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謳歌するお一人様。この寂しさを後悔しないのは、彼を愛しきったから

  • 2025.1.10

4年ぶりに晴れてフリーになった。それを知る私の数少ない友人や家族は、新しい彼氏作らないの?とか寂しくならない?と聞いてくる。正直、全く寂しくないかと言われればそんなことはない気がする。気がするとしか言えないのは、私がお一人様を案外謳歌しているから、また、私が決めた道に後悔するのは論外だという自分の考えがあるからだ。

◎ ◎

フリーになって、一番すかっとしたのは、研究室の飲み会に行ったり、異性と話したりする時に、何も後ろめたく思う必要も、自分で線引きをする必要もないと感じた時だった。4年付き合っていた人は、そういう点に口を挟む人ではなかったけれど、言わないだけで心の中で何も思っていないわけではなかったのは伝わっていたし、自分の良心の問題もあった。
私は飲み会のような大勢でワイワイする場所が好きではないけれど、なんの気兼ねもなく飲めるお酒は、いつもより少し美味しかった。

それに、遠距離恋愛のために消えていた交通費や時間も浮くようになり、その分自分の生活は豊かになった。
試供品でもらって、その香り高さを忘れられなかったけれど、お値段も高くて手が出せていなかった紅茶の茶葉を買った。休日に彼は苦手だったマドレーヌを焼いて優雅にティータイムを楽しんだ。たっぷり入れた2杯分の紅茶は、私が全部飲んだ。

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彼に気を遣ってデート中は入らないようにしていた女子向けの雑貨屋ものんびりまわった。青と紫の幻想的なポスターに吸い寄せられて、ある香水に出会った。ほんのり甘く、鼻にツンとこない優しい爽やかさもある、不思議な香水だった。キャッチコピーは自分の時間をもっと豊かにというもので、今の私にピッタリだった。

香害になりたくないのと、香りを纏うと自分の存在を際立たせるようで、外にそれをつけて出る勇気はないが、別にいい。だって、私が好きな香りで、私が自分を大切にするために買ったのだから。私はそれを家でのんびり過ごす休日に、香りのベールがふわりとベッドに降りかかるよう山なりに振りかけるようになった。

真夏にキャミソールで寝たっていいし、真冬に何枚も配色なんて無視した重ね着をして暖を取っても誰も見る人はいない。

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全部自由だ。時々はああ、自分独りだなと思うこともある。私は彼のある部分が許せなくなってしまったから別れを選んだけれど、彼の全てを嫌いになったわけではなかったし、決して、彼を恨んでいるわけではないから。でも、私の選んだ寂しさを後悔したことはない。私はどうやら彼を愛しきってしまったようだから。

だから次は自分をもっとちゃんと愛してみようと思う。もっと自分の声に耳を傾けて、相手に感じた疑問や違和感をぶつけなくとも、自分自身は、その気持ちに蓋をする前に聞いてあげたいと思う。だってきっと、自分のことすら愛せない人は、別の誰かを愛せないだろうし、私が愛せた人からも、愛そうと思ってもらえないと思うから。でも、次はもっと緩く愛そう。自分を愛しきったと言うのは、何十年後かのベッドの上がいい。

■なつめの抹茶のプロフィール
料理と茶道が好きな女子大生。
いわゆるリケジョだけど、言葉を紡ぐこと、紡がれた言葉を読み解くことも大好きです。

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