感傷的とはどのような感情を表す言葉なのでしょうか?意味や使い方を例文でわかりやすく解説します。また、言い換え表現や類語、感傷的になりやすい人の特徴や感傷的になったときの気持ちの切り替え方など対処法について、恋愛やビジネスなど、さまざまな分野で良好な人間関係づくりをサポートするカウンセリングを行っている、小日向るり子さんに聞きました。
感傷的とは?
感傷的(かんしょうてき)とは、悲しみや懐かしさ、寂しさといった感情に心が揺さぶられる状態を指します。感動や喜びなどのポジティブなものではなく、悲しみや哀愁といった物悲しい様子を表現するときに使われる言葉です。
過去の思い出や感情を振り返るとき、何かが心の琴線に触れたときなどに感傷的になりやすくなります。
「感傷的」の言葉の使い方<例文>
感傷的という言葉の使い方を、具体的な例文を用いて解説します。
「昔の恋人が好きだった曲を聴くと感傷的になる」
思い出の曲がきっかけで、普段は意識していなかった昔の恋人を思い出すことは珍しくありません。終わった恋愛の記憶がよみがえり、懐かしさや切なさといった気持ちで心が揺れ動くことを「感傷的」と表現します。
完全に吹っ切れたわけではなく、「あのときは楽しかったな」「別れない選択もあったのかな」など、どこか気持ちが残っている場合、より感傷的になりやすいでしょう。
「桜の季節には学生時代に告白できずに終わった恋を思い出して感傷的な気分になる」
桜のように、季節や景色は特定の記憶を引き出しやすく、感傷的になりがちです。
特に告白できなかった恋は、「あのとき勇気を出していたら」と未練の念を抱きやすく、時間を巻き戻すことができない現実に切なさも感じるでしょう。過去には戻れない無力感、後悔のニュアンスを表すときに「感傷的」と言います。
「部屋を掃除していたら大好きだった元恋人の写真が出てきて感傷的になった」
切なさと懐かしさに加えて、自分をかわいそうと感じたり、過去のふたりを哀れんだりする気持ちを表現しています。
元恋人への恋愛感情はないものの、「恋人が大好きだったピュアな自分」を思い出して、もう同じ感情にはなれない現実にむなしさを感じているなど、ひと言では言い表せない感情を「感傷的」という言葉に込めることができます。
感傷的の言い換え・類語
感傷的を言い換える言葉に、どのような表現があるのか見ていきましょう。
切ない
胸が締め付けられるような哀しみ、やり場のない感情を言い表す言葉です。はかなさや苦しさといった感情が含まれている場合が多く、ただの悲しさよりも深く心を動かされるニュアンスがあります。
センチメンタル
懐かしさや哀愁に浸る感情で、感傷的とほぼ同じ意味で使われます。やや軽めでポジティブな印象も含むため、日常会話などでも取り入れやすい言葉です。
エモい
「エモーショナル(emotional)」が語源で、感動、切なさ、寂しさ、懐かしさなど、さまざまな感情で心が強く揺さぶられる状態です。
「説明しづらいけれど心にグッとくる」といった感覚を指し、ポジティブな表現としても使われます。カジュアルな会話やSNSなどでは使いやすい表現です。
感傷的になりやすい人の特徴
感傷的になりやすい人とは、どんな特徴があるのでしょうか。多く見られる傾向を紹介します。
感受性が強い
物事に対して敏感に反応し、出来事を深く感じ取る力があります。嬉しいことはより嬉しく、感動的な出来事はより感動します。
一方で、悲しい出来事は過剰に反応して落ち込んだり、報われない出来事はよりむなしく感じてしまったりすることもあります。
感情を優先する
理論的に理解するよりも、感情が先に立って物事を受け止めるタイプです。
例えば、別れを告げられた恋人のことを友達に相談する場合も、なぜ別れることになったのかを落ち着いて説明するのではなく、自分の気持ちに重点を置いて説明します。
理論的な思考を優先し感情を抑えることは不得意で、その場で感じた気持ちを素直に表現します。
ネガティブ思考になりがち
物事を悪い方向に考えがちなネガティブ思考の人は自分を極端に責めて、悲観的な未来を想像しがちなことから感傷的になりやすいです。
例えば、誰もいない夜道を歩いていると、「この世には自分一人しかいないような気がする」と孤独を感じたり、会社でミスをしたら「自分は人間として失格だ!」と強く自分を責めたりします。
感傷的になったときの対処法
感傷的になりやすい人もそうでない人も、誰しも何かのきっかけで感傷的になることはあります。感傷的になったときに、気持ちを整理して切り替える方法を見ていきましょう。
気晴らしをする
例えば、写真フォルダを整理していた際に、元恋人との写真が出てきて感傷的になったとします。このような場合は、いったん作業を止めて別のことをしましょう。
感傷的に陥った気持ちをそのままにしていると、どんどん負の感情が膨らんで、さらに落ち込んだりつらく感じたりします。スマートフォンは閉じて、散歩に出かける、お風呂に入ってリラックスするなど体を動かすことがおすすめです。
過去を肯定的に受け止める
感傷的な気持ちは、「あのとき、こうしていれば良かったのかも」「あの選択は間違っていたのかも」など、過去を後悔する気持ちから生じます。
感傷的になっている自分に気が付いたら、「でも、あの経験のおかげで成長できた」など、肯定的に受け止め直すようにしましょう。
無理に感情を抑え込むのではなく、過去を成長の一部として受け入れることで、より前向きになれるはず。思考の癖を意識して修正していくことが大切です。
時間を決めて思い切り感傷に浸る
「感傷的な気分から抜け出せない」と思う日があれば、「今日は思い切り感傷に浸ろう!」と、期限を決めて開き直ってしまうのも一つの手です。
例えば、元恋人との思い出の曲を聴きながら写真を見るなどして、気が済むまで泣いてみましょう。感傷的な感情は一過性のものなので、ため込まずに気持ちを放出すれば、不思議と落ち着きすっきりしてしまうものです。
感傷的な気持ちと上手に付き合おう
感傷的になりやすいのは、もともとの性格や感受性の強さもありますが、タイミングや環境によって引き起こされることも多いです。懐かしい風景や写真を見て思い出がよみがえるなど、感情が突然あふれてきて感傷的な状態になることは誰にでもあり得ます。
しかし、切なさや悲しみの感情にとらわれすぎてしまうとつらくなることもあるでしょう。気晴らしをしたり、時間を決めて感傷的な気分に浸ってみたり、気持ちに寄り添いながら上手に付き合っていくことで、自分自身をより大切にできるようになっていきます。そのためにも、気持ちを上手に整理し、心のバランスを取り戻す対処法を知っておきましょう。
取材・文/高坂晴奈
【監修】
小日向るり子さん
「カウンセリングスペースフィールマインド」代表。心理カウンセラー。一般社団法人 日本産業カウンセラー協会認定産業カウンセラー。JAAアロマコーディネーター。恋愛、人間関係、メンタルヘルスなど多くの悩みにカウンセリングを行っている。恋愛や心理系コラムの執筆やメディア出演、監修も多数行う。2024年4月までの相談件数は約6000件を超える。
オフィシャルサイト:http://feel-mind.net/