今回のゲストは元宝塚歌劇団・雪組トップスターの彩風咲奈さん。長身で華やかな容姿、スタイリッシュなダンスで入団後早くから注目される存在に。ストイックに丁寧に経験を積み重ね、舞台にも人に対しても真摯に、責任を背負って向き合ってこられた彩風さんが放つオーラはものすごいものでした。今回のインタビューは在団中のお話を伺っています。記事の最後には未公開カットもたくさん掲載いたしますのでどうぞお楽しみください!
宝塚はやはり「トキメキ」がとても大切だと思うんです。
美夢ひまり(以下 美夢)
皆さま、新年あけましておめでとうございます。今年もこの「元タカラジェンヌ連載」をどうぞよろしくお願いいたします! 新年最初のインタビューは年末に引き続き、彩風咲奈様からスタートですっ!
彩風咲奈さん(以下 彩風さん)
あけましておめでとうございます!
美夢
さてさて前回のインタビューではご卒業にまつわる想いをお伺いいたしました。今回は宝塚時代のお話を伺っていきたいと思うのですが、宝塚の男役として大切にされていたことはなんでしょうか。
彩風さん
そうですね、舞台にはすごく自分の内面が出ると思っていて、常に内面を整えることを大切にしていました。今思うと、それにすごく縛られていたなとも思うんですけどね。
美夢
どのように過ごされていたのでしょう?
彩風さん
何時までにこれをする、睡眠時間は何時間とる、何時までにウォーミングアップを終わらせる、などと細かく決めていました。もちろん人間なので、日によってコンディションが違うのは当たり前なのですが、何をしておいたら良いパフォーマンスができるか、というのは長年やっていると分かってきます。私の場合は身体がしっかり温まってゆるんでいることでパフォーマンスが上がるなと思っていて。たとえば、退団公演のベルばらの場合は、稽古に入る前に16分間のフィナーレナンバーをしっかり踊って、汗をかいてから稽古場に行っていました。
美夢
すごすきる……ルーティーンと言うのでしょうか、しっかりコントロールされているのですね。
彩風さん
芝居とショーの2本立てのときは、一人で一度ショーをすべて通してから稽古場に行っていましたね。私は踊っているときが一番楽に呼吸ができるので、踊って身体を温めてからの方が芝居や歌でもうまく呼吸ができるんです。
美夢
なるほど。とはいえ、ショーを一人で通すとは……ストイックすぎます。
彩風さん
男役としては、メイクももちろんこだわっていましたが……、宝塚はやはり「トキメキ」がとても大切だと思うんです。自分も男役さんにときめいて、憧れてこの世界に入りたいと思った一人なので、素敵だなと思ってもらえなければいけないですし、まずは一番近くにいる相手役さんにときめいてもらえるように心がけていました。単純な言葉でいうと、皆さまからかっこいいと思ってもらえるように意識していました。
美夢
それは雪組の下級生たちにも伝えてこられたのでしょうか。
彩風さん
そうですね。私は下級生の子たちと話すことが大好きだったので、もちろん伝えましたし、私が水さん(※編集部注:元宝塚歌劇団・雪組トップスターの水夏希さん)から教えていただいたこともすべて伝えてきました。相手役さんとコミュニケーションを取る時間も大切にしていましたね。
「あーさの雪組」を観させてもらって、いろいろなことが吹っ切れて、前に進む勇気をもらいました。
美夢
月組から雪組に異動してきたあーさ(※編集部注:現雪組トップスターの朝美絢さん)は、何も心配ありませんでしたか?
彩風さん
あーさは大丈夫です。むしろ、たくさん支えてもらいましたね。あーさはすごく細やかな気遣いをしてくれる子なのですが、私はいつも「自由にやって欲しい」と言っていたことで逆に難しかったのではないかなと思います。でも舞台上でもどんなときも、自分のやるべきことをちゃんとやる、という形で私を支えてくれて、本当にありがたかったです。
美夢
こうしてバトンが受け継がれていくんだなと、感慨深く思います。『愛の不時着』(※編集部注:朝美絢さんがトップスター就任後、最初の演目)はご覧になったのでしょうか?
彩風さん
はい。先日観させていただきました。
美夢
行かれたんですね! 皆さん、頑張っていましたか?
彩風さん
頑張っていましたね。私は宝塚が大好きだったし、宝塚が自分の人生のすべてだったので、卒業してやっぱりすごく寂しかったんです。実は観劇前は新しい雪組がスタートしたということが嬉しくもあり、寂しくもあり……という感情だったのですが、舞台を観てみると良い意味で「もう私の雪組と全然違うものになっている」と感じたんですね。「あーさの雪組」を観させてもらって、いろいろなことが吹っ切れて、前に進む勇気をもらいました。
美夢
雪組の皆さんの舞台が力になったのですね。
彩風さん
背中を押してもらったような気持ちですね。こんなに短時間で新しい雪組を創り上げたあーさも本当に頼もしい存在だと思いましたし、自分がバトンを受け継いだ時も、きっとこうやって皆さんが気持ちを送ってくれて、変化に対応してくれていたのだなと、改めてありがたく思いました。
美夢
そうですね。こうして伝統が受け継がれていくのは、素敵ですね。
家では翌日のために疲労を回復させることに命を懸けていました。
美夢
在団中、手放せなかったアイテムはありましたか?
彩風さん
いつでもどこでも常に持って行っていたのはピラティスボールですね。身体のメンテナンスとしてずっとジャイロトニックに通っているのですが、ジャイロの機械がなくてもピラティスボールでできる方法を先生から教えていただいて、常に持ち歩いていました。
美夢
とてもストイックな生活をされていたと思うのですが、オンとオフの切り替えはどのようにされていましたか?
彩風さん
うーん、そうですね。できる限り稽古場にいて、家には仕事は持ち帰らないようにしていたので、家での時間ってほとんどなかったんですよね。家では翌日のために疲労を回復させることに命を懸けていました。
美夢
リカバリーに命を懸ける(笑)
彩風さん
お風呂の中でもマッサージをして、出た後もマグネシウムなどが入ったオイルでマッサージをして……。
美夢
お気に入りのバスアイテムはありますか?
彩風さん
HOT TABとかエプソムソルトとかですかね……。効能命です。
ホットアルバム炭酸泉タブレット 薬用ホットタブ重炭酸湯Classic
90錠 / ¥7260
美夢
効能命(笑) 良い香り……とかではないんですね。
彩風さん
はい、良い香りとかより、効能命です。O2クラフトというオイルもすごくお気に入りです。
美夢
O2クラフト……初耳ですが、高濃度酸素オイルって書いてありますね。完全に効能ですね(笑) すっごくよさそうで、気になります~。
マッサージガンや、ランブルローラー、「ゴリラのひとつかみ」を同時に使います!
美夢
私、何かで読んだのですが、寝るときはリカバリーウェアを着てらっしゃるとか?
彩風さん
今も着ています。卒業のときに雪組のみんなからいただいたプレゼントも、SIXPADのリカバリーウェアでした。
美夢
リカバリーウェア、私も気になっているんですが、どうもデザインが可愛くないなぁって思ったりして……。
彩風さん
大丈夫です、可愛いとかいらないんで! 可愛い部屋着とかはまったく興味なしです(笑) リカバリーウェアじゃなかったら、シルク素材が好きですね。冬はシルクだと冷たくて寒いので、シルクニットがおすすめです。
美夢
やはり、効能命(笑) むくみ取りソックスとかは……?
彩風さん
そういうのは大嫌いです(即答)。
美夢
(爆笑)
彩風さん
むくみは自分で取るので、大丈夫です。マッサージにも行きますし。寝るときにギュンギュンに締め付けられるのとかは嫌なんです。自由でいたいんで。
美夢
咲ちゃん(※編集部注:彩風咲奈さんの愛称)ってすごいはっきりしてて面白い方なんですね(笑)
彩風さん
リカバリーのためのアイテムは家にいくつもあります。マッサージガンや、ランブルローラー、最近手に入れた「ゴリラのひとつかみ」というふくらはぎケアのアイテムもとても良かったです。肩にマッサージガンをあてながら、太ももの裏にはランブルローラー、ふくらはぎはゴリラの……と、一気にケアしてから寝ます。
美夢
そんなに一気に!! 本当に徹底されている。そうなると、一体いつ息抜きしていたんでしょう?
彩風さん
そういう概念はあまりなかったかもしれないですね。
美夢
そうですよね。睡眠も何時間とるって決めていたとおっしゃっていましたもんね。
彩風さん
目覚ましが鳴ったらすぐ起きられますね。
美夢
そうしないと逆に調子が狂ってしまうんでしょうね。やはりトップスターさんって大変ですよね……。
食べることが好きなので、「あれを食べに京都に行こう!」ってふらっと行くこともありました。
美夢
お休みの期間はどのように過ごされていたのでしょうか?
彩風さん
1週間のお休みがあったら3日間くらいは自由に過ごすかな。でも集合日から逆算してここからは身体を整えるぞというラインがありましたね。わりとアクティブな方なので、家でゆっくりするよりは出かけたいタイプです。
美夢
どのようなところに行っていたんですか?
彩風さん
食べることが好きなので、「あれを食べに京都に行こう!」ってふらっと行くこともありますし、水族館なども好きです。
美夢
あ、ちょっとホッとする一面が出てきた……(笑)
彩風さん
休みのときは、リラクゼーション系のバスオイルなどを使うこともありますよ。本が好きなので、お風呂の中でゆっくり本を読んだりする時間が好きですね。
美夢
ご卒業されて、時間の使い方は変わりましたか?
彩風さん
それは変わりましたね。明日何もないから3時まで起きていても良いや、と思える日もありますし、予定を詰め込むことができるようになりましたね。在団中は、何時までに帰宅して、何時には寝る、と決めていたので予定をあれこれ入れることはしなかったのですが、今は夜レッスンに行った後に人とご飯を食べたりもしています。
美夢
そのストイックさ、ただただ尊敬します。だからこそあのレベルの高い舞台だったのだと、今心から納得しています。次回からは美容のお話も伺っていきます。その透明感あふれる美肌の秘訣が知りたいです!
彩風さん
はい。実は周りから引かれるほどのスキンケアオタクなので(笑)、たくさんお話しさせていただきますね。
美夢
皆さま、来週もお楽しみに!
- 第1回目の記事は「退団後、初インタビュー。卒業を決意したとき、千秋楽を語る。コンサートにかける想いも!」
- 第3回目の記事は「愛用スキンケアと美肌の秘密」(2025年1月12日公開予定)
- 第4回目の記事は「愛用メイクコスメとこだわりは?」(2025年1月19日公開予定)
- 第5回目の記事は「意外な!プライベートに迫る!」(2025年1月26日公開予定)
【彩風咲奈さん・プロフィール】
彩風 咲奈(Sakina Ayakaze)
愛媛県出身。2007年宝塚歌劇団入団。星組公演『さくら/シークレット・ハンター』で初舞台、その後雪組に配属。早くから注目を集め2008年の阪急阪神初詣ポスターモデルに起用される。10年『ソルフェリーノの夜明け』で新人公演初主演、その後5度にわたって新人公演主演を務める。バウホール、東上公演の主演も多く務め、21年雪組トップスターに就任。雪組から11年ぶりに誕生した生え抜きのトップスターとなった。在団中の主な出演作は、『るろうに剣心』(斎藤一役)、『ファントム』(ジェラルド・キャリエール役)、『CITY HUNTER』(冴羽獠役)、『蒼穹の昴』(梁文秀役)など。24年『ベルサイユのばら』で宝塚歌劇団を退団。2025年5月、彩風咲奈1st Concert『no man’s land』が決定している。
撮影/大坪尚人 ヘアメイク/金澤美保(MAKEUPBOX) 取材・文/美夢ひまり