1. トップ
  2. 恋愛
  3. 私が大切にするものを理解しない彼へ、傷つけると分かって言った言葉

私が大切にするものを理解しない彼へ、傷つけると分かって言った言葉

  • 2025.1.14

4年付き合った私達は、5回の別れ話の末に別れた。別れ話の間、彼がずっと主張し続けていたのは、「価値観の違いが別れなければならないほど大きな問題とは思えない」、「俺はまだ、なつめさんが好きだ」の主に2つだった(詳しい経緯や私が別れたいと思った理由については、以前のエッセイを参照してほしい)。

◎ ◎

別れたいと別れたくないというお互い一歩も譲らない攻防を3回繰り返し、互いに疲弊してきた頃、ある事件が起こった。殺傷事件だ。心の。
もっと自分が成長できる場に身を置いて、そこにいる人と関わっていきたいと主張する私に彼は言った。

「なつめさん、俺よりもっと良い人探そうとしてるよね」

別に新しい彼氏を探したいって話じゃないし。仮にそうだとしてもそれの何が悪いの?

その会話で一気に空気がぎすぎすし始めた。それまでは互いになんで折れてくれないのか、どうしたら相手に納得してもらえるかを考えた話し合いという感じだったのに、急に自分が受けた傷や心に抱えているどうしようもない気持ちをただ、ぶつけるというふうになってしまった。

◎ ◎

彼が続けて言った。「なつめさんは贅沢だよ」と。
彼は、私が価値観や感性がズレてるから別れたいんだと思ってる。だから、他人同士違うのが当たり前なのに、価値観が違うことを理由にするのは贅沢だと言うのだ。でも違う。違うのに。
私は、ずれてはいけない価値観がずれているから別れたいのだ。ただ、異なる意見を持った人なら私はむしろ喜んで話を聞く。でも、私は筋が通っていない人や礼儀がなっていないのではなく、そもそもそれを大切にしようと思わない人に自分でも驚くほど冷たい気持ちになる。彼はまさにそれに当てはまってしまった。

付き合いはじめの高校生の頃は、まだ礼儀を大切にしなければならない場面も少なかったし、将来の夢が多少定まらなくても、まあ高校生だしとさほど気にならなかった。何より、進路は決まっていなくても一生懸命勉強していたのを見ていたし、私との交際も、大学で遠距離になっても自分は付き合い続けたいと思っていると、私に聞かれたわけでもなく自発的に言ってくれていた。
今は、第一志望の医学部に通っているのに、将来なにをしたいのか、そもそもなんで医学部に入ったのかさえ言えない。約束した電話の時間の5分前に「飲み会が入った」と悪びれずにLINEをしてくる。小さな猜疑心と軽蔑が私の中に溜まっていった。

◎ ◎

それを伝えると、「1人で別れるって決める前に言って欲しかった。そうしたら直したのに」と言われた。

「じゃあ、あなたは私が茶道の人間関係で悩んで礼儀を大切にしていること知らなかった?私、将来の話、あなたにしようとしたことない?私が寂しいって思ってるの知らなかった?本当に、全部、知らなかった?」

彼は黙っていた。
彼にとっては礼儀も、将来の進路も、筋もどうでもよかったのかもしれない。

けれど、自分で選んだ恋人にすら、自分が大切にしていることを理解してもらえないのを嘆くのは、贅沢なことなのだろうか。

「贅沢だと思うなら、切り捨てていいよ」

ずっと、言ってはいけないと思っていた言葉だった。傷つけると分かっていたから。でも、言わずにはいられなかった。
そんなこと言わないでと、電話越しに彼は震える声で言った。来週、直接会ったら泣いてしまいそうと言われたけど、いつのまにか私はもう泣いていて、でも、私の涙は別れの寂しさから来るものなんかじゃなかった。

■なつめの抹茶のプロフィール
料理と茶道が好きな女子大生。
いわゆるリケジョだけど、言葉を紡ぐこと、紡がれた言葉を読み解くことも大好きです。

元記事で読む
の記事をもっとみる