無駄な毛ほどしぶとく、必要な毛ほど抜ける。「毛」との闘いは続く

「毛」というのは不思議なものである。
ある箇所の毛は育てられ、ある箇所の毛は毛根からぶち抜かれ、生えてるときはもてはやされるが、抜けたらゴミとして扱われる。

私は夏が苦手だ。涼しい服装はたいてい脇、腕、脚が出ているから。
脇毛が見えてしまうかも、腕の毛ボーボーだな、脚の毛ぴょろっとだけ残ってた、などと毛が気になってしまうので、服装選びやお風呂がしんどい。
毎日剃ったら毛が濃くなるかもしれないけど、生えかけの黒いのも嫌だし、と剃り続けていた。

◎ ◎

家族は毛が薄いので「腕の毛なんて剃ったことないよ」「そんな気にするほどみんな見てない」などと言ってくるが、そういうことじゃないんだよ！！！！！！！
人の目を気にしてるんじゃなくて、毛が生えてたら自分が気になっちゃうんだよ！！！！！！
半袖を着ていて自分の腕を見たときに毛がそよいでいると気になるし、でも剃ったら剃ったで、体にボディクリーム塗るときにチクチクする。

守る必要のあるところだけに毛を生やしておいてくれよ……と絶望していた私に、救いの手を差し伸べてくれたのは友人だった。
「脇の毛を焼きに行かない？」なんて不穏な誘い文句なんだ。
話を聞くと、医療脱毛で脇の脱毛をしにいこうという誘いだった。医療脱毛はとても高額なイメージだったが、脇だけはキャンペーンで安かった。確か6回で500円、無制限で3000円弱、みたいな値段だったと思う。
私は迷わず無制限コースにした。6回なんかで終わるわけがない。己の毛根のしぶとさを舐めてはいけない。

◎ ◎

そして初めての医療脱毛。
今まで見たことないタイプのアイマスクをつけられ、めちゃくちゃに冷えたジェルを塗られ、いざレーザー照射。
いっっっっっったい！！！！！！！絶対焦げてる、匂いヤバい！！！！！！
えっ、なんか私の脇燃えてない？！？？！？！これまだもう片方するの？！もう無理です先生！！！！！！！！
と心の中で騒ぎ倒してなんとか耐え、無事に脇の毛を焼いてもらった。

これだけ痛かったのに効果なかったら本当にどうしてやろうかと思っていたが、数日後にふと脇を見ると、ちょろっと生えた毛がぽろっと取れた。
今までこんなことはなかったし、毛の生えてくるスピードも明らかに遅くなっていたので本当に感動した。

2回目以降の照射では痛みがマシになると聞いたので安心していたのだが、痛くなくなったのは6回目くらいからだった。
お気づきだろうか、やはり6回なんかで終わるわけなかった。しかし確実に、生えるスピードは格段に遅くなっているし、生えてくる毛も細く薄くなってきている。

◎ ◎

医療脱毛に全幅の信頼を置くようになった私は全身脱毛も契約した。
脇と比べるとめちゃくちゃ金額が大きくはなったが、今まで悩んでいた毛を確実に減らせるなら必要経費だ。

そして初めての全身脱毛。まずは脇から。うん、薄くなってるのに未だに痛い。いつものことだ。
次は腕。……あれ、痛くないぞ？腕は薄いし細いからかな。次は脚。……ここもそんな痛くないな。次はお腹。くすぐったいけど痛くはない。と考えているうちに、全身ぐるっと進んでいき、終わった。
脇が一番痛いんかい！！！！！！！！！！！！！！！と叫ぶのを我慢した自分を褒めたい。

今の私は何も気にせずノースリーブを着れちゃうし、ボディクリームもするする塗れる。毛がないの最高！
と書いている机の上には、まつげ美容液と頭皮マッサージャーがある。

無駄な毛ほどしぶとく、必要な毛ほど抜ける。これが世の理。

■みーこのプロフィール
現実と非日常の反復横跳びに勤しむ会社員。