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宇宙天気予報とは? 太陽フレアなどの太陽活動がもたらす現象・地球への影響も解説

  • 2025.1.10

2024年は太陽活動が活発だったこともあり、太陽フレアが複数発生し、磁気嵐が生じて日本各地でオーロラが観測されました。

太陽フレアは美しいオーロラを作り出す一方で、人工衛星の障害やGPSの誤差などを引き起こす可能性もあります。

太陽フレアをはじめとする宇宙天気現象は、「宇宙天気予報」で実況解説や予想が行われています。

今回は宇宙天気現象がもたらす影響や、宇宙天気予報の見方を解説します。

宇宙天気予報とは

宇宙天気予報とは、「国立研究開発法人 情報通信研究機構 電磁波研究所 宇宙環境研究室」が運営する、宇宙環境の変動を予測する情報サービスです。

太陽からは有害なX線や紫外線など、様々な電磁波が放出されています。

ただし、太陽から放出されるすべての電磁波が地球に届くわけではありません。地球を取り巻く大気や磁場が防護壁となり、有害な電磁波が地球に届くのを防いでいます。

しかし、太陽活動が活発になると地球のそばまで有害な電磁波が届き、これによって人工衛星や宇宙ステーションの運用に影響が生じることがあります。

このような自然現象を宇宙天気といい、その現状把握や予測を宇宙天気予報といいます。

宇宙天気予報の対象となる現象

宇宙天気予報は、太陽フレアをはじめ、様々な現象について現状を把握し、予測するものです。

宇宙天気予報の対象となる現象や被害について解説していきます。

太陽フレア

太陽フレアとは、太陽の表面で起きる大規模な爆発現象です。

黒点といって、周囲よりも温度が低く磁場が強い領域でときどき起こります。

太陽フレアが発生すると、太陽大気のガスや人体に有害な高エネルギーの粒子、大量の放射線などが発生します。

なお、太陽フレアで発生した一部の電磁波は約8分で地球に到達します。

太陽フレアが発生すると、以下のような被害が起こる可能性があります。

・短波通信の障害

・低緯度衛星の軌道変化

・GPS測位の誤差

・航空機の航路変更

また、宇宙天気予報では太陽フレアのレベルを4段階で予想しています。

レベル3になると何らかの影響が出る可能性があり、レベル4になると大規模な影響が生じる可能性が高くなります。

プロトン現象

プロトン現象とは、太陽から放出される高エネルギーの陽子線の強度が突然強まる現象です

太陽フレアに伴って起こる場合が多く、プロトン現象に関係した太陽フレアをプロトンフレアと呼ぶこともあります。

航空機の航路変更や人工衛星の障害、通信機器の障害などを引き起こす可能性があります。

地磁気擾乱

地磁気擾乱(じょうらん)とは太陽フレアによって放出されたプラズマ雲や、コロナホールからの高速太陽風によって地磁気が乱れる現象をいいます。

特に規模が大きな地磁気擾乱を磁気嵐といいます。活発な磁気嵐はオーロラの原因となり、人工衛星に被害を及ぼす可能性もあります。

地上においても、送電線に大きな電気が流れて送電設備が故障する被害が生じる場合があります。

放射線帯電子

磁気嵐が発生した際に、宇宙にある放射線帯と呼ばれる部分の電子が増える場合があります。

放射線帯電子が増えると、衛星内部の半導体やケーブルの被膜に内部帯電を引き起こし、衛星搭載機器の誤作動や故障の原因になります。

電離圏嵐

電離圏嵐とは、電離層の中におけるF領域(高度150km~1,000km)と呼ばれる領域において、通常よりも電子密度が減少したり、増加したりする現象です。

電離圏嵐は磁気圏の乱れが生じた際に起こります。

電離圏嵐が生じると、アマチュア無線や国際放送、遠洋の船舶通信などの短波通信に影響が生じることがあります。GPSの障害が生じる場合もあります。

デリンジャー現象

デリンジャー現象とは、大規模な太陽フレアによって高度60km~90kmの電離圏の電子密度が異常に高くなる現象です。

強いデリンジャー現象が発生すると、短波通信障害が起こったり、ラジオが聞こえなくなったりし、その状態が数時間ほど続く場合もあります。通信障害により、航空機の航路が変更される場合もあります。

スポラディックE層

スポラディックE層とは、高度約100km付近の電離圏において局所的、かつ突発的に電子密度の高い部分が生じることです。

通常、電離層で反射されないFM放送などのVHF帯の電波が反射されて異常伝播し、混信が発生する場合があります。日本では、春から夏の昼から夕方にかけて発生しやすい特徴がありますが、詳しいメカニズムは解明されていません。

宇宙天気予報をチェックしよう

情報社会の現代では、通信機器や人工衛星の被害は、日々の活動に大きな影響を与えます。磁気嵐が生じて送電線に大電流を流すと、大停電を引き起こす可能性もあります。

一方、太陽活動が活発になると美しいオーロラが発生する場合もあります。

宇宙天気予報は、太陽活動によって起こる被害に備えたり、オーロラの観測をしたりなど、様々なシーンで役立ちます。ぜひ、チェックしてみてください。

〈執筆者プロフィル〉

田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

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