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誰も損せずメリットしかない「上品言い換えツッコミ」/ツッコミのお作法⑧

  • 2025.1.6

先日、僕がやっているYouTubeチャンネル「タイマン森本」にぼる塾の3人が出演してくれました。田辺とお茶をしながら「KING OF PRISM」の魅力を教えてもらったり、あんりと高菜明太マヨ牛丼を食べながら口説かれ続けたり、はるちゃんと理想のお家をお絵かきしたりと、内容は三者三様です。三本撮りだったのでいつもはヘトヘトになるはずがさすが「見るおかゆ(僕が勝手に付けたキャッチコピー)」ことぼる塾、まったく疲れずに終えることができました。

そんな個性的な3人に共通していたのが、序盤で“今日のファッション”を説明してくれたところでした。田辺さんはイヤリングとワンピースに込めたこだわりを、あんりは「森本さんに合わせたんですよ」と青系のコーディネートで来た理由を、はるちゃんは「今日のために前髪切りました〜」と教えてくれました。わざわざ「タイマン」のためにおめかしして来てくれるなんて、ありがたいことです。

その気持ちがうれしいのと、実際にみんなお似合いだったので僕なりに褒めさせていただきました。グラデーションシャツを纏っている男が言っても説得力はないでしょうが、おろしたてのワンピースを着てきたという田辺さんに「いいじゃん、素敵なお召し物で」と言うと、田辺さんは「いやアンタ、『お召し物』って(笑)」と照れた笑顔を見せてくれました。

男女問わず、面と向かって褒めるのって小っ恥ずかしいですよね。なので僕はよくあえて上品な言い回しをして照れを隠しています。今回それで田辺が笑ってくれたのを見て、改めてこういう言い回しは積極的にしていった方がいいなと思いました。褒める気持ちも伝わった上に、あんまり日常的ではない言い回しにちょっとクスッとしてもらえる可能性もある、誰も損しない表現です。なのでこのペースでいくと僕、数年後には語尾がザマスになってるんじゃないでしょうか。

■ツッコミ名称 上品言い換えツッコミ ■ツッコミ事例 「あら、素敵なお召し物ね」 ■解説 普段は使わないような品のある表現に言い換えることで、意図を伝えつつ笑いも誘うお作法。ダ・ヴィンチWeb

でも、「お召し物」みたいな表現ってほかにどんなものがあるんだろう? と思って調べてみたら、意外としっくり来るものが少ないことがわかりました。なんでもかんでも「お」をつければいいわけでもないですし、やりすぎるとめんどくさいやつと思われてしまうかもしれません。

品のある表現からは離れますが、言い換えてウィットに富ませるという意味では英語に変換するのも近い効果があるかもしれません。ちょっとドジをしちゃった人に対して「かわいい人だな」と言うのもいいけれど、「なんてキュートな人なんだ」と言い換えると印象がだいぶ変わりますよね。他にも、いわゆる親父ギャグのようなくだらないボケを言った人に対して「親戚のユーモアか」や、古い表現や例えをした人に対して「ずいぶんセピア色ですね」など、英語にすることで言葉が丸みを帯びます。今後表現の制約が厳しくなるにつれ、僕の英語率は増えていくんじゃないかと思います。This column might eventually be written in English as well.

丁寧な言葉遣いで「タメ口ツッコミしてOKポイント」を貯める

もともと僕は普段からわりと丁寧な言葉遣いをするほうだと思います。これは僕の自意識過剰な性格によるところも大きいですが、もうひとつ理由が存在しています。

この連載の第2回で触れたように、ツッコミでは先輩相手でもタメ口になることがよくあります。もちろん自分の中では理由があってタメ口になっているんですが、そうはいっても失礼であることも事実。なので、それ以外のところでは丁寧な言葉遣いで接することで、タメ口ツッコミによって失われる「礼」を補っているような感覚があります。丁寧にしゃべればしゃべるほど「タメ口でツッコんでもいいポイント」が貯まっていくイメージです。先輩からしても、普段はしっかり敬語の後輩がタメ口でツッコんできたら「あえてタメ口を使ってるんだな」と受け止めてもらえると思います。一種の免罪符みたいなものですね。

コミュニケーションというのはいかに相手と信頼関係を築けるかが重要だと僕は思っています。「この人は信頼に足る人物なんだな」と思ってもらえればもらえるほど、その人の内なる部分をシェアしてもらえる。そう信じて、今日も丁寧な言葉遣いをしてまいりたいと思わせていただいている所存でございます。

逆に、きしたかの高野(正成)さんのように生きているだけでタメ口ポイントを荒稼ぎしていく人もいます。人柄や芸風、それに加えて「タメ口で怒らなきゃダメなくらい強烈なイジり」をされているなどの要因が合わさって常にザクザクとポイントが貯まっているイメージです。高野さんがクレジットカードなら絶対使ってますよね。それだけの正義が高野さん側にあるからこそ、大声でタメ口を使っていても悪になりません。

そうやって高野さんが派手な受け身を取り続けてくれることで、痛い目に遭わせた側も悪く見えないという効果もあると思います。先輩が後輩をいじるって、俯瞰するとどうしてもいじめっぽい構図に見えてしまうことがあります。でも高野さんをいじって叩かれた先輩は多分これまで一人もいないんじゃないでしょうか。「高野さんがかわいそうだろ!」と憤ってる人を見たことないです。なんなら「もっと高野をめちゃくちゃにしてくれ!」という意見が大半だと思います。だからこそ先輩たちも高野さんに向かってどんどんボケてどんどんいじる好循環が生まれていく。それもやっぱり信頼なんだと思います。しかも僕みたいな後輩がいじっても全力で返してくれるので幅広く愛されるのは必然ですよね。余談なんですけど、高野さんがプライベートでかぶってる帽子のつば、かなり短めです。

失礼な相手に一言言ってやりたい、そんなときのツッコミ

「いじり」というところで続けると、この連載の第6回で「お笑い以外の世界で、失礼ないじりをされたときに無理してうまくツッコむ必要はない」という話をしました。これについて、その後も引き続き考えてみていたんですが、「自分は今、失礼なことを言ってしまったんだ……」と相手にわからせるためにツッコむという選択肢はありかもしれません。基本は無視したりあしらったりでいいですけど、こちらからもポップにチクっと刺せるもんなら刺したいですもんね。

大して関係性もないのに雑にいじられたとき、無理に乗っかってそこに加担するのは嫌ですよね。でも「そんな嫌な言い方しないでくださいよ」とまっすぐ返すのも、一矢報えてない気がする。せっかくならこっちのムカつきを華麗に跳ね返してやりたいもんです。

「え、どうしたんですか!?ずいぶん調子悪いですけど!」と、相手がつまらないいじりをしたことを真剣に心配するトーンで返すというのはいかがでしょう。向こうからしたらウケ狙いで言ったことが全くウケてない上に心配までされるのは屈辱ですし、「調子悪くねーよ」と言うのも癪でしょう。

もっと煽り成分を増やすと「あれですか?けっこう古の価値観でやられてる感じですか?」くらい言ってもいいかもしれません。このご時世、価値観のアップデートを怠るとどんどん孤立してしまいます。新しい方が良い、古い方が悪いというシンプルなものでもないですが、少なくとも自分とは物事の考え方が違うとハッキリ線引きをすることができます。そもそもの感覚が違う人なんだと割り切れればあまり嫌な思いもせずに済むんじゃないかと思います。

■ツッコミ名称 一矢報いツッコミ ■ツッコミ例 「え、どうしたんですか!?ずいぶん調子悪いですけど!」 「あれですか?けっこう古の価値観でやられてる感じですか?」 ■解説 失礼な物言いやいじり方をされたとき、「ムカついた」「嫌だった」と相手にきっちりわからせるためのツッコミ。ダ・ヴィンチWeb

人によっては嫌なことを言ってる自覚がない人もいます。こちらの一矢の報い方によっては相手をハッとさせられるかもしれません。そういう意味ではこちらが飛ばす矢には愛がありますよね。キューピッドが使ってる、先端がハートになってる矢みたいなもんなんですよね、ツッコミって。……なんとか自分の性格を良く見せたかったんですが、無理そうですね。

本気で謝ってほしいわけじゃないけど……

日常生活の中で「一言言ってやりたい」となる場面はほかにもありそうだと思い、この連載の担当編集さんに「何かありますかね?」と聞いてみたら「たとえば相手が遅刻してきたとき、『ごめんごめん〜(笑)』って片手で拝むぐらいの感じで来られると、『本気で謝ってほしいわけじゃないけど、もうちょっと誠意見せてくれよ』って思います」と即答されました。すぐ具体例を出してくれるところ、とてもありがたい反面、ほんのり怖さを感じます。

でもたしかに「一応謝りました」のポーズにモヤッとすることって、結構みんな経験があるんじゃないでしょうか。僕もあります。一緒にトークライブをしている金の国・渡部おにぎりから「次回の日程なんですけど、◯日はいかがですかー?」という連絡が来て、レギュラーメンバーの僕とザ・マミィ林田がナチュラルに既読無視をしてしまい、翌日「寂しいですー!笑」と催促が来て慌ててふたりとも「ごめんごめん!笑」ととりあえずで送っていました。さぞかしモヤっとしたでしょう。あんまないですよね、こういう例えで自分が悪いパターン。

もしそういう人に一言放つとしたら「もうちょっと誠意のトッピングできる?」なんていかがでしょう。「トッピング」というと後乗せ感があるので「本体じゃないけど、あれば嬉しい」というニュアンスを込められそうです。ご自身の調子が良ければ「無料で増量できるって聞いてるけど?」と、スタバ上級者感を出して圧をかけてもいいかもしれません。

ネガティブな感情を、嫌な感じになりすぎないように口に出して伝えるのってすごく難しいですよね。繰り返しになりますが、失礼なことを言ってきた相手に対して面白く返してあげる義理は別にないと思います。だけど一言言ってスッキリしたい!という場合は、今回提案した〈お作法〉を試してみてはどうでしょうか。もしうまくいかなかったときはベンティサイズの謝罪を提供しますので。

(取材・文/斎藤岬)

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