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だから90歳の今も週4日働ける…元東大教授が70歳から始めていた「心疾患や高血圧のリスクを低減する」習慣

  • 2025.1.12

高齢者になったら、いろんなことができなくなるのではと心配する人は多い。90歳にして医師として高齢者施設で週4日勤務する折茂肇さんは「白髪が生える、シミやシワが増えるなどの生理的老化は避けられない。しかし病的な老化は、ある程度、予防する方法がある」という――。

※本稿は、折茂肇『ほったらかし快老術』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

関節痛に悩まされる高齢の日本人男性
※写真はイメージです
「生理的な老化」と「病的な老化」は入り混じる

老化現象には、大きく分けて2種類ある。一つは、早いか遅いかの違いはあっても、誰にでもみられる変化で、これを「生理的老化現象」という。もう一つが、長年にわたる生活習慣や環境的な要因、あるいは病気などによって起こる変化、「病的老化現象」と呼ばれるものだ。ただし、両方が複雑に入り混じって起こることもあり、どちらか区別がつきにくいことも多いだろう。

一般的に、年をとると、体のさまざまな臓器を形成し、その働きを担っている細胞の数が減っていく。そのため、臓器も小さく縮こまっていき、働きも少しずつ低下していく。ただし、臓器による違いや個人差はあるが、細胞が減っていくスピードはゆっくりであるため、日常生活に支障をきたすほどの急激な機能の低下がみられることは少ないといえるだろう。

病気がなく健康な人でも、年をとればさまざまな老化現象は現れる。若者と異なる最も特徴的な現象は、外見の変化だろう。例えば、白髪や脱毛症(はげ)、皮膚のしわ、しみなどだ。

次いで、「予備力の低下」という変化もある。過度な運動や過剰なストレスなどによって、障害が起こりやすくなる。例えば、若いときは仕事で多少の無理をしても一晩寝れば次の日には元気になっていたのが、寝ても疲れがとれなくなる、激しい運動をすればひざや腰が痛くなるなど、いわゆる「無理がきかなくなる」という状態だ。

生理的な老化現象は、健康でも、どんな人にも現われる

また、運動の機能や姿勢を保つ働き、環境に適応して体内の状態を一定に保つ働き(生体恒常性=ホメオスタシス)も低下する。生体恒常性とは、体温や血糖値、電解質など体内の状態が何らかの原因で変化したときに、正常に戻す働きのこと。例えば、外が暑かったり、寒かったりしても、体温をほぼ一定に保っていられるような働きのことだ。しかし、老化によってその機能がうまく働かなくなるため、変化が生じたときに元に戻らなくなることが起こる。

さらに、免疫力も低下する。体内に病原体などが入り込んだとき、防御するシステムがうまく動かなくなるため、高齢になるとさまざまな感染症にかかりやすくなる。

これらが高齢者に起こる生理的な老化現象だ。健康な人でも、年をとればこのような変化は起こるのが自然なのだ。

一方で、病的な老化現象は、食生活や生活習慣、生活環境といった、若いころから長年にわたり蓄積されてきたものが原因で、あるいは動脈硬化症など高齢になると増える病気に起因してみられるもので、一般的には生理的な老化現象が早く進む。加えて、アルツハイマー型や認知症や白内障、骨粗鬆症などの病気もその一種と考えられる。これらは病気として治療が必要なものである。

40歳ごろから、忘れっぽくなる「良性健忘」は生理的老化だが…

実際には生理的な老化現象なのか、病的な老化現象なのか、見極めが難しいこともあるだろう。脳の老化を例に解説しよう。脳の老化にも、生理的なものと病的なものがある。

生理的な老化現象は「良性健忘」と呼ばれる、いわゆる「忘れっぽくなること」だ。一般的に40歳を過ぎるころから、記憶力や記銘力が低下する。テレビで見た、あの人の名前が思い出せない」「今日会ったあの人、名前何だっけ」ということや、「眼鏡をどこに置いたか思い出せない」「買ってきてと言われたものを忘れた」といった物の置き忘れ、買い忘れなどが日常的に起こるようになる。

これは、人によって程度の差はあるが、誰にでもみられるもので、時間が経過するほどに進行・重症化することはない。ちょっと困ることはあっても、生活に重大な支障をきたすようなことはほとんどないことといえる。

車椅子に座るシニア女性とその孫
※写真はイメージです
アルツハイマー型認知症、白内障や骨粗鬆症は治療が必要に

一方、病的な老化現象と考えられるのが、アルツハイマー型などに代表される認知症だ。アルツハイマー型認知症でも、最初に現れるのは、物忘れや記銘力の低下など、良性健忘と似た症状だ。そのため、最初は「年のせいかな」と思う人がほとんどだろう。

しかし、生理的な老化現象と異なるのは、症状が進行し、いずれは社会生活が送れなくなることだ。

改めて述べると、生理的な老化現象は、個人差はあるが誰にでも起こるもので、病気ではない。だから、あまり気にせず、「そういうものだ」と受け入れる気持ちを抱くことも大事だと思う。一方で、病的な老化現象は病気であり、治療が必要である。アルツハイマー型認知症も、白内障や骨粗鬆症も、治療をすることが必要な病気だ。そして、老化によって起こるこれらの病気は、早期発見し、早期に治療することで進行を遅らせることや、改善ができるものもある。

若さと健康を保つためには、適度な運動を継続する

適度な運動が体にいいことは疑う余地のない事実であり、多くの人が知るところであろう。「寝たきり」になることがなぜ問題視されるかといえば、体を動かさないと脳の機能も低下するからだ。やはり人間、「地に足がつく」ということが大事なのではないだろうか。足の裏には脳を刺激する回路があるといわれているが、足の裏をしっかり地面につけて体を動かすことが、脳を若く保つためにも有効なのである。

グラウンドを歩くシニア男性と女性
※写真はイメージです

東京都老人総合研究所(現・東京都健康長寿医療センター研究所)が、東京都小金井市の住宅の高齢者に対して、ライフスタイルや寿考命が生活の自立性に与える影響について、10年間に及ぶ追跡調査を行ったところ、運動習慣のある人は、ない人と比べて男女とも高い生存率を示しているが、その差は統計学的には誤差の範囲であった。

一方で、運動習慣のある人はない人と比べて基本的な日常生活動作能力(ADL)の低下が現れにくいことが認められた。それは、高齢者の運動習慣は余命を延ばすことだけでなく、生活機能と自立性の維持に貢献しているということである。

同調査では、運動の種類はゴルフ、水泳、テニス、ゲートボールなど多岐にわたり、それらのほか軽い体操や散歩も含めると、約80%の高齢者が運動をしていた。

「厚生省長寿科学研究」の一環として、全国7カ所の「健康増進センター」の利用者約7000人を対象とし、運動や食生活などと健康維持の関係について調査した結果では、60歳以上の人の約60%が運動をしており、多くの人が週2回以上運動していた。

運動は虚血性心疾患や高血圧のリスク、死亡率をも減らす

継続的に運動をしている人と、していない人に、5項目の体力検査を行った研究では、運動をしている人たちはしていない人たちに比べ、男女とも各年齢層において3〜5倍も体力が高く、体力レベルの高い人は低い人より健康状態が良いという報告も得られている。

継続的に運動することは、体力を増進させ若さを保つのに有用なことのほかに、心筋梗塞をはじめとする虚血性心疾患や高血圧のリスク、死亡率などを低減させ、長寿につながることも示されている。日本だけでなく、海外でも同様の結果を示す多くの研究報告がある。

90歳で現役、70歳から運動を続けてきたことがよかった
折茂肇『ほったらかし快老術』(朝日新書)
折茂肇『ほったらかし快老術』(朝日新書)

私自身、小脳梗塞を起こす前は習慣的に運動を行っていた。始めたのは20年ぐらい前の70歳ごろになるが、自宅近くにあるホテルのスポーツジムに週2〜3回通い、毎回30〜60分ほどウォーキングマシンを使って早足歩行をしていた。運動とは不思議なもので、始める前はなかなか面倒で、なんとか行かなくて済む理由を探し出そうと試みるが、いざ、腹を決めて体を動かした後には爽快な気分と達成感が味わえ、ストレス解消にも効果があると感じた。

始めた当時は、将来の健康長寿のためなどと考えていたわけではなかったが、今になって思うと、忙しいながらもこのように定期的に運動を継続してきたことで体力がつき、それが90歳になった今でも現役で仕事を続けられている生活につながっているのだろう。いくら元気とはいえ、90歳になっても毎日仕事に通っている人はそれほど多くないと思うからね。

医師の折茂肇さん(90歳)
医師の折茂肇さん(90歳)

折茂 肇(おりも・はじめ)
医師
公益財団法人骨粗鬆症財団理事長、東京都健康長寿医療センター名誉院長。1935年1月生まれ。東京大学医学部卒業後、86年東大医学部老年病学教室教授に就任。老年医学、とくにカルシウム代謝や骨粗鬆症を専門に研究と教育に携わり、日本老年医学会理事長(95~2001年)も務めた。東大退官後は、東京都老人医療センター院長や健康科学大学学長を務め、現在は医師として高齢者施設に週4日勤務する。

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