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突然声が出なくなった。明るい夜で寂しさを埋めようとした23歳の私

  • 2025.1.10

2年前。23歳の私は爆音の音楽とその華やかさに魅了され、クラブによく通っていた。
お酒の力も借りて初対面の人とも旧友かのように楽しく過ごした。平日休日問わず足を運び、終電で帰宅。あれこれして3時間も眠れれば十分。
若さがゆえの時間と体力を目一杯利用した日々を送っていた。
夜も忘れるほどの明るさの中で、今思うと自身の寂しさを埋めようとしていたのかもしれない。

◎ ◎

当時の私は社会人になって実家を出て、家族ともなかなか会えず、彼氏もいなかった。
学生時代の1番の友達は他県に引越してしまい、その他の友達は環境の変化とともに疎遠になった。
きっと、とても人恋しかったのだと思う。

そんな自分の気持ちに気づかずに10ヶ月ほどが経った、12月中旬。
冬ってこんなに寒かったかと、毎年のように新鮮に思っている頃。クリスマスに正月と、なにをする予定があるわけでもないのに気持ちがそわそわするそんなある日。

朝、急に声が出なくなった。文字の通り、本当に自分の喉から当たり前に出せていた声が出なくなった。

◎ ◎

慌てて上司に連絡してお休みをもらい、病院へ行った。診断結果、声帯結節。文字を書きすぎて手にペンだこができるように、声帯がかたくなり上手く働くなっているそうだ。
ただしこの原因は不明。クラブのモクモクとこもったタバコの煙かもしれないし、騒がしい中で大きな声で話をしていたからかもしれない。冬の寒さや乾燥も要因にはなるそうだ。
なんににせよ、治療法は安静一択。

仕事も必要以上に喋らないよう、ほぼ1ヶ月在宅勤務に切り替えてもらった。ホワイト企業でありがたいが、クラブどころか職場にも行けなくなった。表現できない孤独感を感じた。

その反面、どこか期待を持っていることも感じていた。
それはまるで散らかった部屋を見て、今日こそは綺麗にしようと奮起する。そして模様替えをして、こんなインテリアを……と掃除グッズやキャンドルを購入する感覚。
現状はなにも変わっていないのに、未来への想像が気持ちを昂らせる。

◎ ◎

とにかく時間ができたので、お気に入りの本、読んでみたかった本を全部読んだ。
退屈さよりも、ずっとフワフワしていた実体のない気持ちが落ち着いた。もうクラブへは行かないだろうなと漠然と思った。飽きたわけではない、楽しさがわかってもう満足した感覚だ。
そして自分に時間を使っていることに幸せを感じた。

お風呂、栄養満点の食事、ストレッチ、読書とハーブティー、アロマ、そして睡眠。
落ち着いていると、自然と自分が何を求めているのかがわかる。
これらが私の体も心も満たしてくれる。
寂しさは自分の内面で感じている感情だから、自分自身で満たさなきゃいけないのだと学んだ。どんなに華やかな外の世界、家族、友人……それらもいいけど、自分の心は自分でしか満たせないものがある。

◎ ◎

そして25歳の今。気づいたら職場で新しく友人ができ、大切なパートナーにも出会えた。

声が出なくなる前に、爆音の音楽ではなく、小さな自分の心に耳を傾けてあげる大切さを身をもって知った。

■おおぞらのプロフィール
人といる時間に幸せを感じます。でもそれと同じくらい自分の時間も必要なタイプです。 世界平和は無理でも、私と関わる人だけはずっと幸せでいてほしいと心で思っています。

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