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毎日120円で30分。みんなには内緒で私はごきげんを買う

  • 2025.1.6

平日の朝、目覚ましが鳴る。

とりあえず消して、もう一度布団に潜る。
20分後また目覚ましが鳴る。
2回目のアラームは遅刻しないためのデッドライン。
だから、これはまずいと三度寝はあきらめて、部屋の明かりをつけ、のそのそと身支度を始める。

◎ ◎

職場に行けば、やらなくてはならない事が山積み。なくなることはない。
だから、全部きれいすっきり片付くことはないと、入社して2年目くらいで気が付いて、あきらめた。
今日中にやらないとまずいことを優先的に片づけて、時間のかかる急ぎではないがやっかいなものは1日の最後にこなす、そうやって時間を組み立てておかないと、回せないし自分がつぶれる。
そうやって頭をフル回転させて、自分で時間のやりくりをしているので、しょうもない質問や確認に時間をとられると、自分の時間が奪われ悔しい気持ちになる。
仕事中の時間は、私の時間であって、私の時間ではない。
自分の時間を切り売りしているのだからしょうがないと、自分に言い聞かせる。

◎ ◎

1日仕事をして、家に帰ってきたらぐったり。何とか食事と風呂を済ませたと思ったら、ウトウトしてきて眠りにつく。
あぁ、平日って本当に時間がない。

社会人になって気が付いたこと。
私にとって、自分の時間を自分で所有できていない感覚が、とんでもなく不快であるということ。
私の職場の上司たちは皆真面目で、始業時間の1時間ほど前から出社し、仕事を始めている。
仕事がはけなければ、当然のように土日出勤も行うこの人たちの勤勉さは尊敬しているが、仕事以外にすることがないのだろうかとも思う。
そんな感覚だからだろうか、始業時間前だろうと、昼休みだろうと、自席に戻ってしまうと、平気で緊急じゃない仕事の話をしてくる。
それがほんの1分のやり取りであろうと、私はいらっとしてしまう。

「私の時間を取られた」
そんな風に感じてしまう。

◎ ◎

そんないらつきに対する防衛策を私は考えた。それが、120円で買う30分のコーヒータイムだった。
出勤前、某ファストフード店を訪れ、1杯120円のコーヒーを注文し、30分ほど自分の時間を楽しむ。
この30分が私を救った。

はじめは、毎日マイボトルを持ち歩いてきた私にとって、120円の出費が毎日続くのはもったいないなと思った。
しかし、自分の時間を120円で買えると思えば、安いものかとも思うようになった。
120円で買った時間で、趣味の資格試験の勉強をしたり、読書をしたり、かがみよかがみに寄せるエッセイを書いたりした。
自分の世界を広げたり、自分を見つめ直したり、大切な時間を過ごしてきたと思う。
24時間のうち最も充実した30分だと言える。

◎ ◎

私は職場とは、別の世界を持っている。
そんな感覚は、心身健康に仕事を続けるために、必要なものだ。
だから、休日や仕事終わりの時間に自分の好きなように過ごして、元気になって、社会人は日々を乗り切っているのではないかと思う。
だが、人より自分の時間に敏感な私にとって、休日や仕事終わりの時間では足りなかった。
そして何より、1日のはじめに自分の時間があって、その次に仕事がくるというこの順番が、私にはぴたりとはまったようだった。

また、私のこの時間の存在を、職場の同僚たちは知らないというのもいいなと思っている。
みんなに秘密の私だけの時間。
みんなにはない充実した時間を持てていることに、ちょっとした優越感を抱いたりもしている。
そしてその優越感によって、周りの人に優しくなれた気がしている。
たかだか30分。されど30分だ。

◎ ◎

私は、毎日120円でごきげんを買っている。
我ながら、なかなかいい買い物だと思う。

■ぽいのプロフィール
そばよりうどん派、ねこよりいぬ派と言いつつ、そもそもこわくて動物触れません。 外向型HSP(社交的なとても敏感な人)。考えすぎで気にしいだけど、人と関わるのが好き。

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