1. トップ
  2. 恋愛
  3. 【高尾美穂医師に聞く#21】夫の浮気が発覚。でも結婚生活は続けたい……再構築はできますか?

【高尾美穂医師に聞く#21】夫の浮気が発覚。でも結婚生活は続けたい……再構築はできますか?

  • 2025.1.16

女性の人生は、体調のリズムやその変化と密接な関係があります。生理、PMS、妊娠、出産、不妊治療、更年期……。そうした女性の心と体に長年寄り添ってきた産婦人科医・高尾美穂さんによる連載コラム。お悩み相談から生き方のヒントまで、明快かつ温かな言葉で語りかけます。今回のテーマは「パートナーの浮気」。言いようのない感情に襲われながらも再構築を目指すには、というお悩みについて考えます。

Q. 夫の浮気がわかって以来、すべてが信用できなくなりました。まさか自分がこのような目に遭うとは思わず、言いようのない怒りが湧き、落ちこみ、夫と相手の女性を恨む日々です。それでも二人の子どものことも考えて、結婚生活はどうにか続けたいと思っています。関係を再構築するためのヒントはあるでしょうか。(39歳、女性)

高尾美穂医師(以下、高尾): 基本的に、再構築はなかなか難しいのではないかと思います。相手を全く疑っていない状態に戻るのは難しいでしょうし、ご相談者さんは傷つけられた側で、パートナーは傷つけた側だという、被害者・加害者のような関係性がご自身の中でできてしまっているのではないかと思うので、夫婦間で何かあるごとに「あのとき浮気したから」と、さまざまなことをパートナーのせいにしてしまう。そういう思考を幾度となく繰り返していくのではないでしょうか。ご自身がその状態を良しとするかどうか、ですね。

すごろくが進んでいったけど、何か出来事があるたびに毎回振り出しに戻るかのように、ネガティブな感情に引き戻されるのはつらい未来だと思います。いっそのこと離婚して、相手の女性がわかっているならその方にも慰謝料を要求する。そして、自分も働いて子どもを育てながら新しい未来を探していく、という決意のほうが、よっぽどスッキリするとは思います。

grinvalds/iStock/Getty Images Plus

それでもご相談者さんが再構築を望むのなら、パートナーを信じることですね。それができなければ、家族として関係を続けていくのは難しいのではないでしょうか。また、再構築をしたい理由がお子さんのためだとしたら、それが本当に子どものためになるのかを考えてみてもいいと思います。大切なのは、子どものためだけではなく、ご自身が家族というあり方を続けていきたいかどうか。もし続けたいと思うなら、自分が受けた心の傷は浅くなることもあるでしょうし、相手への思いも、元通りにはならないかもしれないけれど、少しずつ元の状態に近づけていくことはできるのかもしれません。

揺れ動く気持ちには時間をかけて

──怒り・落ちこみ・恨み……揺れ動く自分の気持ちと向き合うには、どうすればよいのでしょうか。

高尾: すごく地道なことですが、今自分がどういう状態で、それはなぜか、と考えてみることでしょうか。相手を責める気持ちや怒りを抱え続けるのはご本人も苦しいですし、周りの人にも迷惑がかかってしまうと思うんです。納得できるかできないかの尺度は、それぞれの人の中で違いますから、自分の中でゆっくりとでも気持ちが収まっていくのか、自分に向き合ってちょっと俯瞰して考えてみるという時間が必要なのではないでしょうか。そして、頭がカッとなっているときに離婚などの大きな決断はしないことも大切だと思います。

信用できないと思うパートナーの言動があったら、そのままにせず、ひとつずつ相手に聞いたり、言いにくかったことも切り込んで尋ねてみたりしてみるのもいいと思います。だけど相手からすれば、もしそれ以来何も悪いことをしていないのにそういう状態が続けば、「何もしていないのにまたそれか」「めんどくさい」という気持ちになるでしょうし、愛情を持って接するのも難しくなるかもしれませんね。

やはり二人でしっかり話し合うことですよね。今回のことは本当に傷ついたし残念だけど、もうこれからこういったことはないと信じるから、あなたもそれなりの対応をしてほしい。「次」はもうありません、と言えるかどうか。その内容は契約書にしてもよいくらいだと思いますよ。

takasuu/iStock/Getty Images Plus

傷みの記憶は上書きもできる

――パートナーに限らず、さまざまな人間関係において、大切な人に裏切られて傷を抱える人は少なくないかもしれません。そのようなときはどんな考え方をすればよいでしょうか。

その傷みは、時間の経過と共に薄れていくか、もしくは自ら記憶を上書きしていくか、そのどちらかだと思うんです。上書きとは、例えばパートナーと一緒に行ったディズニーランドのことを思い出すだけで泣けてくるとしたら、ディズニーランドに友達とみんなで行って新しくほかの楽しい思い出を作る。そうやって記憶を上塗りしていくことはできますよね。

でも、そもそも「裏切り」って、実はけっこうみんながしていることだとも思うんですよ。今回のようにわかりやすい恋愛での裏切りだけではなくて、例えば、本当は自分が誰かをサポートするような発言をしないといけない場面で黙っているとか、それもある意味で裏切りと言えますよね。心の中だけでの裏切りが、相手に気付かれることなく済んでいるだけかもしれません。

わかりやすい裏切りはもちろん記憶に残るし、本人も傷つくけど、そうでないものは世の中に実はちょくちょくある。人は、そうやって調子よく人付き合いをしている部分が誰にでもあるもの。まずはそう考えてみてもいいのかもしれませんね。

朝日新聞telling,(テリング)

浮気をする人の心理とは

──パートナーの浮気で悩んでいる人は数多くいるといいます。浮気をする人の心理とは。

高尾: 目の前ににんじんがぶら下がっていたら食らいついてしまう、ということなのではないですかね。日常と非日常があって、私たち人間がどちらに憧れるかといったら非日常なんですよね。本来はありがたい日常があるからこそ非日常が成り立つわけですが、そういう考えが及ばないまま非日常に食いついてしまう。

だからこそ、パートナーシップを維持していく上では、お互いがいてくれて有り難い、という感謝の気持ちをきちんと言語化して認識することが大事でしょうね。そして、10年後、20年後もそのパートナーと日常を過ごしたいか、ご自身がそのときどうありたいか。そういうことを二人で考えられる相手なのかどうか。子どもは巣立っていくものだから、二人の関係から始まっていずれは二人に戻っていく。そのときに楽しい時間を過ごせるか。

再構築するために必要なのは、やっぱりご自身の気持ちと決意なんだと思います。いったん過去の出来事にすると決めたら、それをいつまでも引きずらない。そういう姿勢も大事だと思います。そのためにも、この機会に、お互いに膝をつき合わせて、言いにくいことも含めてきちんといろいろなことを話し合ってみてはどうかと思います。

■高尾 美穂のプロフィール
医学博士・産婦人科専門医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。イーク表参道副院長。ヨガ指導者。医師としてライフステージ・ライフスタイルに合った治療法を提示し、女性の選択をサポート。テレビ出演やWEBマガジンでの連載、SNSでの発信の他、stand.fmで毎日配信している番組『高尾美穂からのリアルボイス』では、体と心にまつわるリスナーの多様な悩みに回答し、910万回再生を超える人気番組に。著書に『大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111』(講談社)など。

■Kaori Teradaのプロフィール
編集・ライター。ウェルネス&ビューティー、ライフスタイル、キャリア系などの複数媒体で副編集長職をつとめて独立。ウェブ編集者歴は12年以上。パーソナルカラー診断と顔診断を東京でおこなうイメージコンサルタントでもある。

■北原千恵美のプロフィール
長野県生まれ。東京都在住。ポートレート、ライフスタイルを中心にフリーランスで活動中。 ライフワークで森や自然の中へ赴き作品を制作している。

元記事で読む
の記事をもっとみる