教えてくれたのは
特定非営利活動法人(認定NPO法人)全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)所属
神元幸津江さん
NPOや企業、行政などと連携し、必要な物資の調達や生活再建に向けた支援の調整を担う。現在も能登半島地震支援に従事中。
女性が避難所で困るのはどんなとき? 具体的なシーン別で解説!
女性が心がけておくべき防災基本ステップとは?
昨今は都市部での災害も多く、どこに住んでいても防災準備は不可欠になってきています。神元さんによると、防災の第一ステップは、避難所に行かなくても済む対策を取ること。それでも避難所に行くことになった場合に備えて、自分の生活スタイルに合った準備を。実はそれこそが、女性が健康で安全に災害を乗り切る秘訣なのです!
何よりも重要なのは「避難所に行かなくても済む」環境づくり!
避難所に行かず家で災害を乗り切れるなら、そのほうがストレスが少ないし安全。そのためにも備蓄は大事。ただし防災専用にストックするとなると消費期限管理が大変。それよりも、日常で使えるものを多めに備蓄して使い回していく“ローリングストック”がオススメです!
女性特有の要望は男性スタッフに言いにくい…
衛生面で困った実例
「提供される生理ナプキンは1種類のみ。私は多い日用じゃないとダメなので、たった一人いた女性スタッフにお願いして買ってきてもらった」
想定外に困ったのが替えの下着問題
衛生面で困った実例
「お風呂に入れないので下着だけは替えたかったが、提供されたのは万人向けのサイズでブカブカ。洗濯しても、防犯上干しづらく、大変だった」
性的被害に遭わないかとにかく不安!
防犯・メンタル面で困った実例
「間仕切りが低く周囲から丸見え。男女で分かれているわけでもないので、怖くてほとんど眠れず、それにより体調を崩しました」
結論女性の防災は「カスタマイズ」が命!
生理用品や下着の少なさ、着替え場所がない、スタッフは男性ばかり……。被災経験のある読者に聞くと、避難所は想像以上に女性のニーズが満たされておらず、衛生面だけでなく精神面、安全面においてもツラいことが多いよう。だからこそ“自分用”の準備が不可欠です!
衛生 Hygiene
衛生面を保つための防災グッズの準備は優先順位ナンバーワン! 外出先で災害が起こったとき用、自宅にこもるとき用、避難所に行くとき用と、シチュエーション別の準備ポイントを解説。
POINT1毎日持ち運ぶポーチ
【ここがポイント】ウェットティッシュと携帯用トイレはマスト!
「電車やエレベーターに閉じ込められたとき困るのがトイレ。携帯用トイレは小さいので2つくらい持っていると安心。ウェットティッシュはお尻拭きにも使えるなど万能です!」
\ そのほか /
- 自分の体質に合わせた薬
- 水
- 飴(糖分)
「携帯用防災ポーチは窮地を脱するまでの体調をキープできる物を入れておくことがポイント。水、飴などの糖質と薬は常に持ち歩いて」
POINT2自宅のストック
【ここがポイント】水や電気が止まることを想定したローリングストックを心がけよう!
「災害時は停電や断水になることが多いもの。お風呂もトイレも使えなくなる可能性があるので、そのための準備を意識して」
\ 見落としがちだけど大活躍! /
- ラップ
- ボディシート
- ペットシート
- ドライシャンプー
「水がないと食器を洗えませんが、ラップをしいて使えばそのまま捨てられるので衛生的。またペットがいる人は、ペットシートを多めに用意しておけば人間も使うことができます!」
POINT3避難リュック
【ここがポイント】避難所ではひとりひとりに合わせた細かな配慮は一切なし。デリケートゾーンケアは特にカスタマイズを抜かりなく!
【必ず備えたい三種の神器】
黒のボクサーパンツ型なら防犯面でもさらに安心◎
◆下着
「下着を洗濯して干すときは防犯面が心配。一目で女性用と分からないよう、黒のボクサータイプのサニタリーショーツと、黒のブラトップを持っていくのがオススメ」
羽つき?羽なし? 自分に合うサイズは?
◆ナプキン・おりものシート
「避難所ではナプキンの選択肢が少ないので、自分に必要なサイズを多めに備えて。また、替えの下着がないときはおりものシートを交換することで衛生的に保てます!」
プライベートゾーンだけでも清潔に
◆スリッパ
「避難所は土足厳禁になっていないことも多いもの。スリッパを用意して、自分のスペース内だけでも履き替えられると衛生的」
能登半島地震でも配られた「災害時女性支援プロジェクト」の女性向け災害ポーチ
災害時女性支援プロジェクトとは?
東日本大震災を受け、災害時の性被害や物資の不足など女性の環境改善を目指して発足された団体、災害NGO ラブ&アースの活動。女性が必要なものを「防災ポーチ」にまとめて被災地で配布しています。
ポーチの中には何が入っている?
発災時、少し落ち着いてから、また季節によっても中身は違ってきますが、メインは使い切りのお尻洗浄液、綿棒、紙パンツなどの衛生用品、保湿ジェルなどの化粧品です。ただしこちらも完璧ではないので、コンタクト、薬など自分にとって必要なものを揃えた“自分セレクト”ポーチを準備も忘れずに!
\ 神元さんも現地で見た! /
神元さん
能登半島地震のとき、災害NGOラブ&アースが避難所にいる女性に配っているのを目にしました。LED付きブザーなどの防犯用品、化粧水やBBクリーム、メイク落としなどの衛生用品、また被災地での女性相談窓口の電話番号も入っていて女性にとって心強いラインナップ。まさに女性が必要とするものに特化して作られているので、ぜひ、カスタマイズ防災ポーチを作るときの参考にしてください!
夏
- 日焼け止め
- 冷感ボディシート
(汗のにおいが気になるので、香りありタイプが役立つ!)
冬
- カイロ
- アルミ保温シート
- ヒートテックハーフパンツ
- リップ、ハンドクリームなどの保湿アイテム
共通
ナプキン、おりものシート、尿漏れパット、紙パンツ、使い切りお尻洗浄器、絆創膏、マスク、綿棒、洗浄綿、ボディシート、ヘアゴム、ヘアピン、ピンセット、メイク落とし、保湿ジェル、BBクリーム、アンダーパンツ、肌着、LED付き防犯ブザー、笛、女性相談窓口の電話番号など
防犯 Crime Prevention
災害時は、女性が暴力や性被害に遭う件数が激増します。被害に遭わないために、また万が一遭ったときでも自力で撃退できるように準備を怠らないで!
この3つがあると便利!
1. 救助を呼ぶこともできて一石二鳥
◆笛
\ こういうときに便利 /
笛は、暴漢を撃退する防犯ブザーとしてだけでなく、声が届きにくい状況で救助を呼ぶときにも役立ちます!
2. 目隠しに防寒に……万能アイテム
◆ロングスカート
\ こういうときに便利 /
寒いとき、外で着替えたりトイレをしなければならないとき、目隠しになるプリーツスカートは大活躍間違いなし。
3. 明るい範囲を広げて安全に
◆ライト
\ こういうときに便利 /
小さなライトでも、上に水の入ったペットボトルをのせると照らされる範囲がかなり広がります。ライトはコップに入れて立てると◎。
特に女性が知っておくべき豆知識
電車の中に閉じ込められたら……
胸が圧迫されないようにカバンを前に抱いて。自分のスペースを瞬時に確保!
骨格的に女性は特に潰されやすい!
混雑空間では圧死することもあるもの。男性よりフィジカルで弱い女性はより危険度が高いので、胸の前のスペース確保は必須と覚えておこう!
メンタル Mental
災害時は体だけでなく心にも大きな負担があるもの。安心やリラックスにつながるアイテムを準備しておくことも、実はとっても大事なんです。
情報網を整えておくことが最大の安心感につながる!
ソーラー充電、手回し充電、USB充電……自分の生活スタイルに合わせて選択を
◆ラジオ
「スマホが使えないときの情報収集ツールといえばラジオ。手回し充電や電池タイプのものなら停電中でも使える!」
非常時でも確実に使えるダイヤル
◆災害用伝言ダイヤル 171
「災害時は通信が混雑してつながらないことも。連絡を取り合いたい人とは『171に伝言を残そう』と共有しておくと安心」
公衆電話を使う場合は、+小銭・家族等の電話番号のメモも忘れずに!
ちょっと意識するだけで癒やしも備えられる!
日頃から使う習慣をつけると停電時も慌てずリラックス
◆アロマキャンドル
+ ライター or マッチも忘れずに!
「停電時にアロマキャンドルを焚けば、ライト代わりになるうえ、香りによる癒やし効果も得られて一石二鳥」
COLUMNいざというときもメンタルが安定する2tips
取り戻せない思い出の品類はひとまとめにしておく
「手紙や日記などは失ったら終わり。火事などで急いで逃げる場合に備え、持ち出しやすいようにまとめておこう」
避難用リュックの中にも推し活グッズを忍ばせる
「大変なときこそ推しの存在が想像以上に支えになるもの。軽くて小さいグッズをぜひ忍ばせておいて!」
美容フリークたちの「自分専用防災セット」は知恵とアイディアが満載! カスタマイズ防災、わたしのパターン
友利新先生のパターン
皮膚科・内科医
友利新さん
美容のプロページはこちら
とにかく寒がりなので防寒グッズを充実させていることと、水ナシで使えるケアアイテムを揃えていることがこだわり!
カスタマイズPOINTスキンケアは…宇宙用に開発されたポーラの製品を頼りに! 水なしで使えるので災害時にも役立つ◎
非常時こそ子供優先にしたいから、スキンケアは最小限で、賢く!
コスモロジー スペースクルーキット
コスモロジー クレンジングウォッシュ 60g・コスモロジー ローションクリーム 30g ¥7480
「このほかは、日焼け止めぐらい。防災セットは子供の食料が場所を取っているので、自分のスキンケアグッズはポーチに入る量に限定」
カスタマイズPOINT寒さ対策が一番のカギ。暖かさを味方につけると心も安定して一石二鳥!
「分厚いソックスやストール以外に、USB充電で暖かくなる靴を防災セットに入れています。家には防寒用のアルミも家族分常備。小さいので邪魔になりません!」
東日本大震災で長期避難を経験して睡眠とメンタルケアの重要性を実感!
「基本的なグッズに加え、睡眠を確保できる耳栓とアイマスク、保湿&癒やし効果があるukaのアロマオイルを追加」(VOCE アンバサダー Mari(まり)さん)
持ち運びに便利な防災ボトルを準備
「重要な連絡先、ペン、マスク、小銭など自分に必要なものを、水に落としても大丈夫なボトルにイン。こだわりは、糖分だけだと口寂しくなりそうなので個人的に好きな塩こんぶも入れたこと!」(VOCE 編集部 岡部奈央子)
大切にしたい日記。前年の一冊だけ常にイン
「日記には家族の連絡先も書いてあるので安心。基本グッズは、買わずとも自治体や会社からもらったもので無料で揃えられました!」(VOCE 編集部 野﨑未来)
オフィスにも最低限の防災グッズを常備
「会社に泊まることになりお風呂に入れなくても、ショーツとTシャツがあれば着替えが可能。おりものシートがあれば、クロッチ部分の汚れ防止にもなります!」(VOCE アンバサダー りーぴょんさん)
すぐ持ち出せるようリュックは目に付くリビングに!
「歯列矯正をしていて個人的に歯磨きが欠かせないので、無印良品の歯磨きシートが必須アイテムです」(VOCE アンバサダー yukarinaさん)
イラスト/Ayumi Nishimura 取材・文/山本奈緒子