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ブルータス時計ブランド学 Vol.60〈ボール ウォッチ〉

  • 2025.1.4
ブルータス時計ブランド学 Vol.60〈ボール ウォッチ〉

鉄道時計を出自とする、高精度なタフネスウォッチ

1891年4月19日、米国オハイオ州キプトンで2台の機関車が衝突し、大破炎上する事故が起こった。“キプトンの悲劇”と呼ばれる米国鉄道史上、最悪の事故の調査を任されたのが、後に〈ボール ウオッチ〉を設立するウェブスター・クレイ・ボールであった。

綿密に調査を進めた彼は、事故の原因が機関士が持っていた時計が4分遅れていたことと、鉄道会社のずさんな時間管理にあることを突き詰めた。そして1893年、ボールは鉄道員が使用する鉄道時計の認定基準「レイルロード・アプルーブド」を策定。自らも〈ボール ウォッチ〉カンパニーを興し、認定基準を満たす高精度な懐中時計で、まだ発展途中だった米国の鉄道網の安全を守った。

「あらゆる過酷な環境のもとで正確な時を告げる」という創業者が掲げたミッションは、現在の〈ボール ウォッチ〉に受け継がれている。そのための耐蝕性に優れる高性能スティール904Lをケース素材に導入。加えて繊細なヒゲゼンマイを金属製のケージで保護し、耐衝撃性を高める「スプリングロック耐震システム」やリューズを保護する「セーフティロック・クラウンシステム」といった独自機構も開発している。

中でも時分針とインデックスに取り付けた「マイクロ・ガスライト」は、ブランドの象徴である。これは、蛍光塗料を内部に塗布したガラスチューブ(カプセル)にトリチウムガスを充填させた自発光システム。畜光を必要とせず、24時間強力に自発光して常に視認を確保してくれる。また高精度であることは、鉄道時計の使命であった。ゆえに現行モデルの多くが、公的機関COSCによるクロノメーター検定の認定を取得。堅牢で見やすく、正確。〈ボール ウォッチ〉の腕時計は、実に頼もしい。

【Signature:名作】エンジニア ハイドロカーボン オリジナル

タフネスを極めたレトロ顔ダイバーズ

「タフ&ディペンダブル」(丈夫で信頼性が高い)という開発精神を突き詰めた、フラッグシップ・コレクションを象徴する一本である。前述した「スプリングロック耐震システム」と「セーフティロック・クラウンシステム」に加え、歩度調整のための緩急針を固定する「スプリングシール」も搭載。

さらにミューメタル(ニッケル鉄合金)製インナーケースと独自の「アモータイザー衝撃吸収リング」がケース内に備わり、8万A/mの高耐磁性能と7500GSの耐衝撃性を兼ね備える。60年代調のレトロ顔だからと、実力を侮るなかれ。

径42.85mm。自動巻き。SSケース。495,000円。

エンジニア ハイドロカーボン オリジナル
ブレスレットのバックルも、独自のタフネス設計。ロックすると、1400N(約140kgf)の荷重にも耐えられる。さらに伸縮可能なエクステンション機能も装備。
エンジニア ハイドロカーボン オリジナル
ダイヤルは、マイクロガスライトを敷いた盤にインデックスをくり抜いたディスクを載せた2層構造。逆回転防止ベゼルの目盛りは、くぼませた中に5層のスーパールミノバ(畜光塗料)を流し込んだ。
エンジニア ハイドロカーボン オリジナル
誤ってリューズが衝撃を受けても、ケース内部にまで影響を及ぼさない「セーフティロック・クラウンシステム」を採用。所定の位置までリューズをねじ込まないとロックできないので、締め忘れのミスも防げる。

【New:新作】エンジニア  マーベライト クロノメーター

レインボーカラーに輝くマイクロガスライト

華やかなターコイズ・ブルーのダイヤルが、タフさが売りの〈ボール ウォッチ〉にあって異彩を放つ。しかしSS素材には904Lを用い、ミューメタルインナーケースによる8万A/mの高耐磁とクロノメーター取得の高精度を誇る。

904Lは、一般的な316Lスティールよりも磨いた後の輝きが白くて強く、その審美性がブレスレットの中リンクに感じ取れる。インデックスには、7色のマイクロガスライトをセット。光が当たった状態でも、自発光する色調が、ほんのりと浮かぶ。

径40mm。自動巻き。904LSSケース。407,000円。

エンジニア マーベライト クロノメーター
ケースバックにエングレービングした蒸気機関車には、創業者の名を掲げている。レトロチックな雰囲気で、どこか愛らしい。
エンジニア マーベライト クロノメーター
暗所では、レインボーカラーの輝きがクッキリ際立つ。用いる蛍光塗料によって色の操作が容易にできるのもマイクロガスライトの強みだ。
エンジニア マーベライト クロノメーター
ポリッシュ仕上げを施したケースとベゼルサイドの白い輝きによる優れた美観は、904Lの真骨頂。しかし加工が極めて難しく、他社の採用例は稀。

Information

BALL WATCH/ボール ウォッチ

創業:1891年
創業地:アメリカ クリーブランド
HP:https://www.ballwatch.co.jp/

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