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新川優愛 × 塩野瑛久によるドラマもスタート!“他人のフリ”をする夫婦による、もだもだラブコメ『五十嵐夫妻は偽装他人』<海石ともえインタビュー>

  • 2025.1.8
ダ・ヴィンチWeb
『五十嵐夫妻は偽装他人』(海石ともえ/KADOKAWA)

2025年1月8日(水)よりテレ東系にて放送スタートする新ドラマ『五十嵐夫妻は偽装他人』。これは拗れた夫婦の奇妙な関係をコメディタッチに描く、注目作だ。原作は海石ともえさんによる同名タイトルのマンガで、現在、第4巻まで発売されている。

物語の主人公は会社員の会沢真尋。とある事情で転職した彼女は、新しい職場で楽しい日々を過ごしていた。しかし、そこにひとりの男が現れる。彼の名は五十嵐直人。その姿を見た真尋は固まってしまう。なぜならば、直人は真尋の別居中の「夫」だったのだ。

ふたりが不仲により別居をしている夫婦だとバレてしまったら、職場の同僚たちは気を使うはず。気持ちよく働くため、真尋と直人は他人を装うことを決めるものの、それによって事態はどんどんややこしい方向へと突き進んでいくことに……。

「他人であると偽装する」という異色の設定からスタートする本作は、どのように生まれたのか。アクが強い登場人物たちを描く上で意識していることとは。ドラマ化に合わせて、原作者の海石さんにお話をうかがった。

■不完全なところのある男子のほうが魅力的

――「偽装他人」というあまり耳馴染みのない単語に惹かれる人が多いかと思います。

海石ともえ(以下、海石):ありがとうございます。元々、オフィスラブをテーマにした作品が多いところで描いてきたこともあって、今回も「オフィスラブで」とリクエストをいただいたんです。じゃあ、どんなものにしようかと考えた結果、両片思いのケンカップルにしようかな、と。それをベースに担当さんと話し合うなかで、最近よく聞く「偽装結婚」の反対である「偽装他人」というワードが浮かんできたんです。

非常にキャッチーな言葉ですよね。ただ、その響きだけでなく、ストーリー展開としても常に引きがある作りを目指しています。毎話、読者の方々に「次はどうなるんだろう」と思ってもらえるように心がけているんです。でも、これは反省点でもあるんですが、あまりにも引きを意識しすぎるあまり、ちょっとじれったくなりすぎてしまったのかなとも思います。

――そのじれったさこそが本作の魅力だと思います! 特に直人は、本心では真尋のことを思っているのに、それを表に出しませんよね。見た目と中身のギャップに驚かされました。

海石:そうなんです。そもそも直人は、読者にも喜んでもらえるようなイケメンのハイスペック男子に見えるように描いています。ただ、私自身はハイスペ男子にあまり魅力を感じないんです。どちらかというと、ちょっと不完全なところがある男子のほうが好きで。なので、直人にはそれを搭載しています。

――直人の不完全なところとは?

海石:後先を考えているようで考えていないというか、詰めが甘いところですね。私、子どもがいるんですけど、子どもって理想と現実の壁にぶつかると、「本当はこんなんじゃなかったのに!」ってアワアワするじゃないですか。そうやって少しずつ成長していきますし、そんな様子が可愛くもある。直人にはそういった少年っぽさを反映しています。

――一方で真尋は非常に真っ直ぐで、読者から親しみを覚えられそうなキャラクターです。

海石:直人以外にも真尋の周囲にいるのは個性が強すぎるキャラクターばかりなので、彼女には中庸さを意識しました。人ってその時々で価値観も考え方も変わっていきますよね。そんな当たり前な部分を投影しながら、等身大の女性に見えるように意識しているんですが……だからこそ、実は真尋を描くのが一番難しいですね。ただ、「家事が完璧にできない」「セックスレスで悩む」というように、読者も抱くであろう悩みを入れているので、より近しい人物として感じてもらえたら嬉しいです。

――真尋と直人の関係はただでさえ拗れているのに、そこに真尋の営業ペアの瀬戸や、直人に思いを寄せる美羽が加わることで、事態はより複雑になっていきます。

海石:通常の少女マンガだと、ヒロインの危機にはヒーローが駆けつけます。本作でいうならば、真尋が困っているときには直人が助けるべき。でも、ふたりをくっつけるのはまだまだ先だと考えているので、そのヒーローとしての役割を担うのが瀬戸なんです。だから、私の周りの人たちはみんな瀬戸が大好きで、逆に直人の好感度はどんどん下がっちゃっています(笑)。

とはいえ、瀬戸の言動によって直人は自分自身を振り返ることにもつながるので、直人にとっても瀬戸は重要な人物ですね。

一方で美羽は真尋にとっての強力なライバルです。直人を手に入れるために真尋を貶めたりと、ある意味、気持ちいいくらいやりたいことをやってくれるキャラクターなので、楽しく描いています。4人のなかでは美羽が一番好きなくらいです。マンガ家って、悪者を描いているときがすごく楽しいんですよ。

――美羽はたしかに悪者ではあるものの、実は家庭に複雑な事情があることが垣間見えるので、嫌いになれないですよね。

海石:そうそう。美羽は美羽で抱えているものがあるので、絶対に不幸にしないぞと決めています。最初は悪者として登場した彼女が、最後にどう救われるのかも読みどころのひとつかもしれません。

■結婚に必要なのは、価値観の違いを許し合うこと

――瀬戸や美羽の存在によって真尋と直人の関係はどんどんややこしいことになっていきますが、作者としても「じれったいから、早くくっつけちゃおうかな」と思う瞬間もあったりするんですか?

海石:それはありますね。いい加減、もうくっつけちゃおうと思った瞬間は何度もありました。両片思いを終わらせて、あとはイチャイチャな展開にもっていってもいいのかなって。ただ、やはりもう少しもだもださせて、「最後はどうなるんだろう」と思いながら読んでもらうほうが面白いんじゃないかという結論になって、我慢しています。

――付かず離れずの距離感を描きながらも、時折、芯を食うような描写が登場します。たとえば、真尋が直人と水族館を訪れるエピソードでは、仕事の相性と結婚のそれとは違うのかもしれないと考えさせられますね。

海石:誰もが社会での顔と家庭内での顔の違いを持っているじゃないですか。どれだけ会社でしっかりしているように見えても、家のなかではぐうたらしてしまったり、その逆も然り。そのあたりは結婚してみないとわからないのかもしれない。それこそ、食器を洗う頻度やお風呂に溜めるお湯の量の違いによってすれ違うこともある。だから、「どこまで価値観が合うかどうか」で交際や結婚相手を選ぶ方も多いのではないかと思います。

ただ、真尋と直人の関係を描く上で意識しているのは、最初から価値観が合うことの重要性ではなく、「お互いの価値観を許し合えることの大切さ」です。無理に合わせるのではなく、合わせられない部分をいかに許せるかどうか。夫婦ってお互いにどれだけ譲歩し合えるかが大切だと思いますし、実際、私もそうやって夫と過ごしてきたので、それを表現したいな、と。

――許し合う、譲歩し合うというのは重要な考え方だと感じます。ところで本作はこの1月から実写ドラマ化もされますが、映像化のお話をもらったとき、率直にどう思われましたか?

海石:最初にドラマ化の話が来ていると聞いたときは、半分聞き流していたんです。どうせ実現するわけないでしょ、って思っていたので(笑)。それがどんどん具体的になっていって、正式に決まったときには「本当だったんだ……!」と驚きました。すごくありがたいですね。

――ドラマ化にあたって、なにかリクエストされたことはありますか?

海石:第一話の脚本を読ませていただいたときに、真尋と直人のケンカップルとしてのやり取りが非常に楽しく書かれていたので、今後もこの楽しい掛け合いを入れてくださいとお願いしました。それと先程もお話ししたように、私は美羽が大好きなので、ドラマのなかでも彼女を嫌な奴として終わらせないでほしい、というお願いもしましたね。

――真尋役には新川優愛さん、直人役には塩野瑛久さんが起用されました。

海石:もう最高の一言です。実際に撮影現場も見学させていただいたんですが、みなさん和気あいあいとしていて、だけどプロフェッショナルで、絶対に面白いドラマになるなと確信しました。

そして、今回のドラマをきっかけに原作にも興味を持ってくださる方がいるならば、パタパタと展開していって面白く読めるように意識しているので、ぜひ楽しんでくださいとお伝えしたいです。真尋、直人、瀬戸、美羽の4人は最初はギクシャクするものの、それぞれの関係が徐々に変わっていきますので、そこも注目していただければ幸いです。

取材・文=イガラシダイ

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