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厳しい現実社会を生きる今、叶うならもう一度ファンタジーの世界へ

  • 2025.1.7

私は昔、サンタ・クロースの存在を心から信じていた時期がありました。それは確か小学校4年生くらいまでだったでしょうか。

当時は12/24のクリスマスの夜は飾り付けされたツリーを尻目にチキンやケーキといったご馳走を食べ、特番の歌番組などを家族で眺めながら楽しいひと時を過ごしていたのですが、食事も終わりお風呂に入ってさて就寝、となった際にはもうドキドキが止まらず布団に入った後も中々寝付くことができませんでした。

この後自分の元に贈り物を届けるサンタ・クロースがやって来ると信じて疑わなかったからです。

◎ ◎

毎回ギリギリまで起きてその姿を一目見てやろう、と意気込むのですが結局睡魔には勝つことができず、気付いた時には眠りに落ち、翌朝ハッと意識が覚醒した際には部屋の隅にポツンとラッピングされたプレゼントが置かれている、という事の繰り返しでした。
普通、サンタさんがプレゼントを置く場所といえば枕元のような気がしますが、当時私は両親と3人川の字で和室に寝ており、ベッドではなく敷布団、そして頭の後ろはタンスという足の踏み場がかなり限られた空間であったため、彼から届くプレゼントは毎年和室の入口の襖の前に置かれていました。

そのため、25日の朝に目覚めて少し視線を部屋の隅に移すと、そのプレゼントが目に入ったのです。

すっかり心が汚れてしまった現在では考えられない事ですが、当時はそのプレゼントがある周りの空間だけ自分が普段生きている場所とは一種異なる特殊な空気、時間が流れているような気がしてなりませんでした。
目覚めてプレゼントを発見したら歓喜のあまりすぐに飛びかかって中身を確認したい筈なのに、そこに漂う何ともいえない異世界の独特な空気に怖気ずいて中々手を出せない、といった葛藤があったのを今でもよく覚えています。

◎ ◎

それくらいサンタさんが存在する世界を信じて疑わなかったというのに、どの段階でその真実を知ってしまったのか自分でもよく覚えていません。しかし、ある年のクリスマス、一瞬あれ?と不思議に思ってしまうような出来事が起きた時がありました。

サンタ・クロースが子供の元に訪れるのは24日の夜から25日の朝にかけてという事になっていますが、一度だけ2日連続で部屋にプレゼントが置かれていた事があったのです。
1日目は通常通り25日の朝に自分の欲しかったゲームのソフトの入ったラッピングされた箱が置かれており、それで終わりかと思いきやまさかの次の日起きた際にも同じ場所に梱包された袋が置かれていたのです。

その中身は、確か当時小学生の間で流行っていた図鑑のようなものであったと思います。

それを目撃した時は嬉しさよりもまず驚きの方が勝り、あれ、なんで今日もあるんだろう……?と子供ながらに疑問に思った事を覚えています。

◎ ◎

その時はサンタさんは1年間良い子で過ごしていた子供の元に訪れ、言う事をきかない悪い子の所には来てくれない、という話を半ば信じていた事もあり、きっと私がよっぽど良い子であったから2日連続で来てくれたんだ!という物凄く自分に都合の良い考えをもち勝手に合点していたのです。

しかし、その時くらいから同じクラスの中でもサンタさんはいる派、とあれは普通に親派、で意見がざっくり分かれる事態が発生していました。
私は最初は断固いる派を支持していましたが、時間の経過と共にその考えもだんだんとしぼみ、周りのクラスメイトと同様、少しずつ現実を知るようになっていってしまったのです。

その後はいつからかプレゼントは両親から直接手渡されるようになりました。

そうなると、勿論24日の夜にどんなにワクワクして眠りに落ちても、25日の朝に部屋の隅に小包が置いてある事はありませんし、いつからかそのイベントの存在自体、頭から抜け落ち、私の中でクリスマスはただいつもよりちょっと豪華な食事をして、両親からプレゼントを貰う日、という扱いに変わっていきました。

◎ ◎

でも、当時クリスマス前になると「サンタさんから欲しい物はなに?」と両親に事前に聞かれていたので、そこでまず疑わなければおかしな話ですよね。
サンタさんが本当に存在するのならば、異世界の人であるのだし、いちいち両親を通さなくてもこちらの欲しい物なんて特殊能力を使っていくらでも見透かせると思うのです。

そういった面を考えても、子供じゃなければ押し通せないファンタジーな世界観だよなぁとしみじみと思います。

今となっては現実を知りすぎている面もありますし、人からクリスマスにプレゼントを貰う事もほとんどあらず、最早自分の機嫌は自分自身で取るしかありません。
サンタ・クロースというファンタジーな存在を純粋に心から信じ、目覚めた後に待つプレゼントの存在に心を踊らせていたあの幼少期に少し戻りたいな、とこの厳しい現実社会を生きていると思う事も多い今日この頃です。

■たんこのプロフィール
自分の感じた事、日常を淡々と記します。ホラー好き

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