吹いているため、日本海側では太平洋側に比べて雪日数や積雪が多くなります。

太平洋側の大雪災害が「予想外」になりやすい理由

太平洋側の大雪は、予想が難しい現象として気象庁でも取り扱われています。

その理由は、気温が1℃~2℃違うだけで雨か雪かが変わりますし、また、積雪の有無も変わるためです。

雪が降っても気温が高ければ積雪は増えませんし、予想より気温が低くなると急激に積雪が増える場合もあります。南岸低気圧で雪が降るかどうか、積雪が増えるかどうかを正確に予想することは現在の技術でも困難です。

例えば、南岸低気圧の接近で過去の事例やシミュレーションから雨になる可能性が高いと予想される場合に、「明日は南岸低気圧で雨の予想です」と天気予報で発表したとします。

しかし実際には、南岸低気圧が予想よりも南を通って大雪となり、予想外の大雪災害につながるケースもあるというわけです。

一方、「明日は東京都で大雪が予想されています」と天気予報で言っていても、実際には大雪にならなかったケースも多くあります。このようなことが何度か繰り返さると、「今回も雪は降らないだろう」と思い込んでしまい、予想外の大雪災害に巻き込まれる可能性もあります。

太平洋側の大雪に備えるポイント

南岸低気圧の接近で大雪が予想される場合、数日前から天気予報や気象情報でも情報が発信されます。少しでも雪の可能性があるなら、停電などに備えて早めに以下の備蓄品を用意しておきましょう。

・水(最低でも3日分)
・食料(最低でも3日分)
・灯油
・使い捨てカイロ
・カセットコンロ
・湯たんぽ
・携帯ラジオ
・モバイルバッテリー

また、除雪作業が必要になる場合もあるため、スコップや防寒具、軍手なども用意しておきましょう。

慣れない雪道は事故の原因となるため、不要不急の外出は控えるようにスケジュールの調整を早めにしておくことをおすすめします。

どうしても車の運転が必要になる場合は、冬用タイヤやチェーンを用意しましょう。

ちなみに、近年は地球温暖化によって夏も冬も記録的な高温が続いていますが、南岸低気圧による大雪は定期的に発生しています。

気温が高いからと油断せず、南岸低気圧による大雪に備えましょう。

〈執筆者プロフィル〉

田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

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