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地上で一番足が速い動物は?「地上最速動物が別格である理由」を科学的に解説

  • 2025.1.10
地上で最速の動物は? / Credit:Canva

この動画は、YouTubeチャンネル「RED SIDE」が作成した動物の足の速さの比較映像です。

様々な動物たちが「いい勝負」をしている中、チーターが圧倒的な速さを見せつけます。

では、チーターが地上で一番速く走れるのはなぜでしょうか。

科学的に解説します。

目次

  • 地上最速のチーターが別格である理由
  • チーターのサイズは速く走るのにぴったり

地上最速のチーターが別格である理由

この動画が示す通り、地上で生活する動物たちは、足の速さが大きく異なります。

個体差はあるものの、私たち人間は24km/hで走ることができます。

これはアライグマと同じくらいのスピードであり、ゾウに追い抜かれることもあるレベルです。

上位では、ダチョウやカンガルー、ウマが70km/hあたりで「いい勝負」をしています。

そしてガゼルは、100km/h近い速度で走ることができます。

高速道路の法定速度が100km/hであることを考えると、動物たちがどれほど速く走れるか理解できますね。

しかし、これら足の速い動物たちでも、チーターには全くかないません。

チーターは地上で最も足の速い動物であり、120km/h以上で走ることができます。

まさに別格です。

地上で最速はチーター。別格の速度を誇る / Credit:Canva

では、なぜチーターはこれほどまでに速く走れるのでしょうか。

それはチーターの走り方に秘密があります。

チーターは、踵を浮かせてつま先立ちの状態で直立・歩行する趾行動物(しこうどうぶつ)です。

動物たちの中でも、比較的細長い足を持っていますが、このつま先立ちによって足の長さをさらに稼いでいます。

また、踵を浮かせた状態で走るため、爪で地面に力を伝えながら、急な加速や方向転換が可能になっています。

加えて、名古屋大学の2021年の研究では、チーターがもつ独特な飛翔期(走行中に全ての足が地面から離れた状態)に注目しています。

チーターには2種類の飛翔期がある / Credit:上村 知也(名古屋大学)

例えばウマなどは、一連の走行動作の中でも、体を曲げた時が飛翔期となります。

ところがチーターの場合は体を曲げた時と伸ばした時の両方が飛翔期となり、この2種類の飛翔期によって運動の周期が短くなると判明しています。

つまり二種類の飛翔期を生み出すチーターの走り方や足の構造が、「別格の速さ」を作り出していたのです。

そしてチーターの走りの秘密は、その筋肉の働きやサイズにもあります。

チーターのサイズは速く走るのにぴったり

チーターの速さの秘密はサイズにある / Credit:Canva

インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)の2024年の研究では、チーターのような中型動物が最も速く走れる理由を分析しています。

動物界では、強さや手足の長さ、寿命、脳の大きさなどの特性は、動物のサイズに応じて増加する傾向にあります。

しかし、最高速度は中型動物で最も大きくなる傾向があるのです。

この研究に携わったデイビッド・ラボンテ氏は、次のように語っています。

「最も速い動物は大きなゾウでも小さなアリでもなく、チーターのような中間の大きさの動物です。

なぜ走るスピードは、動物の解剖学や行動のほとんどの面に見られる規則的なパターンから外れているのでしょうか」

この点を解明するため、ラボンデ氏の研究では、最高速度と筋肉の関係に焦点を当てています。

そして研究の結果、動物の最高速度は筋肉が「どれだけ素早く収縮できるか」「どれくらい収縮しているか」といった2つの限界によって決まると分かりました。

動物の最高速度は、「筋肉が素早く収縮できるか」「筋肉がどれだけ収縮できるか」の2つの限界で決まり、サイズの影響を大きく受ける / Credit:Canva

前者は、小さな動物であるほど有利です。

例えばネズミは筋肉を素早く収縮させられるため、小刻みに速く動くことができます。

一方後者は、大きな動物であるほど有利です。

「筋肉がどれだけ収縮できるか」とは「筋肉の収縮距離の大きさ」のことです。

筋肉をゴムバンドで例えると、「ゴムバンドがどれだけ伸縮するか」と考えることができます。

大型動物は筋肉が大きいため、収縮距離も大きく、足の1回転でより長い距離を前進できます。

そして研究では、この2つの要素のどちらかが先に限界に到達すると、そのラインがその動物の最高速度の限界になると分かりました。

つまり、小型動物は小さな筋肉しか持たないことですぐに最高速度の限界に達し、大型動物も筋肉の収縮速度が遅いことで、すぐに最高速度の限界に達するのです。

だからこそ、両方の特徴を程よく持つ中型動物が、一番大きな最高速度を有します。

研究チームも、「チーターくらいのサイズの動物は、2つの限界が一致する約50kgの物理的なスイートスポットに位置します」と述べており、これがチーターが速く走れる理由の1つだと分かります。

チーターは、他の動物たちとは別格の速さを持っています。

それは、チーターの独特な走り方や、走るのに適切なサイズであることが関係しているのです。

参考文献

Cheetahs’ unrivaled speed explained by their ‘sweet spot’ size, study finds
https://phys.org/news/2024-03-cheetahs-unrivaled-sweet-size.html

チーターはなぜ地上で最も速く走れるのか? ―体幹の曲げ伸ばしによって高速走行を実現するメカニズムを数理モデルで解明―
https://www.nitech.ac.jp/news/press/2021/8979.html

元論文

Dynamic similarity and the peculiar allometry of maximum running speed
https://doi.org/10.1038/s41467-024-46269-w

Dynamical determinants enabling two different types of flight in cheetah gallop to enhance speed through spine movement
https://doi.org/10.1038/s41598-021-88879-0

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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