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敵将をうならせた黄色の壁、上田西高GK牧野長太朗とDF東風谷崇太がつないだ絆の決勝点

  • 2025.1.3
敵将をうならせた黄色の壁、上田西高GK牧野長太朗とDF東風谷崇太がつないだ絆の決勝点
敵将をうならせた黄色の壁、上田西高GK牧野長太朗とDF東風谷崇太がつないだ絆の決勝点

Text by ライター

[第103回全国高校サッカー選手権大会3回戦、上田西高(長野県代表)2-0矢板中央高(栃木県代表)、2日、千葉・フクダ電子アリーナ]

3回戦が2日に関東圏各地で行われ、上田西高は矢板中央高に2-0で下して準々決勝へ進出した。

試合開始早々にDF東風谷崇太(こちや・そうた、3年-千曲市立戸倉上山田中学)がボックス内でファウルしてしまい、ペナルティキックを献上した上田西高。早速のピンチを迎えたが、GK牧野長太朗(3年-Adii iidA FCジュニアユース)が横っ飛びのスーパーセーブでチームを勢いづけると、前半11分に東風谷が先制点を奪取。互いに支え合った上田西高のディフェンスラインを、敵将は「むかしの矢板を観ているみたいだった」と称賛した。

クラスメイトを救ったスーパーセーブ

ベスト8進出を目指す上田西高は、試合開始早々にピンチが訪れた。

矢板中央高FW堀内凰希(こおき、3年-AC長野パルセイロU-15)にボックス内へ侵入されると、ディフェンスの要である東風谷がファウルしてしまい、ペナルティキックを献上。「終わったな」と失意の背番号4を救うべく、クラスメイトである牧野がひと肌脱いだ。

敵将をうならせた黄色の壁、上田西高GK牧野長太朗とDF東風谷崇太がつないだ絆の決勝点
敵将をうならせた黄色の壁、上田西高GK牧野長太朗とDF東風谷崇太がつないだ絆の決勝点

「東風谷とは普段からとても仲がいいですし、バックラインはほとんど同じクラスなんです。仲の良さはサッカー中の絆や、つながりになります。『あいつを戦犯には絶対させない』と思っていました」と守護神は友の想いを背負ってゴールマウスに立ちはだかった。

ペナルティーキックは苦手だと話す背番号1は、選手権のために猛特訓を積んできた。長野県予選が終わってからはペナルティキックの自主練習を毎日欠かさずに行い、この日のために備えてきた。それでも矢板中央高戦の前日練習では調子がイマイチだった守護神を見て、苫田玲央(とまた・れお)GKコーチは「思い切って飛べ」と助言した。

その言葉通り、牧野は迷わずゴール右側へ横っ飛びスーパーセーブ。左手一本で絶体絶命のピンチを救った守護神は雄叫びを上げた。

敵将をうならせた黄色の壁、上田西高GK牧野長太朗とDF東風谷崇太がつないだ絆の決勝点
敵将をうならせた黄色の壁、上田西高GK牧野長太朗とDF東風谷崇太がつないだ絆の決勝点

「(苫田GKコーチの言葉が)頭にあったので、思い切って飛びました。大舞台では自分のプレーをいつも出せないんですけど、ここが上田西高校のグラウンドだと思って、練習と同じようにやろうと心がけました」と努力の成果が実った瞬間だった。

牧野のビッグセーブでピンチをしのいだ上田西高だったが、その後も矢板中央高の猛攻を浴びた。それでも身体を張ったディフェンスで赤黒の波状攻撃をしのぎ続け、虎視眈々と好機を伺った。

敵将をうならせた黄色の壁

粘り強い守備を見せた黄色い壁の中で誰よりも得点に飢えていた男が東風谷だった。試合開始早々のミスを仲間に救われた背番号4は「自分が(ミス)を取り返してやるぞ」と積極的にゴールを狙った。

前半11分にゲームが動いた。右サイドでボールを受けたDF和泉(いずみ)亮哉(3年-Adii iidA FCジュニアユース)がシュートモーションに入ると、すかさず東風谷は相手GKの前へ侵入。ボックス内右側から放たれた左足シュートは相手GKがこぼし、ゴール前へ詰めていた東風谷の目の前に落ちた。一時はどん底に落ちていた背番号4は倒れこみながら右足で押し込んだ。

敵将をうならせた黄色の壁、上田西高GK牧野長太朗とDF東風谷崇太がつないだ絆の決勝点
敵将をうならせた黄色の壁、上田西高GK牧野長太朗とDF東風谷崇太がつないだ絆の決勝点

「牧野がビッグセーブで止めてくれた。いつも助けられてばかりで、何か自分にできることはないかと思って必死にボールを追いかけました。徳島市立戦(2回戦)からキーパーがこぼしたところをずっと狙っていました。自分はセットプレーになったら前線に上がってゴールを狙う役割だったので、得点を取れて良かったです」と先制弾に安堵(あんど)の笑みを浮かべた。

後方から得点を見守っていた牧野は「あいつ(東風谷)が自分でヒーローになってくれた。得点を決めたのはあいつが持ってるところだと思います」とクラスメイトを称えた。

その後も強固な守りで前半を無得点に抑えた上田西高は、後半21分に追加点を奪った。途中交代で入ったDF山浦琉央(りお、3年-サームFOOT BALL CLUB)のロングスローはワンバウンドしてからFW柳沢纏(まとい、3年-サームFOOT BALL CLUB)の頭上へ。背番号9はそのままジャンピングヘッドでゴール左側へ流し込んだ。

2得点を先取した長野の雄は前後半を通じて計17本ものシュートを浴びたが、息の合ったディフェンスでゴールラインを割らせなかった。東風谷と牧野はお互いに補完し合うようなプレーを披露。背番号4が交わされてシュートを打たれれば、守護神がストップ。背番号1が飛び出して空けたゴールマウスに、東風谷が決死のカバーで2度の決定機を阻止し、コンビで矢板中央高の攻撃を死守した。

敵将をうならせた黄色の壁、上田西高GK牧野長太朗とDF東風谷崇太がつないだ絆の決勝点
敵将をうならせた黄色の壁、上田西高GK牧野長太朗とDF東風谷崇太がつないだ絆の決勝点

試合はそのまま2-0で終了。最後まで崩れなかった黄色の壁を、敵将である矢板中央高の高橋健二監督は「むかしの矢板を観ているみたいだった」と称賛。堅守で準々決勝へと駒を進めた上田西高は、4日に流通経済大学付属柏高(千葉県代表)と対戦する。

殊勲の守護神は「日本トップクラスのフォワードや中盤の選手と、対峙できることはキーパーとしてうれしいです。だけど自分が無名だからといって、臆することなく自分のプレーを出していきたいです」と強豪校との一戦に目を輝かせた。

敵将をうならせた黄色の壁、上田西高GK牧野長太朗とDF東風谷崇太がつないだ絆の決勝点
敵将をうならせた黄色の壁、上田西高GK牧野長太朗とDF東風谷崇太がつないだ絆の決勝点

一方の東風谷は「強豪ばかりの中で自分たちは雑草魂、チャレンジャー精神でやるしかない。周りの評価とか予想を全部ひっくり返して、自分たちが勝てるようにやっていきたいです」と下馬評を覆していく。

2017年度大会ではダークホースとして県勢最高成績のベスト4進出と快進撃を見せた上田西高。当時小学5年生だった現3年生たちが長野県全体の想いを背負って、県勢初の選手権優勝をつかみ取ってみせる。

(取材・文・写真 浅野凜太郎)

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