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「なんか盗った…?」認知症で万引きした人に刑罰の意味はあるか…福祉での再犯防止

  • 2025.1.2

『49.3%』。摘発された高齢者の犯罪のうち、窃盗が占める割合です。

軽微な犯罪を起こした高齢者をどう処遇するかが課題になっている中、札幌市の高齢者施設では、刑罰ではなく、福祉で支えることを理念に、犯罪を起こした高齢者も積極的に受け入れています。

北海道札幌市白石区にある施設は、一見すると普通の高齢者施設に見えますが…

両手にたくさんのごみ袋を持って部屋を出るのは、約1年前に入居した81歳の男性、Aさんです。

Sitakke

施設のごみ出しを毎朝行うAさんは、職員たちからも頼りにされています。

このAさん、過去に万引きを繰り返していました。その原因は、“認知症”。

「ここに来たのはなぜか、覚えている?」

そう聞かれても

「…なんで来たかな」

万引きのことをたずねてみても

「なんかとった?違う?今度したら牢獄…」

自分のやったことがわからないと話すことも多くあります。

刑罰より福祉

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この施設は、Aさんのような法律を犯した人も受け入れる、“入口支援”を行う施設です。

障害者や認知症などの人が事件を起こし、不起訴や執行猶予などの判断が出た際に、再犯防止のため、福祉につなげる支援です。

刑務所などで更生を図る出口支援に対し、“入口支援”と言われています。

Aさんを受け入れたこの施設を運営する「アルワン」代表の石田幸子さんです。

石田さんは、認知症の人の再犯防止には「刑罰より福祉が必要だ」と話します。

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「刑務所に入っても何も分からない。何も変わらない。決まりが守れなくて、刑期が決まっているのに出られない。そういう人を入口で支援しようと考えた」

施設に来る前の2023年1月、認知症を発症していたAさんは万引きをしてしまい、裁判で執行猶予判決が下りました。

しかし、その後も再犯してしまいます。

この時すでに「出口支援」をしていた石田さんに、声がかかりました。

「福祉につなげることがAさん自身に必要だ」と考えた石田さんは、裁判で施設に受け入れることを証言しました。

こうして、Aさんの今の生活が始まりました。

すぐに解決…ではないから

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Aさんの日課は、自転車での散歩。81歳とは思えない脚力です。

腕は真っ黒に日焼けし、ハンドルを握っている手の部分だけが白くなっています。

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実はAさん、施設に来てからも、何度か万引きをしてしまいました。

そんなときも、施設はチラシを配り、地域の人に協力してもらえるよう説得しました。
認知症の人を犯罪者にするのではなく、周りの目で守っています。

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自転車が大好きだというAさんですが、一時期、迷子になってしまうことも。
取材していたこの日、1時間たっても施設のまわりで姿が見えませんでした。

無事に帰って来ましたが、「どこまで行っていたの?」とたずねられると、「この辺をぐるっと…」。

Aさんは、夏だと午前3時半や4時に自転車に乗って札幌市白石区の施設を出ていくこともあるといいます。

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そして朝ごはんの時間を過ぎた午前8時ごろになると、石狩の消防署や、小樽の警察、定山渓、新千歳空港を越えてもっと先まで行っていることもあるのだとか。

実はそこには、遠出する理由がありました。

妻に会いたくて

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「顔見たいよね。妻がいれば一番いいけど」

Aさんの遠出の理由。
遠く離れて暮らす妻に会いに行こうとしたのです。

しかし、認知症のため、全く違う方向に行ってしまい、何度も交番へ。
そのたびに施設の人が高速道路を走り迎えにいきました。

1日の終わりにビールを飲むのが楽しみなAさん。
「夫に飲ませてほしい」という、Aさんの妻の仕送りで買ったものです。

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「あーおいしい。おいしいですよ」

Aさんは、この日一番の笑顔で、ビールを味わっていました。
そんなAさんにとって、この施設とは…。

「きょうはよかった。ここに来ているときはすごくいい」

「来年の目標は、体が悪くならないように頑張る。それが一番」

福祉が、再犯防止につながると信じて

Sitakke

触法者の支援をする「アルワン」の石田幸子社長は、Aさんのような認知症の影響もあって犯罪を犯す人について「『刑務所に入りなさい』と言って変化があるのか」と話します。

「何が何だか分からなくて、裁判の当事者の席に座って、裁判長が話を聞いても答えられない。そういう状態で裁判をするのは本当に必要なのか」

Aさんのように法律に触れてしまった人でも「誰でも受け入れる」と話す石田さん。

石田さんたちの活動が、福祉の力で再犯防止につながっていることを証明しています。

取材では認知症高齢者の支援の難しさも見えてきました。

この施設では、地域の店舗へ協力を求めるチラシを配ることで見守りの目を広げたり、万引き意識をなくすために、事前に本人に飴玉や飲み物を渡して満足してもらうなどの対応をしました。

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今は、Aさんは万引きをしなくなったということです。

紹介した施設のような一般的な高齢者施設には、「公的支援」はありません。
こうした“入口支援”をどう支えていくのかは、私たちの今後の大きな課題でもあります。

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年11月18日)の情報に基づきます。

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