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木工作家・内田悠の木目の表情を生かすウッドターニング

  • 2025.1.9
木工作家・内田悠の工房

高速回転する木工旋盤で、イタヤカエデの材を削り出す。削り屑がびゅんびゅん飛び散って、黒いTシャツがあっという間に木屑まみれ。4年先まで個展や納品が決まっているという内田 悠は、岐阜の高山で木工家具の技術を学んだ後、地元・北海道三笠市に戻ってきた人気木工作家だ。

住居も兼ねる工房は、周辺に15ヘクタールの農地が広がる土地の木造平屋棟。現在は、ウッドターニングと呼ばれるアメリカ発祥の手法で、木のリム皿やトレーを手がけている。

木工作家・内田悠の作品
染色した木目が美しいイタヤカエデのリム皿。ごく軽く、洗う時の手が気持ちいいのも魅力。

「回転する木の表面に、ガウジという刃物を当てて削ります。刃物を砥ぐのは日に4回。ちゃんと砥ぐと気持ちいいし仕事がはかどるんです」

木の器というとノミ跡を残したものも多いけれど、内田はするんときれいに削り上げる。その滑らかな木肌にもうっとりするが、わずか1mmほどに削り立てた極細の「縁」に、指の腹が引っかかる感覚が心地よい。

「古いものが好きですね。例えば北欧の古い木皿の、丸くふっくらしたリムと、シャープな縁のコントラスト。そういう美しさを自分なりに解釈し、表現できればと思っています」

「イタヤカエデは木目に個性があり、染めると表情が際立ちます」

木工作家・内田悠の工房
直径18cmの盆。奥は柿渋で茶色に染めたもの。手前は染色せず蜜蝋とエゴマ油で仕上げたもの。
木工作家・内田悠の工房
旋盤作業に使う刃物。
木工作家・内田悠の工房
工房の壁には気分転換用のバスケゴール。
木工作家・内田悠の工房
染色や仕上げ作業用の小部屋。

道産の木を使い、木目の美しさを何より大事にする内田だが、その器は色合いも大きな魅力。例えば薄墨色のリム皿は、草木染めで使う鉄媒染液を用いて、鉄分と木のタンニンを反応させて染色する。染めて乾かす工程を3度繰り返した後、ガラス塗料をかけて仕上げるのだ。

ゆえに洗うと一瞬で水をはじき、木肌の上の丸い水滴はリネンで即座に拭き取れる。木の美しさを堪能でき、磁器やガラス皿のように扱いやすいリム皿やトレーは、すでに海外でも注目され始め、忙しさは増すばかり。

「だから、旋盤で仕上げる前の下準備など、ある程度の作業まではスタッフでもできるようにしています。仕事だけに追われるのでなく、表現するための手は少し空けておきたいんです。この仕事を始めたきっかけも、木という素材に惹かれ、木の魅力を伝えたいと感じたこと。木の器が持つ“広く伝える力”も面白いけれど、家具作りも続けたいし、アート制作にも興味があります」

木工作家・内田悠の工房
アメリカ製の木工旋盤が並ぶ工房。回転する木塊に刃物を当てながら削っていく。

2022年は工房と同じ建物内でショップ&カフェ〈緑月 Mitsuki〉もスタートした。店には内田の器や家具のほか、自身が選んだ作家の陶磁器やガラスも並ぶ。職人的に道を究めるのは向いていないかも、と笑う内田は、手元だけを見つめるのではなく、少し先の広い世界を眺めている。

「何を作るにしても、ずっと木と離れず、木と関わり続けるだろうなって。それだけは自信があるんです」

木工作家・内田悠の家具が並ぶショップ&カフェ〈緑月Mitsuki〉
工房と同じ建物には内田の家具が並ぶショップ&カフェ〈緑月 Mitsuki〉もオープン。カフェには妻の美帆が立つ
木工作家・内田悠の住居 外観
近くに湧き水の池もあるという自然豊かな土地。内田夫妻と長男長女の4人家族で。
木工作家・内田悠の工房のテラス
工房と店の間に設けた眺めのよいテラス。
木工作家・内田悠の住居内
建物の奥には住居も続く。愛猫のダイズが寝ているのは、内田が高山での修業中に初めて作った椅子。

profile

内田 悠(木工作家)

うちだ・ゆう/1985年北海道生まれ。東京のイタリアンレストランなどに勤務後、岐阜・高山の〈森林たくみ塾〉で木工家具の技術を学ぶ。2017年に北海道三笠市で工房を構える。

Instagram:@yuchidauu

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