夫の不倫......私はどうするべき?
相談者・Rさん
結婚8年目の41歳です。2ヶ月前に、夫が会社の人と不倫をしていたことを知りました。1年前から関係が続いていたそうです。その事実を知り、とてもショックでした。
心はズタズタに傷つきましたが、現実的にこれからのことを考えなければなりません。もし別れるとしたら、心配なのは今後の生活のこと。私の仕事はドラッグストアのパートタイムで収入も安定していませんし、1人で生活していけるのかと不安になります。
夫は心底反省をしている様子で、これからも2人で暮らしていくことを考えているようなのですが、やはり心に空いた大きな穴はなくなりません。夫を許すべきなのか?一人でリスタートすべきなのか?悩んでしまっています。どうしたらよいのでしょうか?
臨床心理士・南さん
Rさん、お悩みありがとうございました。パートナーの不倫、Rさんにとって深く傷つく出来事だったろうとお察しします。不倫という出来事は、今後の2人の関係性だけでなく、自分の中にある価値観や信頼感がぐらつくなど、Rさん自身にも大きな影響を与えるものですよね。
まずはじめに......
2ヶ月前に事実を知ったとのことですので、まだまだ心の傷が癒しきれていない時期だろうと思いました。この先のことを考えていくことも大切ですが、そのような時期に大きな決断(関係を続けていくのか、それとも1人でリスタートするのか)をするのは、あまりおすすめできないです。決断を急ぐ前に、まずは自分自身の心のケアを優先していただき、心も体も落ち着いた状態を作ってからこの先のことを考えていくのが良いのではないかと考えます。
ここから先は、自分をケアする→決断をする時にどんなことを考えるとよさそうか、という順番で、心理師の視点からお話ししていきますね。
自分の心を癒していくために
(1)安心を感じられる環境を整える
文面だと分からないのですが、おそらくパートナーの方とは同居されている状態でしょうか? 今回、Rさんが傷ついたのはパートナーの不倫によるものなので、会うたびにどうしてもその当時の記憶がよみがえり、それによって心が乱れることも多いと思います。Rさんの日常生活にも影響が出ているようであれば、パートナーの方と一時的にでも距離を置いて過ごしてみる(例えば、パートナーに別の場所に住んでもらう、実家に帰るなど)のも良いのかもしれないと思いました。難しいようであれば、パートナーと遭遇する時間がなるべくかぶらないように配慮してもらうのもよいかもしれません。
(2)日常のルーティンを大事にする
ショックな出来事があった時こそ、日々の日常を淡々とこなしていく、ルーティンを崩さないことを意識してみてください。ショックな出来事の後に心が揺らぐのは当然のことです。ルーティンを維持することによって、心の揺らぎを最小限に抑え、回復を促すことに役立ちます。自分自身を守るための重要なプロセスなのです。
(3)信頼できる人や専門家に話してみる
不倫によって、怒り、悲しみ、不安など様々な感情が湧き上がってきていると思います。自分の中に溜め込んだり、我慢しようとしたりすると、よりネガティブな感情が強まり、ますますつらくなってしまうんですよね。もし身近にお話しできる人がいたら、今Rさんが感じている気持ちを話してみてください。話すことによって感情が整理され、心が軽くなったり、「自分の気持ちを受け止めてもらえた」という経験が回復へとつながっていくと思います。
(4)呼吸を意識する
不倫のショックによって、ストレス過多になり、感情の調整が難しい場面が増えてくると思います。そんな時は、呼吸法を意識的に行いましょう。呼吸が深くなるだけでも、感情の波が穏やかになります。また、強いショックを感じている時は、心と体のつながりが断垂れているような感覚(離人感や空虚感など)を引き起こすことがあります。呼吸法は、自分の身体感覚に意識を戻す効果があり、「今、ここに自分が存在している」という安心感を取り戻すのに役立ちます。
(5)不倫と自分の魅力・価値は全く関係ない
不倫は、あくまで相手がとった行動であり、Rさんに魅力がないからとか、Rさんの価値を下げるものではありません。最初は難しいかもしれませんが、このことをくり返し意識することも、心の回復を考える上で大切なことだと思います。
決断をする時に持ちたい視点とは?
日常生活を取り戻し、心身ともに落ち着いてきた段階になったら、今後のことを考えていきましょう。
(1)それぞれのメリット・デメリットを洗い出す
ご質問にあった「夫を許すべきか」「一人でリスタートすべきか」についてですが、どちらが正しい!ということではないと思います。それぞれにメリットとデメリットがあり、それを理解した上で、自分が納得できる道を選ぶことが大切なのではないでしょうか。そのためにも、それぞれの選択肢をとった時のメリット・デメリットを洗い出してみて、客観的に考えてみるとよいと思います。また、それぞれの選択肢を考える上で、こんな視点を持つと良いのではないか? ということもいくつか挙げておきますね。
(2)結婚生活に関する価値観を再定義する
決断をする前に、Rさんにとって結婚生活とはどんなものなのか、パートナーとの結婚生活にどのような期待を持っているのかなど、Rさんの中にある価値観を言葉にしてみてください。価値観とは、人生の方向性や目標を決める際の羅針盤のようなものです。価値観を見つめ直すと、混乱している状況から抜け出し、自分自身が納得のいく道を選びやすくなります。また、不倫という出来事が起きた後は、家族や友人、社会的規範など他人の意見やアドバイスに影響を受けやすい状況になりがちです。そんな時にも、自分の価値観を把握しておくことで、周囲の声に流されて自分にとってベストではない選択をしてしまうことを防ぐこともできます。
大切なのは、自分にとって幸せかどうか
色々お話させていただきましたが、まずはRさんの心の痛みは何よりも最優先にケアされるべきだと思います。たくさん傷ついているわけですから、十分すぎるくらいご自身を労ってあげてくださいね。そして、決断をするまでには、いろんな考えが頭の中を駆け巡り、時には混乱することもあるかもしれません。そんな時は「どうしたら自分が幸せだと感じられるか」ということにフォーカスしていただくのが良いのではないかと思います。誰のためでもない、Rさんご自身のために、Rさんがこの先楽しく生きていける選択をしていけることを陰ながら応援しています。