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【シリーズ50代からの転職】49歳で突然の失業で「介護職」に。資格取得の苦労

  • 2025.1.9

50代前後で転職した女性たちの、仕事内容と収入をつまびらかにする連載「50代からの女性の転職」。50代を目前に介護職に転職したKさん(62歳・静岡県)のケースをご紹介する2回目は、具体的な転職の方法や転職後の体験談について伺いました。

突然の失業……その後、異業種の「転職先」を見つけるまで

Kさんのテキスト
Kさんが勉強したテキスト

◆第1回目「異業種の「介護職」に50歳目前で転職をした理由」を読む

前職では、パート社員として勤めていた会社の事業所が閉鎖になり、転職を余儀なくされました。

パート社員とはいえ、勤務時間や勤務日数は正社員と同等で、雇用保険、健康保険などが適応される「準社員」のようなポジションでした。さらに、「自己都合」ではなく「会社都合」での退職だったので、すぐに失業給付金が支給されました。

そこで、給付金の支給期間に、ハローワークで紹介を受けた公共職業訓練を利用して、専門学校で介護の講座を受けることにしました。受講料はかからず、教材費のみだったので「いずれ役に立てばいいな」という気持ちで。介護の知識を勉強しながら、要介護者の入浴・排泄・食事等の生活支援に関する実習などを行いました。
当時は、実習30時間を含めた講義を修了すると、「ヘルパー2級」(現在は廃止。2013年に「介護職員初任者研修」※に変更)を取得することができました。

資格を取得してまもなく、知人から「私が働くデイサービス施設で人を探しているから、試しに来てみない?」と言われたことがきっかけで、働くことになりました。

慣れ親しんだ職を失ったときには、「これから新しい職をどうやって見つけよう」という不安がありましたが、偶然にも縁があったので、職を見つけること自体はさほど大変なことではありませんでした。

「介護福祉士」の資格を取得し、キャリアアップも

Kさんのノート
Kさんのノート

介護職の仕事内容を始めた頃は、とにかく毎日クタクタで、もしかしたら長く続けられないかもしれないと思っていました。でも、あっという間に5年間がたちました。

最初はフルタイムのパート社員として働いていましたが、「同じフルタイム勤務なら、より給与がいい働き方を」と考え、施設長と相談して生まれて初めて正社員になりました。

そして「介護福祉士」の試験を受ける資格が得られたので、チャレンジしてみることにしました。筆記試験と実技試験があるため試験の8カ月くらい前から仕事が休みの日に3時間ほど勉強しました。平日は仕事で疲れてしまうし、休日は家事と高齢の義母のケアがあり、自宅にいるとどうしても集中できないので、図書館に通っていましたね。

どれだけ一生懸命勉強しても、介護福祉士の試験は、1年にたった1度。
初めての受験時には、筆記試験はほぼ満点で合格しましたが、実技試験ではものすごく緊張して落ちてしまいました。

でも、落ち込んでなどいられません。当時、私の実務経験ですと6万円くらいの受講料を払って、介護技術講習会を受講すると実技試験を免除されることになっていたので、次回の試験のために思い切って受講することに。電車で片道1時間半かけて4日間の講習に通いました。

2度目の試験では、筆記試験のみで、無事合格。ようやく介護福祉士の資格を取得することができました。今は「生活相談員」の仕事も任されるようになり、少しですが、給料が上がりました。

現場では体力を使う仕事が多く、年齢的なことを案じて、デスクワークが多い「ケアマネージャー」の資格を取ろうか考えたこともあります。でも、私は利用者と接する現場が好きなので、取得は見送りました。

転職後つらかったこと、うれしかったこと

介護職

介護の仕事を始めたばかりの頃は、帰宅後に家事をしたら、クタクタになって居間のこたつで気絶したように眠ってしまう日が続きました。やめようと思ったことは1度ではありません。

ところが、いくら経験を積み重ねても「まだ足りない」と思えるような奥深さが介護の仕事にはあります。入浴介助中に利用者さんの「あぁ、気持ちいい」という声を聞いたり、「ここに来てよかった」という言葉をかけてもらったりすると、喜んでもらえたことに大きな喜びを覚えるようになっていました。

つい先日、よく来ていた利用者さんのお葬式に行ったら、家族の方から「おじいちゃん、いつもデイサービスに行くのを、すごく楽しみにしていたんですよ」って言われて、思わず胸が熱くなりました。

もちろん、中にはわがままなご利用者さんもいますよ。最初は戸惑いましたが、その人の生い立ちとか生活環境を、だんだん想像するようになりました。ご利用者さんとご家族との関係を垣間見ることで、相手に共感をしてしまうこともあります。正直、「もっと家族が自宅でケアしてあげればいいのに」と思うケースもありました。でも、実生活で私自身が介護を経験してからは「利用者さんを預かっている間に、在宅で介護をする家族に安らぎの時間を持ってほしい」と思うようになりました。

介護の仕事は「3K(きつい、汚い、危険)」などと形容されることがあります。でも、それは誇りをもって働いている私にとっては悲しい言葉です。確かに、排便介助を行うことは業務上当たり前のことです。でも、便秘中の利用者さんがちゃんと排泄できたとき、「いい便が出てよかったね。気持ちよかったね」と一緒に喜びを分かち合えるんです。なんだか、子育てと通じるものがありますよね。

私は、現場での触れ合いにやりがいを覚えています。今は、体力が許す限り、この仕事を続けたいと思っています。

次回は、転職前と転職後の収入の違いについて伺います。
 

取材・文=北川和子

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